切り傷・すり傷の原因からケアまで~整形外科が伝えたい大切なこと

小さな転倒や不意の衝突によって、切り傷・すり傷は誰にでも起こり得るものです。軽い傷だからと放置すると、思わぬ痛みや感染を招くこともあります。

正しい知識を身につけておくと、適切な処置や受診のタイミングがわかり、回復を早めることにもつながります。

整形外科の視点で、切り傷・すり傷の原因や応急処置、治療法、日常で気をつけたいポイントをまとめました。

この記事の執筆者

臼井 大記(日本整形外科学会認定専門医)

臼井 大記(うすい だいき)

日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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目次

切り傷・すり傷とは

切り傷やすり傷は、日常生活で最も起こりやすい外傷のひとつです。小さい傷だからと軽視すると、感染リスクや傷の治り方に影響が出る場合があります。

整形外科では骨や関節だけでなく、筋や皮膚を含めた身体全体の構造を踏まえた治療を行います。ここでは、切り傷・すり傷の概要と、整形外科が対応する意味について解説します。

表面上の特徴

切り傷は刃物などで皮膚が鋭く切られた状態で、すり傷は路面や壁などとの摩擦で皮膚表面が削られた状態です。

切り傷は深さに応じて皮膚や筋、血管まで到達する場合があり、出血を伴うことが多いです。すり傷は浅い場合が多いですが、広範囲にわたり皮膚が傷つくと強い痛みや感染が起こりやすくなります。

皮膚が赤くなり滲出液がにじむ、あるいは出血があるなど、表面上の様子からある程度の深さや状態を判断できます。ただし、見た目では傷の深さを正確に把握できないこともあるため、注意が必要です。

皮膚の構造と傷の深さ

皮膚は表皮・真皮・皮下組織と複数の層から成り立ちます。切り傷は刃物の角度や強さによって真皮や皮下組織まで達する場合があり、傷口が深いほど治癒に時間がかかります。

すり傷は主に表皮層が削られる状態ですが、摩擦力が強いと真皮層にまでダメージが及び、痛みや出血が増えることがあります。

皮膚の層と主な役割

役割
表皮外界からの刺激を防ぎ、水分の蒸発を抑えるバリア
真皮コラーゲンやエラスチンが含まれ、傷の修復を支援
皮下組織血管や脂肪組織が存在し、外力から身体を保護する

真皮や皮下組織に達した切り傷は、自宅処置だけでは十分な治療にならない場合が多いため、整形外科を受診して適切な処置が必要です。

どのようなときに起こりやすいか

切り傷・すり傷は、思わぬ場面で起こることがあります。包丁での料理中や紙で指を切ったり、自転車やスポーツで転倒したり、家具の角にぶつかったりと日常生活のあらゆるシーンで生じやすいです。

特に油断しやすい「ちょっとした作業」中の不注意によって発生しやすいのが特徴です。

整形外科で扱う理由

切り傷・すり傷は表面的には軽い怪我に見えることもありますが、筋や腱、関節包にダメージが及んでいるケースもあります。

整形外科では、傷の深さや周辺組織への影響を包括的に確認し、必要に応じて縫合や固定、感染対策などを行います。皮膚だけでなく、骨や関節の機能を守るために専門的な視点が大切です。

切り傷・すり傷に関してよくあるイメージ

  • 表面の傷だからと放置しがち
  • すり傷は痛いけれど大したことはないと思いやすい
  • 血が出るほどでもないので消毒だけして様子を見る
  • 深い切り傷ではないが湿布などで対処してしまう

こうした思い込みで治療が遅れると、後から痛みや感染が強まる場合があるため注意しましょう。

切り傷・すり傷の主な原因

切り傷やすり傷は、何気ない日常の動作や小さな事故で起こります。

単なる不注意や運動不足による転倒だけでなく、筋力の低下や屋内での動線が複雑なことなども背景にあります。ここでは、主な原因をいくつか挙げてみます。

日常生活での事故

家庭内で最も多いのは、包丁やナイフなどを扱うときの切り傷です。料理中の焦りや、手元が滑って包丁を落とすなどで負うケースもあります。

また、段ボールをカッターで開封するときの不意の切り傷や、紙で指先を切ってしまう紙傷なども典型的です。さらに、お風呂場やキッチンなど、床が濡れているところでの転倒によってすり傷を負う場合があります。

