起立性低血圧

起立性低血圧

起立性低血圧とは、横になったり座った状態から立ち上がった際に血圧が大きく低下してめまいを起こす症状を指します。立ち上がる動作に伴って血液が下半身へ急に移動すると、脳への血流が一時的に不足しやすくなるのが主な原因です。

若年層や高齢者まで幅広く見られ、生活習慣や持病など多様な要素が関係することがあります。

めまいやふらつきにとどまらず、転倒リスクの上昇や倦怠感の増大など、生活の質に影響を及ぼすことが少なくありません。循環器疾患を抱えている方や、起立時の症状で悩んでいる方は、早めに自分の状態を把握し、適切な対策を取ることが重要です。

本記事では病型や症状、原因、検査、治療、費用などを総合的に解説し、受診を検討する際の参考になる情報を提供します。

目次

病型

起立性低血圧にはいくつかの型があり、原因やメカニズム、症状の出方によって分類されます。起立動作で血圧が低下する点は共通していますが、背景にある体質や疾患などにより性質が異なります。

自分の状態を正確に理解することが、効果的な予防や治療につながるでしょう。

一時的な血管調節不良

急に立ち上がったときに血圧をうまく調整できず、頭がくらっとするタイプです。

若年者や健康な成人でも見られることがあります。睡眠不足や疲労があると起きやすく、改善策としてはゆっくり立ち上がることや水分補給をこまめに行うことなどが挙げられます。

一時的とはいえ、転倒につながる可能性を考慮し、日常の動作に少し工夫を取り入れることが必要です。

慢性期の起立性調節障害

思春期の子どもや若者に多いといわれ、日中のだるさや朝起きにくいなどの症状が続きやすい型です。

自律神経のバランスが不安定になりがちな時期に起こり、学校生活や社会生活にも影響することがあります。適度な運動や規則正しい睡眠リズムの確保など、生活習慣の安定が大切です。

成長とともに改善しやすい一方で、放置すると学業や生活リズムが乱れ、心身のストレスが増える傾向があります。

神経変性疾患に関連するもの

パーキンソン病や自律神経系に影響を及ぼす疾患を抱えている場合に起立性低血圧を併発するケースです。

脳内の神経伝達物質バランスが崩れることなどが関係し、起立動作以外にも倦怠感や動作の遅れ、めまいなど複数の症状を伴うことがあります。治療は基礎疾患のコントロールと並行して行うことが多いです。

薬剤性のもの

高血圧治療のための降圧薬や、抗不整脈薬、利尿薬などを服用している場合は、薬の効果が強く出て起立性低血圧を起こしやすいことがあります。

体質や年齢、併用薬によってもリスクが変わるため、医師に相談したうえで投薬計画を見直すことが求められます。

血圧を下げる薬全般だけでなく、抗うつ薬など別の目的で使われる薬でも血圧変動が生じる場合があり、総合的な服薬状況の把握が重要です。

次の一覧は起立性低血圧の病型に関する特徴をまとめたものです。

分類特徴
一時的な血管調節不良急な立ち上がりで脳への血流が不足し、健康な人でもめまいを起こす場合あり
慢性期の起立性調節障害思春期や若者に多く、生活リズムの乱れや自律神経のバランスが関与
神経変性疾患に関連するものパーキンソン病などの神経疾患が背景にあり、治療に時間がかかりやすい
薬剤性のもの降圧薬や利尿薬、抗うつ薬などの影響で血圧が過度に下がることが原因になる
  • 朝や夜間に急に立ち上がるとめまいを感じやすい
  • 学校や仕事など日常生活への影響が大きい場合がある
  • 高齢者や慢性疾患を抱えている人は対策を怠ると転倒リスクが上昇する
  • 複数の薬を使用しているときは相互作用に注意が必要

起立性低血圧はひとつの型だけでなく、体質や生活習慣などが複雑に絡み合うこともあります。まずはどのような状況下で血圧が急に下がりやすいのかを自分なりに把握しておくと、医療機関での相談がスムーズになります。

