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ジアノッティ病（Gianotti病）（Gianotti-Crosti syndrome）とは、ウイルス感染後に特徴的な発疹が現れる幼児や小児に多く見られる皮膚疾患です。
発疹は顔面、上肢、下肢に左右対称に現れ、赤みがかった、または褐色の小さな盛り上がりとして観察されます。
症状は数週間から数ヶ月に及ぶこともありますが、多くの患者さんは自然経過で回復します。
この記事の執筆者
小林 智子（こばやし ともこ）
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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ジアノッティ病（Gianotti病）の症状
ジアノッティ病の主要な症状は、独特の皮疹と軽微な全身の変化で、皮疹は左右対称に現れ、数週間から数ヶ月続きます。
皮疹の特徴
ジアノッティ病を特定する最も重要な手がかりは、特有の皮疹です。
皮疹の特徴
- 色合い：赤褐色または茶褐色
- 形態：丘疹（皮膚表面の小さな隆起）
- サイズ：直径1〜5mm程度
- 触った感じ：固く、上部が平らな
- 出現箇所：顔面、手足、臀部に左右対称に
皮疹は痒みを伴わず、圧迫しても色調が変化しません。
皮疹の経過と継続時間
| 段階 | 様子 | 期間 |
| 初期 | 顔や手足に小さな皮疹が出現 | 数日〜1週間 |
| 拡大期 | 皮疹の範囲と数が増える | 1〜2週間 |
| ピーク期 | 皮疹が最も顕著に | 数週間〜数ヶ月 |
| 回復期 | 少しずつ消えていく | 1〜2週間 |
皮疹の継続時間は短くて2〜3週間、長い場合は数ヶ月続くこともあります。
全身の変化
皮疹に加えて、軽度の全身の変化が見られることがあります。
- 微熱（38度未満）
- だるさ
- 食欲減退
- リンパ節の腫脹（特に頸部や腋窩）
このような変化は軽微で、数日から1週間程度で落ち着きます。
症状の個人差
| 症状 | 軽度 | 中程度 | 重度 |
| 皮疹の広がり | 限局的 | 広範囲 | 全身性 |
| 全身の変化 | ほとんどなし | 軽微 | 明らかに |
| 継続期間 | 2〜3週間 | 1〜2ヶ月 | 3ヶ月以上 |
症状の程度や継続期間は免疫状態や年齢が影響します。多くの場合、症状は自然に改善しますが、経過観察が欠かせません。
ジアノッティ病（Gianotti病）の原因
ジアノッティ病（Gianotti病）はウイルス感染によって起こります。
ウイルス感染と発症メカニズム
ジアノッティ病の発症にはさまざまなウイルスが関与し、代表的なものは、Epstein-Barrウイルス（EBV）、B型肝炎ウイルス、コクサッキーウイルスです。
ウイルスが体内に侵入すると、免疫系が反応し、特徴的な皮膚症状を起こします。
| ウイルス | 特徴 |
| Epstein-Barrウイルス | 伝染性単核球症の原因ウイルスとして知られる |
| B型肝炎ウイルス | 肝臓に感染し、急性・慢性肝炎を起こす |
| コクサッキーウイルス | 手足口病などを引き起こす |
免疫系の役割
ジアノッティ病の発症には、免疫系の過剰反応が関与しています。
ウイルスの侵入に対して免疫系が活性化され、皮膚に炎症反応が生じ、この免疫反応により発疹や丘疹が形成します。
遺伝的背景
ジアノッティ病の発症には、特定の遺伝子変異や多型がウイルス感染後の免疫反応に影響を与え、発症リスクを高める可能性があります。
環境因子と年齢の影響
環境要因もジアノッティ病の発症に関連しています。
関連する環境要因
- 季節変動（特定の時期にウイルス感染が増加）
- 衛生環境
- 集団生活環境（保育施設や学校など）
また、ジアノッティ病が多くみられる年齢層は、小児、1歳から6歳の子どもです。この年齢層がウイルス感染に対して感受性が高いことが関係しています。
| 年齢 | 発症頻度 |
| 1-3歳 | 高頻度 |
| 4-6歳 | 中程度 |
| 7歳以上 | 低頻度 |
ジアノッティ病（Gianotti病）の検査・チェック方法
ジアノッティ病の診断は、問診と特徴的な皮疹の観察を基本とし、必要に応じて血液検査やウイルス検査などを追加して確定診断をくだします。
臨床診断の流れ
ジアノッティ病の臨床診断は、3つの要素に基づいて進められます。
- 症状の経過聴取
- 特徴的な皮疹の綿密な観察
- 類似疾患の除外
患者さんの年齢、症状の推移、最近の感染症罹患歴などを聞き取り、その後、皮疹の特徴や出現部位を観察します。
皮疹の観察ポイント
| 観察項目 | 確認ポイント |
| 色合い | 赤褐色〜褐色 |
| 形態 | 丘疹（小さな隆起） |
| サイズ | 1〜5mm程度 |
| 出現部位 | 顔面、四肢、臀部に左右対称 |
| 触った感じ | 硬く、上部が平ら |
これらの特徴を一つ一つ確認しながら、ジアノッティ病に典型的な皮疹かどうかを見極めます。
補完的な検査方法
臨床所見だけでは判断が難しい場合、補完的な検査を実施します。