スポーツや運動

運動中の転倒や衝突は、すり傷や切り傷の原因のひとつです。特にサッカーやバスケットボールなどのコンタクトスポーツでは、他の選手との接触やスライディングで皮膚が擦れるリスクが高まります。

アウトドアのアクティビティでも、岩場やアスファルトに転倒してできるすり傷が多くみられます。

スポーツ時によくみられる主な怪我

スポーツ種類代表的な傷注意点
サッカースライディングによるすり傷ユニフォームでの摩擦
バスケ転倒や接触での擦過傷コートの床の硬さに注意
野球スライディングや転倒ユニフォームやグラブの着用
自転車競技転倒による切り傷・すり傷レース中の高速転倒リスク

運動前のウォーミングアップや防具の装着などをしっかり行い、怪我のリスクを減らしましょう。

仕事や家事でのトラブル

社会生活の中でも、小さな事故は起こります。職場での工具の取り扱いミスや荷物の運搬中の転倒、家庭での洗濯物の取り込み中に脚立から落ちるなど、思わぬ場面で切り傷やすり傷を負うことがあります。

手袋や靴などの防護具を適切に選ぶことで、怪我を防ぎやすくなります。

子どもや高齢者に多いケース

子どもは活動範囲が広く、遊びながら転倒してすり傷を作ることが多いです。

また、高齢者は足腰の筋力低下やバランス能力の低下があるため、軽い段差でも転倒しやすい傾向があります。転倒後に手や膝をつき、すり傷とともに打撲や骨折を併発することもあるため、日頃から室内環境の整備が必要です。

転倒リスクを軽減する工夫

  • 段差や滑りやすい床にマットや手すりを設置する
  • 子どもの遊び場を整理して転びにくい空間を作る
  • 足に合った靴を選び、長い履き慣れない靴ひもは使わない
  • 照明を見直して暗い場所を減らす

自宅での応急処置

切り傷やすり傷を負ったとき、まずは自分でできる応急処置を素早く行うことが大切です。初期対応が適切だと、傷の治癒を早め、感染を抑えることにもつながります。

ただし、傷が深いと感じた場合はすぐに医療機関を受診してください。

出血を抑える

切り傷の場合、まず清潔なガーゼやタオルで圧迫して出血を抑えます。強く押し当てるのではなく、血管を軽く圧迫するイメージで行います。

5分程度圧迫を継続すると、出血が落ち着いてくることが多いです。強い出血が止まらない場合は、早めに受診を検討する必要があります。

汚れを洗い流す

すり傷や土や砂が入り込んでいる切り傷の場合は、水道水などで傷口をきれいに洗い流します。

傷の内部に異物が残ると、感染のリスクが高まります。ごしごし洗いすぎて傷を広げないよう、やさしく流水をかけながら行います。

傷を洗浄するときの注意点

項目内容
水の温度ぬるま湯または常温の水
洗浄時間できる範囲で1分以上
タオルの使い方強く擦らず、水分を優しく拭き取る
洗浄後の観察異物や出血の有無を再度確認

汚れをしっかり落とすと、その後の処置が行いやすくなります。

乾かし過ぎない

傷口を乾燥させすぎると、かさぶたが厚くなり傷跡が残りやすくなる場合があります。出血が止まり汚れが落ちたら、ラップや傷を保護するシートなどで適度な湿度を保つ方法も有効です。

傷の状態によっては、空気に触れさせるよりも保湿した方が治りが早いことがあります。

自宅でできる簡易ケア

  • 洗った後、清潔なガーゼやラップで覆う
  • 強い消毒薬は使いすぎず、必要なら医療用のものを使う
  • 圧迫しながら止血した後は湿潤療法も検討する
  • 痛みが続くときは無理に触らず受診を考える