起立性低血圧の症状

起立性低血圧の特徴的な症状は、立ち上がり時のめまいやふらつきですが、それ以外にもさまざまな形で現れることがあります。

体全体の血液循環が一時的に悪くなるため、脳や筋肉への血流が低下しやすく、思考力や体力にも影響を及ぼす場合があります。

めまいや立ちくらみ

もっとも典型的な症状です。起床直後や長時間座った姿勢から急に立ち上がったときなど、頭に血液が行き渡らなくなることで起きます。

強いめまいは立ち上がって数秒から数分続くことがあり、場合によっては転倒につながるため注意が必要です。予防としては、急激な動作を避け、下半身の筋肉を動かしながらゆっくり立ち上がるのが有効です。

全身の倦怠感

血圧が安定しないと全身に酸素や栄養が行き届きにくくなり、だるさが続くことがあります。朝の起きがけに動き出しにくい、午後になると急に疲れが増すなど、日常活動に支障が出やすいのが特徴です。

長引く倦怠感がストレスとなり、睡眠の質が落ちる悪循環にも陥りやすいです。

集中力や思考力の低下

脳への血流が不足すると、頭が重く感じたり、集中力が下がったりすることがあります。仕事や学業などにおいてパフォーマンスが低下しやすく、ミスが増える原因にもなります。

短時間であれば休憩や水分補給で回復する場合が多いですが、慢性的な起立性低血圧だと十分な改善を得られないこともあります。

動悸や胸の圧迫感

一時的に血圧が下がると、心臓は血液を送り出そうとして拍動数を上げるケースがあります。その結果、動悸を感じたり、胸の圧迫感を自覚することがあります。

これは心臓自体が病んでいるわけではなく、血圧低下に対する生理的な反応の場合が多いです。

次の一覧で主な症状と感じやすいシチュエーションをまとめます。

症状主なシチュエーション
めまい・立ちくらみ起床直後や長時間座ってから急に立つとき
倦怠感1日の中で体力が著しく消耗しやすい
集中力低下学校や職場での作業時、判断力が必要な場面
動悸立ち上がった直後や人混みでの活動時
  • 朝の起きがけに頭痛とともにめまいを感じる
  • 階段を上り下りするときにふらつく感覚がある
  • 午後になると倦怠感がひどくなり、作業効率が低下する
  • 立位での動作が長時間続くと疲労感が倍増する

症状の出方や度合いは個人差が大きいですが、生活の質が落ちていると感じたら医師の診察を受けることをおすすめします。

起立性低血圧の原因

起立性低血圧は、立ち上がり時に血液が下半身へ移動する際、体がうまく血圧を調整できないことが直接の原因です。

しかし、その背景には複数の要因が絡んでいることが多く、疾患や生活習慣、加齢など、幅広い視点で原因を探る必要があります。

自律神経の働きの乱れ

自律神経系は、身体のあらゆる機能を無意識にコントロールしています。交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、血管収縮や心拍数の調整に乱れが生じ、起立性低血圧を引き起こしやすくなります。

特に成長期やストレス過多の状態にある人は注意が必要です。

血液量や血液循環の問題

脱水や貧血などがあると、血液量が不足しているために血圧が十分に保てないことがあります。また、糖尿病や心不全などで血流が滞りがちな状態も、起立時に血圧が急降下しやすい要因になります。

脱水が慢性化するときは水分補給だけでなく、塩分やミネラルの摂取にも気を配ると改善が期待できます。

薬剤の影響

高血圧治療薬や抗うつ薬、睡眠薬など、さまざまな薬剤が血圧を下げる作用を持ちます。これらの服用によって、起立時の血圧調整が追いつかなくなるケースは珍しくありません。

特に高齢者は薬剤代謝が遅れがちで、作用が予想以上に強く出る可能性があります。

加齢や病気の進行

高齢になると血管の弾力性が低下し、自律神経の働きも鈍くなります。そのため、立ち上がった瞬間に血圧を調整する力が弱まり、起立性低血圧を起こしやすくなります。

パーキンソン病や多系統萎縮症など、神経系の病気も血圧調整を難しくする大きな要因です。

以下に起立性低血圧の主な原因を整理します。

要因具体例
自律神経の乱れ思春期の起立性調節障害、強いストレス環境
血液量・血流の問題脱水、貧血、心不全、糖尿病
薬剤降圧薬、抗うつ薬、睡眠薬など
加齢・神経変性疾患血管や神経の働き低下、パーキンソン病など
  • ストレスや睡眠不足の状態が続くと自律神経に負担がかかる
  • 食生活の偏りが脱水や貧血を引き起こすことがある
  • 心疾患や脳疾患がベースにある場合は医療機関での検査が必要
  • 複数の薬剤を服用しているときは、相互作用を医師に確認したほうが安全

