表在性血栓静脈炎

表在性血栓静脈炎

表在性血栓静脈炎とは、皮膚に近い部分を走る静脈に血栓が形成されて炎症が起こる病気です。

ときには軽い痛みや腫れで気づかない人もいますが、進行すると日常生活に支障をきたすリスクが高まります。初期段階での正しい理解と、適切な治療・ケアが重要です。

この記事では、表在性血栓静脈炎の病型、症状、原因、検査方法、治療内容、治療期間、副作用や費用面などを幅広く解説します。治療を始めるきっかけとしてご活用ください。

目次

病型

表在性血栓静脈炎にはさまざまな病型があります。血栓ができた場所や原因の違いによって特徴が異なり、症状の出方にもバリエーションがあります。

ここでは代表的な病型について解説しながら、それぞれが引き起こす可能性のある合併症や治療方針の違いを見ていきます。

表在性血栓静脈炎の分類と特徴

表在性血栓静脈炎は、下肢や上肢など血栓の発生部位によって分類できます。下肢に多いイメージがありますが、実際には腕に発生するケースも存在します。炎症がどの程度広範囲に及ぶかによっても、経過や治療方針に違いが生じます。

下肢の表在性血栓静脈炎では、伏在静脈に血栓が生じるケースが多く、痛みや腫脹のほか、皮膚が赤くなることがあります。上肢にできた場合は、静脈路が目立たないので症状に気づきにくいこともありますが、痛みや圧痛が手がかりとなることもあります。

重症度と合併症のリスク

血栓が細い静脈に限局している段階ならば、比較的症状が軽いこともあります。しかし、血栓が深部静脈に近接する部位まで広がると、深部静脈血栓症への移行リスクが高くなります。

深部静脈血栓症は肺塞栓症の危険性も高まるため、早期の発見・治療が重要です。

合併症のリスクを下げるためには、適切な治療だけでなく、日常の予防策も欠かせません。特に、体を長時間動かさない人や過去に血栓症の経験がある人は注意が必要です。

局所性と広範性の違い

表在性血栓静脈炎は、局所だけにとどまるケースと、広範囲に波及するケースに大別できます。局所性の場合は、血栓がある部分が限局的に痛むのが特徴です。

一方、広範性の場合は、血栓が複数箇所にわたって形成されることがあり、痛みや腫れが広い範囲に及ぶ可能性があります。

特殊な部位に生じる場合

一般的には下肢で多く見られますが、腹部表在静脈や頸部など、まれな部位にも血栓が生じる場合があります。珍しい部位に起こる表在性血栓静脈炎は、診断が難しくなることもあるので、疑わしい症状を感じた場合は早めの受診が大切です。

  • 血栓が形成されやすい要因として、静脈壁の損傷、血液の凝固異常、血流の停滞などが挙げられます
  • 病型は部位だけでなく、血栓の広がり具合や合併症の有無でも分けられます
  • どの病型でも早期治療が重要です
  • 痛みや腫れがわずかでも放置せず専門医に相談すると安心につながります

表在性血栓静脈炎の代表的な特徴をまとめます。

病型の種類主な特徴リスクの程度
下肢の表在性血栓静脈炎足の伏在静脈に多い。皮膚の発赤・圧痛が出現深部静脈血栓症に移行する恐れ
上肢の表在性血栓静脈炎腕の静脈に生じる。痛みはあるが気づきにくい血栓の広がりに注意
局所性血栓が限局的。痛みが明確で範囲は狭い重症化は少ないが要観察
広範性複数の場所に血栓が波及しやすい合併症の可能性が高い

このように、表在性血栓静脈炎は多様な病型をもちます。どの病型でも、安易な自己判断ではなく専門家の診断が大切です。

表在性血栓静脈炎の症状

表在性血栓静脈炎は、表在静脈の炎症によって起こるさまざまな症状を伴います。

ここでは、見た目からわかる変化だけでなく、痛みの質や時間経過による症状の推移などを詳しく確認します。自分の状態を知る手がかりとして役立ててください。

初期症状と見た目の変化

初期症状として、患部の軽い痛みや発赤、表面が熱っぽく感じることがあります。皮膚の上から静脈が硬く触れる、あるいはぼこっとしたしこりのような感覚がある場合も少なくありません。