適切なケアを続けると、傷口がきれいに回復しやすくなります。

消毒の考え方

近年、消毒薬を多用せずに適度な湿潤環境を保つ「湿潤療法」の有効性が注目されています。昔は傷口を乾燥させる方法が一般的でしたが、傷口を保湿すると治りがスムーズになる例が多いです。

ただし、感染が疑われる場合は消毒が必要となるため、医療機関で診察を受けることをおすすめします。

整形外科での治療方法

深い切り傷や広範囲のすり傷、あるいは関節や筋・腱に影響が及んでいる場合は、整形外科を受診する必要があります。専門的な視点で処置や経過観察を行いますので、将来的な合併症や機能障害を防ぐことが期待できます。

縫合やテープ固定

切り傷が深い場合は、縫合が検討されます。傷の大きさや位置によっては医療用接着剤やテープ固定で対応できる場合もあります。傷口を清潔に整え、再度開かないように固定することで、回復を促進します。

縫合の有無によって通院回数や抜糸のタイミングが変わるため、指示に従うことが大切です。

縫合とテープ固定の比較

項目縫合テープ固定
適応深く広い傷口比較的浅く長さのある切り傷
メリット傷口がしっかり閉じる手軽に行え、抜糸が不要
デメリット抜糸が必要傷が大きい場合は不向き
傷跡の経過場合によっては残るテープ痕が残る可能性が少ない

傷口の状態によって治療法は異なりますが、いずれの場合も傷口を安静に保つ必要があります。

すり傷の処置方法

すり傷は広範囲にわたる表皮の損傷が多く、感染リスクが高いと判断された場合は抗生剤の軟膏を塗布してガーゼ固定を行うことがあります。

また、患部から浸出液が出ている場合は、絆創膏やフィルムドレッシングなどで保湿すると症状が緩和しやすいです。大きなすり傷は通院による定期的な処置が必要となる場合があります。

予後観察と通院

縫合した場合は、傷口が開いたり感染したりしていないかを確認するために数日から1週間程度の間隔で通院が必要です。

すり傷の場合も、傷の表面に異常がないか、痛みや赤みが増していないかをチェックします。

症状が落ち着いても、皮膚のターンオーバーには時間がかかるため、しばらく注意が必要です。

通院時に医師へ伝えたいポイント

  • 傷の痛みが増したり軽減したりした変化
  • 通常とは異なる膿や体液が出ているか
  • 患部が熱を持っていたり、赤みが強くなっていないか
  • 日常生活でどの程度動かしているか

これらを医師に正確に伝えると、より適切な治療方針を決めやすくなります。

感染予防に関する指導

傷口から細菌が侵入すると、蜂窩織炎や膿瘍のリスクが高まります。整形外科では、抗生物質の使用や適切な包帯交換の方法、傷口を清潔に保つ工夫などを指導しています。

自己判断で薬の使用を中断すると感染リスクが上がるため、医師の指示に従うことが大切です。

日常生活での傷のケア

通院だけでなく、日常生活でのケアも重要です。特に通勤・通学や家事・育児などを続けながら傷の回復を目指す場合、ちょっとした動作が治癒を遅らせる可能性があります。

普段の習慣を見直し、傷に負担をかけないように工夫することが求められます。

湿潤療法の重要性

湿潤療法は、傷口を乾かしすぎず、適度に保湿して皮膚の回復力を高める考え方です。傷口が乾燥するとかさぶたが形成されますが、湿潤環境では新しい皮膚が形成されやすく、痛みも軽減しやすいと考えられています。

ただし、感染が疑われるケースでは消毒が必要となるため、自己判断で湿潤療法を続けないように気をつけましょう。

湿潤療法を行うときのポイント

項目内容
保湿の方法ハイドロコロイド包帯やフィルムドレッシングを使用
ドレッシングの交換滲出液が多い場合は毎日、少ない場合は2〜3日に1回
傷の観察赤みや腫れが出ていないか定期的にチェック
痛みが強い場合無理せず医師に相談

