C型慢性肝炎(Chronic hepatitis C)とはC型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓の炎症で、長期間にわたり進行します。
初期段階では症状がほとんど現れませんが、時間の経過とともに肝臓に深刻なダメージを与えていきます。
ウイルスは血液を介して感染し、主に輸血や医療行為、注射針の共有などによって広がります。
C型慢性肝炎の症状
C型慢性肝炎の症状は初期段階では気づきにくいものが多く、多くの場合、長年にわたって自覚症状がないまま時間が経過します。
病気が進行するにつれて、徐々にさまざまな症状が現れてきます。
症状の種類 | 特徴 |
初期症状 | 無症状または非特異的な症状が多い |
進行時の症状 | 肝機能低下を示す症状が現れる |
主な症状
C型慢性肝炎の主な症状には、疲労感、倦怠感、食欲不振、吐き気、右上腹部の不快感などがあります。
このような症状は他の病気でも見られるため、症状だけでC型慢性肝炎と診断することはなかなか難しいのが現状です。
進行した場合の症状
病気が進行すると、肝臓の機能低下に伴い黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、むくみ、出血しやすくなる、あざができやすくなるなど、より深刻な症状が現れてきます。
症状の出かたは個人差が大きく、症状が現れていなくても、肝臓の炎症や線維化が進んでいることがあります。
厚生労働省の推計によるとC型肝炎ウイルスに感染している人は約90~130万人いると言われていますが、その多くが感染に気づいていない可能性があります。
C型慢性肝炎の原因
C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の慢性的な炎症です。
C型肝炎ウイルスとは
C型肝炎ウイルスは血液を介して感染する病原体で、肝臓の細胞に侵入して長期間にわたり増殖を続けます。
その結果、肝臓の炎症が慢性化し、C型慢性肝炎という状態に至ります。
感染経路
C型肝炎ウイルスの主な感染経路には、輸血や血液製剤の使用、医療行為における針刺し事故、注射器の共有(主に薬物使用者の間で)、入れ墨やピアスの施術(不適切な器具の使用時)、そして母子感染(妊娠中や出産時)などがあります。
現在の日本では、1992年以降に血液製剤のスクリーニング検査が導入されたことにより、輸血による感染はほぼ無くなりました。
しかし、それ以前に輸血を受けた方々の中には、感染に気づいていない方も存在する可能性があります。
また、日本におけるC型慢性肝炎は、感染経路が不明な場合が多いことも特徴です。
項目 | 数値 |
感染者数 | 約90~130万人 |
年間新規感染者数 | 約5,000人 |
感染経路不明の割合 | 約70% |
感染リスクの高い行為
C型肝炎ウイルスは血液を介して感染するため、カミソリや歯ブラシの共有、不特定多数との性行為、医療従事者の針刺し事故などで感染するリスクがあります。
C型慢性肝炎の検査・チェック方法
C型慢性肝炎の診断は、血液検査で行います。血液検査では肝機能を示す値や、C型肝炎ウイルスに対する抗体の有無を調べます。
確定診断のための検査
C型慢性肝炎の確定診断には、PCR法という高感度な検査方法を用いてウイルスの遺伝子を直接検出する検査が必要です。
この検査でウイルスの遺伝子が検出されれば、C型慢性肝炎と確定診断されます。
検査項目 | 目的 |
血液検査 | 肝機能や抗体の確認 |
PCR 検査 | ウイルス遺伝子の検出 |
ウイルス量・型検査 | 治療方針の決定 |
肝臓の状態を評価する検査
C型慢性肝炎では肝臓の状態を詳しく調べることも大切で、腹部超音波検査や肝生検などにより、肝臓の炎症や線維化の程度を調べていきます。
C型慢性肝炎の治療方法と治療薬について
現在、C型慢性肝炎の治療の中心となっているのは、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)と呼ばれる飲み薬です。
C型肝ウイルスの増殖を直接阻害する作用があり、非常に高い効果が期待できます。
C型肝炎治療の飛躍的進歩
C型肝炎の治療は、ここ数年で飛躍的な進歩を遂げました。
かつてはインターフェロンという注射薬を中心とした治療が行われていましたが、強い副作用や長期間の治療が必要というデメリットがありました。
現在では経口薬による治療が主流となり、身体的・精神的負担が大幅に軽減されるとともに、治療効果も格段に向上しています。
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)とは
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は、C型肝炎ウイルスの増殖を直接的に阻害する効果があります。