- 血液検査：白血球数、肝機能、ウイルスに対する抗体価の測定
- ウイルス検査：PCR法を用いたウイルス遺伝子の検出
- 皮膚生検：非典型的な症例における病理組織学的な評価
類似疾患との見分け方
| 疾患名 | 共通点 | 違いの特徴 |
| 麻疹 | 発疹、熱発 | 発疹の性質、粘膜症状の有無 |
| アトピー性皮膚炎 | 皮疹の分布範囲 | 痒みの強さ、経過の違い |
| 薬疹 | 全身に広がる発疹 | 薬の使用歴、発疹の特徴 |
ジアノッティ病は他の皮膚疾患と似た症状を示すことがあるため、鑑別が必要です。
ジアノッティ病（Gianotti病）の治療方法と治療薬について
ジアノッティ病の治療は対症療法で、抗ヒスタミン薬や外用ステロイド薬を用いて症状をやわらげます。
対症療法の意義
ジアノッティ病は時間とともに自然に治る疾患で、特効薬はありませんが、患者さんの不快感を軽減し、日常生活の質を保つために対症療法が大切です。
対症療法では、皮膚症状の改善と痒みの抑制を目指します。
抗ヒスタミン薬による治療
抗ヒスタミン薬はジアノッティ病の治療の中心で、皮膚の痒みを抑え、患者さんの苦痛をやわらげる効果があります。
| 抗ヒスタミン薬の世代 | 特徴 |
| 第一世代 | 即効性があるが眠気を引き起こしやすい |
| 第二世代 | 眠気が少なく効果が持続する |
処方される抗ヒスタミン薬
- フェキソフェナジン
- セチリジン
- ロラタジン
- デスロラタジン
外用ステロイド薬の使用
外用ステロイド薬は、皮膚の炎症を抑え、発疹や丘疹の症状を軽減するのに用います。
| ステロイド薬の強さ | 適用部位 |
| 弱〜中程度 | 顔、皮膚が擦れる部分 |
| 中〜強程度 | 胴体、手足 |
補助的な治療法
症状に応じて、別の治療法を加えることがあります。
皮膚の乾燥が目立つときは保湿剤の使用を、また、細菌感染の危険がある場合は、抗生物質の塗り薬や飲み薬の使用を検討することに。
経過観察と治療期間
ジアノッティ病は、3〜8週間で自然に良くなりますが、患者さんごとに経過が違うため、定期的な診察が欠かせません。
症状が長引いたり、悪化の兆しがあったりする場合は、治療方針の見直しが必要になることもあります。
| 経過期間 | 対処法 |
| 〜4週間 | 通常の経過観察を続ける |
| 4〜8週間 | 症状に合わせて治療を継続 |
| 8週間以上 | 治療方針を再検討する |
薬の副作用や治療のデメリットについて
ジアノッティ病の治療は症状をやわらげる対処療法が中心ですが、用いる薬や治療法によっては副作用やリスクが生じます。
対症療法に伴う副作用
ジアノッティ病の治療で行われる対症療法は、使用する薬によって副作用が出ることがあります。
| 薬の種類 | 副作用 |
| 抗ヒスタミン薬 | 眠気、口の渇き |
| ステロイド外用薬 | 皮膚の萎縮、毛細血管の拡張 |
| 解熱鎮痛薬 | 胃腸の不調、肝機能の異常 |
副作用は薬の使用量や期間によって異なり、患者さんの症状や全身の状態を考慮しながら、薬剤を選びます。
免疫抑制療法のもたらすリスク
重い症状や治りにくい場合、免疫抑制療法が検討されます。
免疫抑制療法のリスク
- 感染症にかかりやすくなる
- 長期使用による骨の密度低下
- 血糖値が上がる
- 血圧が高くなる
免疫抑制療法の使用は、症状の重さとリスクを比べたうえで決定されます。
合併症のリスク
注意すべき合併症には次のようなものがあります。
- 二次感染：皮膚を掻くことによる皮膚の防御機能低下
- 色素沈着：炎症が治まった後の色素沈着
- 傷跡形成：炎症が重度の場合や不適切な処置による
経過観察の重要性
治療中は定期的な経過観察が欠かせません。
注意する点
- 症状の変化
- 副作用の出現
- 新たな症状の出現
- 全身の状態変化
継続的な観察により治療の効果を最大限に引き出し、リスクを最小限に抑えられます。
保険適用と治療費
以下に記載している治療費（医療費）は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
外来治療における費用
外来治療における費用の目安
| 項目 | 保険適用前の費用 | 保険適用後の自己負担額（3割の場合） |
| 診察料 | 2,800円 | 840円 |
| 皮膚科検査 | 5,000円 | 1,500円 |
| 軟膏処方 | 3,000円 | 900円 |
| 内服薬処方 | 4,000円 | 1,200円 |
入院治療が必要な場合の費用
重症のジアノッティ病では、入院治療が必要となることがあります。
| 項目 | 保険適用前の費用（1日あたり） | 保険適用後の自己負担額（3割の場合） |
| 入院基本料 | 15,000円 | 4,500円 |
| 検査・処置 | 10,000円 | 3,000円 |
| 薬剤費 | 8,000円 | 2,400円 |
| 食事療養費 | 1,920円 | 460円 |
以上
参考文献
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