適度な湿度を保ちながら清潔を維持するのが大切です。

日常動作での注意点

傷口を早く治すためには、不要な刺激を避けることが重要です。例えば、指に切り傷がある場合は、スマホ操作やパソコンのキーボード入力でも繰り返し刺激が加わります。

可能であれば、負担をかけないようにテーピングや指サポーターを活用するなど、日常動作を工夫しましょう。

傷への刺激を減らす工夫

  • 包帯やテープを貼る位置や締め付け具合を見直す
  • 痛みがある部位への負荷をできるだけ減らす
  • 体重をかけないように歩行時に足の着き方を調整する
  • 長時間同じ姿勢を避けて適度に休憩を入れる

こうした対策を重ねると、回復がスムーズに進みやすいです。

入浴とシャワーの方法

傷の保護に対する考え方はさまざまですが、基本的には、湯船につかるときは患部を水に浸さないように防水テープなどでカバーするのが望ましいです。

シャワーの場合は、汚れを洗い流す意味でも、温度を高くしすぎずにシャワーをかけることで清潔を保ちます。入浴後は、傷をしっかり乾かしてから新しい包帯やテープを貼ると感染リスクを抑えやすくなります。

衣類の選び方

すり傷や切り傷を保護している部位に、衣類の生地がこすれると痛みやかゆみを増すことがあります。ゆったりとしたデザインや通気性の良い素材を選ぶと、傷への刺激が少なくなります。

ウールなど刺激の強い素材は避け、コットンやリネンなど肌触りの良い生地が適しています。

傷が悪化するリスクとその対策

適切な処置を行っていても、傷が悪化する可能性はゼロではありません。特に感染やケアの不備によって、痛みや炎症が広がるケースもあります。ここでは、悪化を防ぐためのリスク要因とその対策を説明します。

細菌感染のリスク

皮膚は人体を保護するバリア機能がありますが、切り傷やすり傷でそのバリアが破綻すると、細菌が侵入しやすくなります。

化膿した場合、痛みや腫れが増し、時には全身症状が出ることもあります。特に糖尿病など基礎疾患がある方は感染を起こしやすく、症状が重くなる可能性があるため注意が必要です。

感染のサイン

  • 傷口周辺が急激に赤く腫れる
  • 傷口が熱を帯びている
  • 強い痛みが続いている
  • 膿や濁った体液が出てくる

このような症状が出た場合は、早めに受診して適切な治療を受けることが大切です。

慢性化のリスク

小さな傷でも、何度も同じ部位を刺激したり、適切な処置をしなかったりすると、治りが遅くなります。

慢性化した傷は治癒力が低下していることが多く、処置期間が長引きやすいです。外用薬を塗布しているのに回復の兆しが薄い場合は、専門医の診察が必要かもしれません。

瘢痕の残りやすさ

傷が治る過程で真皮層にまでダメージが及んでいると、瘢痕が残ることがあります。大きく盛り上がる「ケロイド体質」の人は特に注意が必要です。

瘢痕が関節付近に生じると、可動域が制限されるケースもあるため、適切な処置や術後ケアが欠かせません。

傷の治りを妨げる要因

要因具体例
過度な刺激傷を何度もぶつける、同じ姿勢を続ける
不十分な休養仕事や家事で無理をして、傷に負担がかかる
栄養不足タンパク質やビタミン不足による皮膚修復力の低下
ストレス自律神経の乱れやホルモンバランスの影響

これらの要因を避けることで、より良い治癒を目指しやすくなります。

傷を長引かせない工夫

傷の回復を早めるためには、適切な栄養摂取や十分な休養が役立ちます。特にタンパク質、ビタミンC、亜鉛などは皮膚の修復において大切です。

また、ストレスを極力減らす生活習慣も傷の治りを助ける要素になります。早寝早起きや軽い運動を取り入れて血行を促進すると、組織の再生が活発になります。

こんなときは早めの受診を

切り傷やすり傷は、自宅での応急処置だけで十分な場合もありますが、放置すると症状が悪化するリスクもあります。傷の状態を総合的に見て、早めに医師の診察を受けるべき状況を知っておくと安心です。