DAAには複数の種類があり、肝臓の状態やウイルスの型などを考慮して薬剤を選択します。
薬剤名 | 主な特徴と利点 |
グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠 | 8週間の治療期間 幅広い遺伝子型に対応 |
ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠 | 12週間の治療期間 肝硬変の方にも使用可能 |
治療の流れ
- 治療方針の決定
- 薬剤の選択
- 経口薬による治療(通常8〜12週間継続)
- 定期的な血液検査で治療効果を確認します。
- 長期的に経過観察を続けます。
治療終了後24週間経過した時点でウイルスが検出されなければ、医学的に治癒したと判断されます。
C型慢性肝炎の治療期間と予後
C型慢性肝炎の治療期間は一般的に8〜12週間程度で、治療を受けた場合95%以上の患者さんで完治が見込めます。
治療期間
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を毎日決まった時間に服用し、8〜12週間つづけます。
※状態によっては24週間に延長する場合もあります。
治療効果と予後
C型慢性肝炎の治療効果は高く、治療を受けた場合、95%以上の患者さんで体内からウイルスを排除することができます。
この状態を医学用語でSVR(持続的ウイルス学的著効)と呼びますが、SVRが達成されると肝臓の状態が改善し、肝硬変や肝がんへの進行リスクが大幅に低下します。
治療後の経過年数 | 肝がん発症リスク |
5年 | 約2.5% |
10年 | 約5% |
治療後も定期的な検査は必要ですが、多くの患者さんは日常生活を普通に送れるようになります。
- アルコールは控えめに
- バランスの良い食事を心がける
- 適度な運動を行う
- 定期検診を欠かさない
ただし、治療によって完全にウイルスが排除されても、肝臓の繊維化が進んでいる場合は肝がんのリスクが残る可能性があります。
日本肝臓学会の報告によると、C型慢性肝炎の治療成功後も年間0.5~1%程度の確率で肝がんが発生するとされており、治療後も定期的な検査を継続することが推奨されています。
薬の副作用や治療のデメリットについて
C型慢性肝炎の治療薬には、倦怠感や頭痛などの副作用があります。また、治療中断のリスクや薬剤耐性ウイルスの出現といった課題もあります。
副作用について
治療薬の副作用は個人差が大きいものの、一般的には倦怠感、頭痛、吐き気、食欲不振、皮膚のかゆみなどが挙げられます。
これらの症状は多くの場合、治療開始後しばらくすると和らぐ傾向にありますが、副作用が強く出る場合もあります。
治療中断のリスク
副作用が強く出ると、患者さんが治療を中断してしまうケースがあります。
治療を中断するとウイルスが再び増殖し、肝臓の状態が悪化する可能性があります。副作用が辛いときは、医師に相談しながら治療を継続するようにしてください。
薬剤耐性ウイルスの出現
治療を続けていても薬が効きにくいウイルスが現れることがあり、これを薬剤耐性ウイルスと呼びます。
薬剤耐性ウイルスの出現を防ぐには、医師の指示通りに薬を服用し、定期的に検査を受けることが大切です。
保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
C型慢性肝炎の治療は、保険が適用されます。また、経済的負担を軽減するための医療費助成制度も利用できます。
治療費の概要
C型慢性肝炎の治療費は非常に高額で、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を用いた治療では、12週間の治療期間で約300万円から500万円程度となります(保険適用前の金額)。
高額療養費制度を利用すると、年収に応じた自己負担限度額内で治療が受けられます。
年収区分 | 自己負担限度額(月額) |
370万円以下 | 約80,100円 |
370万円~770万円 | 約167,400円 |
770万円以上 | 約252,600円 |
医療費助成制度
C型慢性肝炎は肝炎治療特別促進事業の対象疾患となっており、この制度を利用するとさらに経済的負担を軽減できます。
認定されると月々の自己負担額が10,000円(世帯所得が多い場合は20,000円)まで軽減されるため、長期の治療でも経済的な心配が少なくなります。
詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
以上
参考文献
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