痛みが強くなくとも、触れると鈍痛を感じたり、腫れがわずかに生じたりするので、初期の段階で気づく人もいます。見た目の変化がはっきりせず、むくみと誤認して受診を遅らせるケースもあるので注意が必要です。

痛みの性質とその広がり方

痛みはズキズキとした拍動を伴うものや、押したときに刺すような痛みなど、人によって異なります。日中よりも夜間に痛みが強く感じる場合もあります。

痛みが増すと、日常動作に支障が生じる可能性もあり、長時間の立位や歩行がつらくなることがあります。

痛みが段階的に広がる場合や、腫れや熱感が周辺部にも及ぶときは、血栓が拡大している恐れがあり、早めの対処が必要です。

皮膚の発赤・熱感・硬結

炎症が強くなると、患部の皮膚に赤みが帯び、触れると熱感を感じるようになります。また、静脈の走行に沿って硬くなった部分が触れることもあり、見た目にロープ状の盛り上がりが生じることもあります。

重症化すると強い痛みとともに大きな腫れが出現し、衣服にこすれるだけでも不快感や痛みが増すことがあります。

長期化するケースの特徴

多くの場合、適切な治療やケアを行うと症状は徐々に落ち着いていきますが、炎症が長期化して皮膚変化や慢性的な痛みが残るケースもあります。

日常生活に支障が及ぶほど痛みが続くなら、別の疾患が隠れている可能性もあるため、医療機関の受診を検討してください。

  • 痛みの感じ方には個人差がある
  • 硬結を伴うと触った時に痛みや違和感が強くなる
  • 痛みが落ち着いた後も皮膚の色素沈着が残る場合がある
  • 安静にしすぎると血流が悪化することもある

下表では、症状が進行する段階ごとのポイントを示します。

症状の段階主な特徴注意点
初期軽度の痛みや発赤、触れると熱っぽさを感じるむくみと勘違いしやすいので観察が重要
中期ロープ状の硬結、腫脹、ズキズキとした痛みが強くなる血栓が広がるリスクあり。早期の医師相談が望ましい
重症皮膚の明らかな変色、大きな腫れ、強い痛み深部静脈血栓症との合併リスクも高まるため検査が重要
慢性化痛みの持続、色素沈着などの皮膚変化が残る血栓症以外の要因を含む複合的な治療方針を検討する必要がある

症状は人によってさまざまです。痛みに我慢せず、早めの受診を意識したほうが安心です。

表在性血栓静脈炎の原因

表在性血栓静脈炎を引き起こす原因は多岐にわたります。静脈の内壁が損傷する、血液の凝固が高まりやすい、血流が滞るなどの要因が重なると、血栓が形成されるリスクが上がります。

ここでは、具体的な原因や要因となる生活習慣について詳しく触れていきます。

血流停滞によるリスク

血流が停滞すると、血栓を作りやすい状態になります。

長時間のデスクワークや飛行機での移動が続くなど、同じ姿勢でいる時間が長い場合は要注意です。下肢や上肢の筋肉が十分に使われず、ポンプ作用が弱まることで血液が滞りやすくなります。

血流をよくするために、こまめに足や手を動かしたり、水分補給を心がけたりすると血栓形成リスクを下げることにつながります。

血液凝固能の亢進

生まれつき血液が凝固しやすい体質の人や、病気や薬剤の影響で血液凝固因子が過剰に働いている人も、表在性血栓静脈炎を起こしやすい傾向があります。

特定のホルモン剤などを使用すると、一時的に血液が固まりやすくなることもあるので注意が必要です。

ホルモンの影響としては、経口避妊薬やホルモン補充療法などが挙げられます。これらを使用中の人は、静脈血栓症の兆候に注意を向けることが大切です。

静脈の損傷

静脈壁が傷つくと、血栓形成のトリガーになりやすくなります。注射や点滴の留置針の挿入、外傷などで静脈に物理的刺激が加わると、壁がダメージを受け、そこに血小板やフィブリンが付着して血栓ができやすくなります。