これらの原因が重なっている場合も多々あるため、自分の生活習慣や体調を改めて振り返り、思い当たる点があれば早めの対策を検討することが大切です。

検査・チェック方法

起立性低血圧を疑うときは、自宅での血圧測定や医療機関で行う専門的な検査を通じて状態を確認します。原因の特定と症状の程度の把握が正確にできると、適切な治療や生活改善のプランを立てやすくなります。

自宅での血圧測定

家庭用の血圧計を使って、横になった状態と立ち上がった直後など、姿勢を変えたときの数値を比べる方法が手軽です。

起床時、朝食前、夕方など複数のタイミングで測定し、数日から数週間分のデータを記録することで変動パターンが見えてきます。

記録した結果を医師に提示すると、原因推定や治療方針の検討に役立ちます。

医療機関での血圧測定

外来診察で血圧を測るだけでなく、起立試験と呼ばれる方法が実施されることがあります。ベッドに横になった状態から段階的に起こし、その都度血圧を測ることで、起立時の変化がどの程度のものかを詳細に調べられます。

めまいや心拍数の変動など、症状の主観的な情報も合わせて医師に伝えることが重要です。

24時間ホルター血圧測定

携帯型の血圧計を装着して、日常生活を送りながら24時間にわたって血圧を自動測定する方法です。起き上がるタイミングや食事、運動、睡眠など、普段の生活リズムの中で血圧がどう変動しているかを把握できます。

日中と夜間の変化が顕著な場合、より的確な治療計画を立てやすくなります。

血液検査や心電図、その他の検査

原因疾患の有無を調べるために、血液検査や心電図、ホルモン検査などが実施されることもあります。貧血の程度や甲状腺機能、心臓のリズム異常などを調べることで、起立性低血圧の背景にある要素を特定できる場合があります。

次の一覧に検査方法と概要を示します。

チェック方法概要
自宅での血圧測定姿勢や時間帯を変えながら血圧を記録し、変化を追う
起立試験横になった状態から段階的に起き、血圧や心拍数の変化を測定
24時間ホルター血圧測定装着型血圧計で1日を通して定期的に血圧を記録
血液検査・心電図貧血やホルモン、心電図異常など原因疾患の可能性を探る
  • 自宅測定では枕元に血圧計を置き、起床直後に測る習慣をつける
  • 医師に相談する際は、めまいが起きやすいタイミングを具体的に伝える
  • 24時間測定中は普段どおりの行動を心がけ、生活リズムを変えない
  • 血液検査ではフェリチンや甲状腺刺激ホルモンなどを調べることがある

こうした検査によって起立性低血圧の程度や特徴を把握することは、効果的な治療の第一歩です。

起立性低血圧の治療方法と治療薬について

起立性低血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物療法の両側面からアプローチするのが一般的です。原因や症状の重さに応じて、どのように治療を進めるかを医師と相談しながら選択していきます。

生活習慣の改善

起立性低血圧の人は、日々の生活リズムを整えるだけでも大きな改善が見込める場合があります。とくに重要なポイントとしては、十分な睡眠時間、水分・塩分の適度な摂取、軽めの運動習慣などが挙げられます。

  • 朝起きるときはベッドで少し体を動かしてからゆっくり立つ
  • 水分を小まめに摂り、脱水を防ぐ
  • 軽いウォーキングやストレッチで下半身の筋肉量を維持する
  • 塩分摂取を過度に制限しすぎないよう注意する

特に若年者で起立性調節障害を起こしている場合、規則正しい睡眠と適度な運動が大切です。夜更かしや朝食抜きの習慣は、自律神経を乱す原因になりかねません。

弾性ストッキングの活用

弾性ストッキングを着用して下半身に血液がたまりにくくすると、起立性低血圧の症状を和らげられる場合があります。立ち仕事や長時間の移動が多い人にとっては、足のむくみ軽減にもつながるメリットがあります。

サイズ選びや圧の強さなど、専門スタッフのアドバイスを受けるのが理想的です。

薬物療法

生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合や、重症度が高い場合は薬物療法を検討します。血管を収縮させる薬や、心臓の拍出量を調整する薬、血液量を保つ薬などがあり、それぞれの特徴を踏まえて使い分けます。