痛みが強い場合

痛みが強い場合は、傷が深かったり、周辺組織が損傷している可能性が高いです。痛み止めを飲んでも治まらない場合や、痛みが増す一方のときは整形外科を受診してください。

骨折や靭帯損傷が併発している場合もあり、放置すると後から大きな問題に発展する恐れがあります。

傷口の範囲が広い場合

手のひらや膝など、動かす機会が多い部位に広いすり傷を負うと、摩擦や曲げ伸ばしによる傷の開きが起こりやすいです。痛みや出血が継続するときは、専門家の処置を受ける方が回復が早まるでしょう。

また、顔など目立つ部分で広い範囲を擦りむいた場合も、適切な処置で瘢痕を予防しやすくなります。

受診を検討する目安

状況理由
深い傷や傷口が大きく開いている自己処置だけでは治りにくい
痛みや出血が長時間続いている感染や周辺組織の損傷が疑われる
関節付近や筋腱部が傷ついた疑い機能障害や慢性化のリスクがある
体液や膿が出ている細菌感染の可能性

上記のような状態なら、できるだけ早く医療機関を受診してください。

体液や膿が出ている場合

傷口から体液や膿が出ると、明らかに感染の兆候があるといえます。痛みや腫れ、熱感がある場合は蜂窩織炎など深部組織に感染が広がっている恐れもあります。

自宅での消毒では対処が難しいことが多いため、専門的な診察が必要です。

破傷風予防接種の必要性

土やサビた金属などに触れて生じた傷は、破傷風のリスクがあります。破傷風菌が体内に入ると、重篤な症状を引き起こす場合があります。

破傷風予防接種を10年単位で受けていない方や、接種歴がわからない方は、医療機関で相談することをおすすめします。

破傷風予防のチェックポイント

  • 定期的に破傷風トキソイドの接種をしているか
  • 子どもの頃の定期接種歴を確認しているか
  • 農作業やガーデニングなどで土に触れる機会が多いか
  • サビた釘や金属を踏み抜いたり触れたりしていないか

高齢者や外国籍の方は特に接種歴が不明な場合があるので注意が必要です。

まとめ

切り傷・すり傷は一見すると軽い怪我に見えることも多いですが、放っておくと痛みや感染などのトラブルを招く可能性があります。

適切な処置と医療機関での専門的なチェックによって、傷をきれいに治し、将来的な合併症を回避できることが大切です。

正しく対処する大切さ

小さな傷でも、正しく対処すると早く治りやすく、痛みや傷跡のリスクも軽減できます。特に、自宅での応急処置や湿潤療法の取り入れ方を理解しておくと、傷の程度に応じて臨機応変に対応できます。

ただし、痛みが強い場合や傷口が深い場合は自己判断を避けて早めに受診することが重要です。

自己判断と医療機関受診のバランス

「大したことがない」と思って放置してしまうと、感染や機能障害につながるリスクがあります。

一方で、軽いすり傷まで医療機関に行く必要はありません。自宅でのセルフケアが可能かどうか、日々の観察がポイントです。傷の状態の変化や痛みの度合いに注意を払い、少しでも異変を感じたら医師に相談してください。

受診かセルフケアかを判断するための指標

状況セルフケア医療機関受診
浅く小さいすり傷応急処置と観察傷が一向に治らず腫れや痛みが増す
深めの切り傷応急処置の後、傷の開きがないかを確認出血が止まらない、深さが顕著
痛みが軽度湿潤療法などでセルフケア痛み止めを飲んでも痛みが引かない
傷口が大きく開いている応急処置だけでは厳しい縫合や医療用テープ固定が必要

上記のような基準を目安にすると、自己判断がしやすくなります。

早めのケアが将来を左右する

傷のケアを先延ばしにすると、痛みや腫れが持続して仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。傷が深いほど瘢痕が残りやすく、関節付近だと可動域に影響する恐れもゼロではありません。

少しでも違和感があるときは、専門の整形外科で相談することで、長期的な健康と機能を守りやすくなります。

当院での治療について

当院では、切り傷・すり傷の処置だけでなく、筋肉や骨、関節の状態を考慮した包括的な治療を行っています。通院が難しい方には、日常ケアのアドバイスやリハビリ指導を提供し、傷がきれいに治るようサポートします。

怪我が慢性化してお困りの場合も、お気軽にご相談ください。

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