医療処置などで針を使うときは、その後の観察も含めて慎重に行う必要があります。

その他の要因

肥満や喫煙、高齢など、さまざまなライフスタイルや年齢的背景も血栓リスクに影響します。体重が増えると下肢への負担が増し、静脈の血流が滞りやすくなります。

喫煙は血管内皮を傷つけるので、血栓形成を促進する可能性があります。高齢になって筋力が低下すると、ポンプ作用が弱まり血行不良が生じやすくなります。

  • 長時間同じ姿勢をとる仕事をしている
  • 経口避妊薬やホルモン補充療法を使用している
  • 肥満や喫煙、高齢などの要因が重なる
  • 外傷や注射などで静脈壁が傷ついたことがある

下表に、表在性血栓静脈炎を引き起こす可能性のある主な原因と背景要因をまとめます。

原因・要因具体例リスク上昇のメカニズム
血流の停滞長時間同じ姿勢、車や飛行機の移動筋ポンプ作用の低下による血流停滞
血液凝固能の亢進遺伝的体質、ホルモン剤の使用血栓形成に必要な因子が過剰に働きやすい
静脈壁の損傷注射、点滴、外傷など損傷部位に血栓が付着しやすくなる
生活習慣や身体的要因肥満、喫煙、高齢血管機能の低下や血行不良が起こりやすい

原因を知ることで、予防策を立てやすくなります。習慣を見直すことも、血栓症の発症や再発を防ぐ助けになります。

検査・チェック方法

表在性血栓静脈炎かどうかを確定し、合併症の有無や進行度を把握するためには、いくつかの検査を行います。主に画像診断が中心となりますが、血液検査や身体所見の確認も大切です。

ここでは、どんな検査を受けるのか、どんな点に注意すべきかを整理します。

診察での視診と触診

初診時には、医師が患部の外観を観察し、触ったときの痛みや腫れ、硬結の状態を確認します。しこりがあるか、皮膚の色や温度の変化があるかをしっかりチェックし、必要に応じて追加の検査に移ります。

視診や触診では、他の病気との鑑別を行う手がかりにもなります。仮に違う疾患が疑われる場合には、検査内容も変わることがあります。

エコー検査(超音波検査)の重要性

表在性血栓静脈炎の診断において、超音波検査は非常に役立ちます。

静脈の内部に血栓がどの程度存在するか、血流の状態がどうなっているかをリアルタイムで観察できるため、深部静脈にまで血栓が及んでいるかどうかも見分けやすくなります。

超音波検査は、痛みや被ばくの心配がほとんどなく、短時間で済むことが多いので、患者の負担も軽減できます。

血液検査でのポイント

血液検査では、炎症の指標(CRPや白血球数など)や血液凝固因子(Dダイマーなど)を確認します。Dダイマーが高値の場合は血栓形成が疑われ、追加の検査を行うことがあります。

これらの数値を総合して、治療方針を決定する目安とすることがあります。

必要に応じた画像検査

エコー検査だけでは正確な情報が得られない場合や、深部静脈の状態をより詳しく調べたい場合は、CTやMRIなどの画像検査を行うこともあります。

特に肺塞栓症が疑われる症例では、胸部CTなどで肺の血管をチェックする場合があります。

  • 視診や触診で血栓の場所や症状の程度を把握する
  • 超音波検査は表在性血栓静脈炎の診断に有用
  • 血液検査では炎症や凝固因子の異常を確認
  • 深部静脈や他臓器との合併症の可能性がある場合にはCTやMRIを検討