ただし、降圧薬を併用している方や心疾患がある方は、血圧の変動が大きくなりやすいため、医師が慎重に投与量を調整します。

原因疾患へのアプローチ

パーキンソン病や甲状腺機能低下症などが背景にある場合は、その疾患そのものの治療が起立性低血圧改善の近道です。適切な専門科で検査・診察を受け、根本原因へのアプローチを並行して進めることが重要です。

次の一覧で主な治療方法と概要をまとめます。

治療法概要
生活習慣の改善規則正しい睡眠、水分・塩分補給、軽い運動の習慣など
弾性ストッキングの着用下半身への血液プールを防ぎ、めまいを軽減する
薬物療法血管収縮薬や心拍出量調整薬など、症状に応じて選択
原因疾患の治療パーキンソン病や甲状腺機能低下症などを同時にケアする
  • 弾性ストッキングは着脱が面倒でも継続が効果を高める
  • 薬によっては副作用が出る可能性があるので開始後の経過観察が重要
  • 日常生活の改善と薬物療法を並行すると相乗効果が期待できる
  • 定期的に血圧の記録を取り、医師とのコミュニケーションを密に行う

治療にあたっては、一人ひとりの体質やライフスタイルに合わせた最適なプランを医療機関と相談しながら見つけることが大切です。

起立性低血圧の治療期間

起立性低血圧の治療期間は、原因や症状の強さ、生活習慣の改善度合いなどによって大きく変わります。早めに対策を取ると症状が軽快するまでの時間も短くなる可能性があり、逆に放置すると長期化しやすい傾向があります。

軽度のケース

ストレスや睡眠不足などが主な原因で、まだ症状が軽い場合は、生活習慣の見直しで2~3週間ほどで症状が改善することもあります。

規則正しい生活を続けながら脱水や貧血を防ぎ、適度な運動を取り入れることで、徐々にめまいなどが減っていくことが期待できます。

ただし生活習慣を元に戻してしまうと再発しやすいため、改善後も継続的に取り組むことが重要です。

思春期など成長期に多いケース

思春期の起立性調節障害の場合は、自律神経の安定に時間がかかるため、半年以上、場合によっては1年以上かけて徐々に良くなることがあります。

学校の生活リズムや部活、勉強との兼ね合いでストレスが増しやすい時期でもあり、親や周囲の理解とサポートが欠かせません。

原因疾患があるケース

パーキンソン病や多系統萎縮症など神経変性疾患を抱えている場合は、症状の進行とともに起立性低血圧も長期化しやすいです。

治療は疾患の進行を緩やかにすることや、血圧変動をコントロールすることが中心となるため、数年単位のケアが必要となる可能性があります。

また、甲状腺機能低下症や心不全など、ほかの持病のコントロール具合によって治療期間や効果に差が出やすいです。

薬物療法の継続期間

薬物療法を取り入れた場合、症状が一定程度改善しても、医師の判断でしばらく服薬を続けるよう指示されることが多いです。

自己判断で薬を中断すると再び血圧が不安定になり、めまいやふらつきが再発するリスクがあります。血液検査や血圧測定の結果を見ながら、徐々に薬の量を調整していくのが一般的です。

次の一覧で治療期間の目安を示します。

ケース期間の目安
軽度(生活習慣の改善が主)数週間~数か月
思春期の起立性調節障害半年~1年以上
神経変性疾患などによる慢性的な場合数年単位での長期ケア
薬物療法症状改善後も定期調整
  • 症状の改善を感じ始めても、定期的な通院と経過観察は続ける
  • 生活習慣が乱れると再発することが少なくない
  • 成長期の子どもは、学業への影響を考慮して長期視野でのサポートが必要
  • 持病がある場合は、その治療経過に左右されやすい

治療期間を短くしようと焦るよりも、自分のペースで着実に症状をコントロールすることを心がけるとよいでしょう。

起立性低血圧薬の副作用や治療のデメリットについて

起立性低血圧に対して薬物療法を行うと、血圧が安定しやすくなる反面、副作用や治療に伴うデメリットが生じることがあります。こうした要素を理解し、医師と相談しながら治療を進めることが大切です。

血圧上昇に伴う負荷

血管収縮薬などを用いて無理に血圧を上げすぎると、頭痛や動悸が強くなることがあります。特に心臓や脳血管に疾患を抱えている方は、過度な血圧上昇がリスクを高める可能性があるため注意が必要です。