下表に、代表的な検査方法とその目的を示します。

検査方法主な目的メリット
視診・触診皮膚の色、硬結、熱感、痛みの程度を確認シンプルで早期発見につながる
超音波検査表在静脈内の血栓、血流の途絶を可視化非侵襲的、被ばくのリスクなし
血液検査炎症の指標や血液凝固因子のチェック数値を見て治療方針の決定がしやすい
CT・MRIなどの画像検査深部静脈や肺など、他部位への血栓波及を詳細に評価広範囲の情報取得が可能

これらの検査を組み合わせることで、表在性血栓静脈炎の確定診断と、その後の合併症リスクを把握できます。

表在性血栓静脈炎の治療方法と治療薬について

表在性血栓静脈炎は、適切な治療によって痛みの緩和や血栓の拡大防止が期待できます。ここでは、主に薬物療法、物理療法、生活習慣の見直しなど、多角的な治療アプローチについて解説します。

薬物療法:消炎鎮痛薬や抗凝固薬

まず痛みや炎症を軽減するために、消炎鎮痛薬(NSAIDsなど)を使用するケースがよくあります。患部の炎症を抑えることで、症状が和らぐ効果が見込めます。

血栓の拡大を防ぐ目的で、抗凝固薬を使用する場合もあります。ヘパリン軟膏を患部に塗る方法も一般的です。

抗凝固薬を使用する場合は、血液凝固機能のバランスを見ながら用量を調整し、出血のリスクに注意しつつ進めます。自己判断で服薬をやめると、再発リスクが高まる可能性があるため、医師の指示が欠かせません。

物理療法:弾性ストッキングや温罨法

弾性ストッキングの着用は、下肢での血流の促進に効果的です。外部から圧力をかけることで血液の逆流を防ぎ、筋ポンプ作用を補助します。温罨法によって患部の血行を改善する方法もあり、痛みを和らげる手段として用いられます。

ただし、熱すぎるお湯を使うと逆に炎症が増す場合があるため、適温を守って行うことが大切です。

生活習慣の改善

血流をよくするためには、こまめな運動や体重管理が重要です。特に長時間座りっぱなし、立ちっぱなしの人は、足のストレッチやウォーキングなどの運動を取り入れて血行を促進しましょう。

喫煙習慣がある場合は血管への負担を減らすためにも禁煙が望ましいです。

過度のアルコール摂取も血管機能を損ねることがあるので、飲酒の量や頻度を見直すといいでしょう。

外科的処置の可能性

表在性血栓静脈炎は、薬物や物理療法で十分改善することが多いですが、血栓が大きく深部静脈にまで波及しそうな場合や、合併症が懸念される場合には外科的処置を検討することがあります。

血栓摘出や静脈結紮などの方法があり、医師の判断によって治療方針が決定されます。

  • 消炎鎮痛薬や抗凝固薬による炎症や血栓拡大の抑制
  • 弾性ストッキングや温罨法で血流を改善
  • 定期的な運動や体重管理、喫煙・飲酒習慣の見直し
  • 重症例では外科的治療も選択肢に入る

下表では、代表的な治療法とその特徴を示します。

治療法特徴注意点
薬物療法(NSAIDsなど)痛みや炎症を緩和胃腸障害や出血リスクなど副作用に注意
抗凝固薬(ヘパリンなど)血栓拡大の防止用量や期間を正しく守る必要がある
弾性ストッキング下肢の血流促進、むくみ防止サイズや着用方法を正しく選ぶ
外科的処置血栓摘出や静脈結紮など合併症や症例によっては適応にならない場合もある

複数の方法を組み合わせて治療を進めると、より効果的に症状を改善できる可能性があります。

治療期間

表在性血栓静脈炎は、症状の程度や個人差によって治療期間が異なります。症状が軽い場合は数週間ほどで改善がみられることもありますが、慢性的な炎症が続く場合は数カ月にわたる治療が必要となることもあります。

ここでは、治療期間に影響を与える要素や治療の進め方を取り上げます。

症状の軽重と治療期間の目安

症状が軽い場合は、消炎鎮痛薬や適度な安静、弾性ストッキングの使用によって、数週間で痛みや腫れがほとんど消失するケースがあります。

しかし、血栓の範囲が広い場合や深部静脈血栓症への移行が懸念されるケースでは、長期的な治療プランが必要です。抗凝固薬を服用する期間も、数週間から数カ月にわたることがあります。

再発防止のための観察期間

表在性血栓静脈炎は再発を繰り返しやすい一面もあるため、治療後も数カ月単位で経過観察を行うことが大切です。特に、過去に同様の症状を経験している場合や、血液凝固能の異常が疑われる場合は慎重なフォローが必要になります。

日常生活への復帰とリハビリ

多くのケースでは、症状が落ち着けば日常生活へ徐々に復帰できます。痛みや腫れが引いた後も、軽いウォーキングやストレッチで血流を促進し、再発リスクを下げることを意識するといいでしょう。

仕事への復帰や運動再開のタイミングは個人差が大きいため、主治医と相談しながら決定するのが望ましいです。

治療を長引かせないための工夫

治療期間を短縮させるためには、医師の指示を守って適切な薬を継続し、弾性ストッキングや温罨法などのケアを怠らないことが重要です。自己判断で治療を中断すると、血栓が再び大きくなる恐れがあります。

  • 軽症例なら数週間程度で改善することが多い
  • 重症例や合併症がある場合は数カ月の治療が必要
  • 治療終了後も再発予防のために数カ月単位のフォローが欠かせない
  • 運動とケアを組み合わせて早期の回復を目指す

下表は、一般的な治療期間の目安と回復プロセスを示します。

症状の重さ治療期間の目安回復プロセス
軽症2~4週間ほどNSAIDsなどで炎症を抑制、弾性ストッキングなどの物理療法併用
中等度1~3カ月ほど抗凝固薬の使用を検討、定期的に経過観察
重症3カ月以上血栓の大きさや深部静脈への波及を注視、外科処置の場合もあり
再発リスク数カ月~長期的な観察定期的な検査と生活習慣の見直しが重要

個々の症状や背景によって状況は変わるため、主治医と十分相談しながら治療計画を立てることが大切です。

表在性血栓静脈炎薬の副作用や治療のデメリットについて

表在性血栓静脈炎の治療では、消炎鎮痛薬や抗凝固薬などを使用しますが、これらの薬には副作用のリスクがあることも知っておく必要があります。

また、治療によって生活に制限がかかったり、コストが増えたりするデメリットも存在します。これらを正しく理解し、リスクとベネフィットを比較したうえで治療を進めることが大切です。

消炎鎮痛薬(NSAIDsなど)の副作用

NSAIDsは炎症と痛みを緩和する効果が期待できますが、一方で胃の粘膜を荒らす可能性があります。長期的に服用すると胃潰瘍や消化器系のトラブルを招くリスクが高まるため、胃薬を併用するなどの対策を講じることが望ましいです。

また、腎機能が低下している方や高齢者では、腎臓や心臓への負担増加を引き起こす可能性もあるので、主治医が慎重に判断します。

抗凝固薬の副作用と注意点

血栓の拡大や再発を防ぐ抗凝固薬は、血液を固まりにくくする作用があるため、出血リスクが高まる可能性があります。軽い打撲でも出血が止まりにくいことがあり、歯科治療などを受ける際はあらかじめ主治医と相談すると安心です。

抗凝固薬の種類によっては、定期的に血液検査を受けて服用量を調整する必要があります。自己判断で服薬を調節すると、治療の効果が十分に得られないまま再発を招く恐れがあります。

治療継続による負担や制限

長期間の服薬や通院が必要な場合、仕事や家事との両立に苦労することがあります。弾性ストッキングを着用する場合も、着脱が面倒に感じたり、夏場は蒸れやすかったりするため、不快感を覚える人がいます。

外科処置が必要になった場合には、手術に伴う痛みや入院の手間、あるいは術後のリハビリが必要です。治療法を検討する際には、こうした生活上のデメリットも考慮することがポイントです。