医師は症状と副作用のバランスを見ながら投薬量を調整するので、少しでも異変を感じたら早めに相談してください。

消化器系のトラブル

薬の種類によっては、吐き気や胃腸の不調が起こる場合もあります。服用のタイミングや量を調整することで緩和できるケースもあるため、症状が続くときは報告が必要です。

飲み合わせの問題

他の持病で複数の薬を服用している場合、薬同士の相互作用によって血圧が予想以上に変動することがあります。特に高血圧の治療薬や利尿薬など、血圧に関わる薬を併用していると起立性低血圧が悪化する可能性もあります。

服用している薬をリストにまとめて医師に提示すると安心です。

通院や費用面での負担

薬物療法を続ける場合、定期的に血液検査や血圧測定を行い、副作用や効果をチェックしなければなりません。通院回数が増えると、時間的にも経済的にも負担になることが考えられます。

しかし、症状が改善しないと日常生活の支障が大きくなるため、医師と相談して自分に合った治療プランを組み立てることが大切です。

次の一覧で薬物治療に伴う副作用やデメリットをまとめます。

副作用・デメリット具体例
血圧上昇による負荷動悸、頭痛、心血管疾患リスクの増加
消化器系のトラブル吐き気、食欲不振、下痢など
飲み合わせの問題既存の薬との相互作用で血圧が予想以上に変動する可能性
通院や費用の負担定期的な検査と投薬管理が必要になり、経済的コストもかかる
  • 副作用が疑われる場合は勝手に服用を中止せず医師に連絡する
  • 定期的な血圧記録をつけて通院時に情報を共有する
  • 副作用を減らすために服用時間や食事とのタイミングを調整する場合がある
  • 治療効果と負担のバランスを検討しながら投薬プランを決める

十分な情報を得たうえで、医師と共に副作用を抑える方法を模索することが、より良い治療結果につながります。

保険適用と治療費

起立性低血圧の治療にかかる費用は、保険適用の範囲や通院頻度、薬の種類によって異なります。症状の程度や原因疾患の有無によって、検査項目が増えることもあるため、あらかじめ大まかな費用を把握しておくと安心です。

外来診療の費用

一般的な検査や診察は保険診療の範囲に含まれます。血圧測定や起立試験、血液検査、心電図検査などの基本的な検査費用は3割負担(一般的な健康保険加入者の場合)で済むケースが多いです。

ただし、ホルモン検査や特殊な検査を組み合わせると費用がかさむことがあります。

24時間ホルター血圧測定

24時間の血圧測定は、必要と判断された場合に保険適用となります。ただし機器の取り付けや解析費用が加算されるため、検査自体の料金が高めになる傾向があります。

医療機関によって費用は異なりますが、自己負担でも数千円~1万円程度かかる場合があります。

薬剤費

起立性低血圧の症状を緩和する薬剤の多くは保険の適用対象となるので、負担は3割程度です。薬の種類や使用日数、用量によって異なりますが、長期服用の場合は毎月一定のコストが必要です。

ジェネリック医薬品が存在する場合は費用を抑えられる可能性があります。

通院頻度と追加費用

症状が安定しない場合、こまめに通院して投薬量や検査を調整することが重要です。複数回の通院となると診察費用や交通費、必要に応じてMRIなどの高額検査を組み合わせる場合も考えられます。

高額療養費制度を利用できるケースもあるため、経済的に不安がある方は早めに相談するとよいでしょう。

次の一覧で主な費用項目をまとめます。

費用項目具体的な内容
外来診療診察料、起立試験、血液検査、心電図検査など
24時間ホルター測定機器装着、データ解析
薬剤費血管収縮薬やホルモン調整薬など
通院・追加検査費用交通費、MRI検査、必要に応じた専門外来の受診など
  • 高血圧や心臓病など別の疾患で通院中の場合はまとめて診察を受けると効率的
  • 病院選びは通いやすさや検査設備の充実度を考慮すると継続しやすい
  • 複数の医療機関で受診する際は、検査結果を共有できるように資料を保管する
  • 経済的負担が大きいと感じたら医療ソーシャルワーカーに相談して公的制度の利用を検討

治療の継続を支えるためには、症状と費用のバランスを見極め、無理のない通院計画を立てることが大切です。

以上

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