コスト面のデメリット

表在性血栓静脈炎の治療には、薬代や検査費用、入院や手術が絡む場合はさらに費用がかかります。保険が適用される範囲内であれば負担を軽減できますが、治療が長期に及ぶと医療費がかさむケースもあります。

  • NSAIDsなどの消炎鎮痛薬は消化器系への負担がある
  • 抗凝固薬には出血リスクの上昇が伴う
  • 長期治療による通院負担や弾性ストッキングの着用負担
  • 治療費が増加する可能性

下表に、代表的な薬物療法の副作用と対策をまとめます。

薬剤種別主な副作用主な対策
NSAIDs胃粘膜障害、腎機能低下胃薬の併用、定期的な血液検査
抗凝固薬出血リスクの増加内服量の管理、打撲やケガに注意
ヘパリン製剤皮下出血、皮膚のかぶれ患部の経過をこまめにチェック
外用薬(軟膏など)皮膚トラブル、かぶれ適量使用を守り、状態を観察

治療のメリットとデメリットを比較し、自分の生活スタイルや健康状態に合った選択をすることが重要です。

保険適用と治療費

表在性血栓静脈炎の治療は、多くの場合で健康保険が適用されます。ただし、治療方法や病院によって費用が異なる場合もあり、自己負担額が大きくなるケースも存在します。

ここでは、保険適用の範囲や治療費の見通し、経済的負担を軽減するための工夫について触れていきます。

保険適用される主な治療内容

日本の公的医療保険では、表在性血栓静脈炎の診察や薬物療法、必要な検査は基本的に保険適用の対象となります。超音波検査や血液検査、CT・MRI検査なども、医師が必要と判断すれば保険でカバーされることが多いです。

ただし、病院ごとの設備や検査内容によって自己負担額が変わる場合があります。

自己負担額の目安

表在性血栓静脈炎に対する一般的な治療費は、軽症であれば月数千円~数万円程度の自己負担で収まることが多いです。抗凝固薬の種類や服薬期間、外科処置の有無によって大きく変動します。

長期的な抗凝固療法が必要な場合や、複数回の検査・診察を行う場合は、合計の自己負担額がかさむ可能性があります。高額療養費制度を利用すると一定額以上の負担を軽減できるので、必要に応じて検討すると安心です。

弾性ストッキングなどの医療材料費

弾性ストッキングも、場合によっては医療用として保険適用されるケースがあります。

医療用弾性ストッキングは一般的な市販品よりやや高価ですが、血行促進の効果が高いと期待できるため、医師の指示に従って最適なサイズ・圧力のものを選ぶことが望ましいです。

治療費を抑えるための工夫

費用を抑えるためには、医師と相談して薬剤の種類や処方の期間を調整する方法があります。

ジェネリック医薬品を選択すると薬価が低くなる場合もあります。治療を途中でやめたり、自己流の判断をしたりすると、逆に重症化して医療費が増大する恐れがあるため注意が必要です。

  • 健康保険で超音波検査や血液検査などもカバーされることが多い
  • 治療期間が長い場合は月数万円以上の自己負担となることもある
  • 弾性ストッキングや医療材料の費用も確認が必要
  • 高額療養費制度やジェネリック医薬品の活用も検討できる

下表は、治療費に関わる主な要素をまとめたものです。

費用要素内容負担の目安
診察・検査費診察料、超音波検査、血液検査など症状や病院によるが数千円~数万円程度
薬剤費消炎鎮痛薬、抗凝固薬、外用薬など処方日数や薬の種類で変動
物理療法・材料費弾性ストッキング、包帯など保険適用の有無や製品によって異なる
外科処置・入院費用血栓摘出、静脈結紮術、入院など数万円~数十万円に及ぶ可能性あり

保険適用と実際の自己負担額に関しては、医療機関の受付や医療ソーシャルワーカーなどに相談するとよいでしょう。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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