C型肝炎

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus:HCV)に感染することで起こる肝臓の病気です。

主に血液を介して感染し、輸血や医療器具の使い回しなどが主な感染経路でしたが、現在はこれらのリスクは大幅に減少しています。

初期段階では症状がほとんどなく気づかないうちに進行し、長期間放置すると肝硬変や肝がんなどの深刻な合併症を引き起こします。

目次

C型肝炎の病型(ゲノタイプ)

C型肝炎ウイルスは、塩基配列の類似性から1~7型の7種類のゲノタイプ(遺伝子型)と多数の亜型に分けられます。

遺伝子型主な特徴
1型世界中で最も一般的、日本ではこの型が70%と多い
2型治療反応性が比較的良好
3型脂肪肝との関連が強い
4型中東やアフリカで多い

遺伝子型の地理的分布

C型肝炎ウイルスの種類は、世界の地域によって異なります。

1型は世界中で最も多くみられるタイプで、日本でも約70%の感染者がこの1型となります。1a型と1b型に分けられ、日本では1b型が最も多いです。

4型は中東、エジプト、中央アフリカで頻度が高く、5型は南アフリカ、6型は東南アジア、7型は中央アフリカ、というように、地理的分布の違いがあります。

C型肝炎ウイルスは遺伝子型によって治療方針が異なるため、感染しているウイルスの遺伝子型を正確に把握することが大切です。

C型肝炎の症状

C型肝炎の初期段階では、多くの方が無症状であることが特徴です。そのため、感染に気づかないまま数年から数十年が経過する場合もあります。

急性C型肝炎の症状

急性C型肝炎に感染すると、以下のような症状が現れることもあります。

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)

症状は感染後2週間から6ヶ月の間に現れますが、多くの方では明確な症状が現れません。

慢性C型肝炎の症状

急性C型肝炎から慢性化すると、長期間にわたって肝臓に炎症が続きます。

慢性C型肝炎に移行すると、肝臓の機能低下に伴い以下のような症状が現れ始めます。

  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 筋肉痛

慢性C型肝炎が進行すると、肝硬変や肝がんに至る恐れもあります。

肝硬変に至った場合の症状

C型肝炎が進行し肝硬変に至ると、より深刻な症状が現れます。

症状具体的な症状
黄疸皮膚や白目が黄色くなる
腹水お腹に水がたまる
浮腫手足がむくむ
出血傾向出血が止まりにくくなる

注意すべき症状

C型肝炎の進行を示す可能性のある症状として、以下のものに注意が必要です。

  • 皮膚のかゆみ
  • 関節痛
  • 尿の色が濃くなる
  • 便の色が薄くなる
  • 原因不明の体重減少

C型肝炎の症状は個人差が大きく、また無症状の場合も多いため診断が難しいのが現状です。定期的な検査による早期発見・早期対応が重要となります。

C型肝炎の原因

C型肝炎は、「C型肝炎ウイルス」の感染によって起こる肝臓の炎症です。

C型肝炎ウイルスはフラビウイルス科に属する一本鎖RNAウイルスで、非常に小さく直径約50ナノメートルほどしかありません。

ウイルスの表面にはエンベロープと呼ばれる脂質二重膜があり、その中にウイルスの遺伝情報を含むRNAが存在します。

感染経路

C型肝炎ウイルスは、主に血液を介して感染するウイルスです。

感染経路としては、1992年以前の輸血や血液製剤の使用、注射器の共有、医療行為における事故、まれに母子感染などが挙げられます。

また、出血を伴う性行為(生理中など)や肛門性交など、粘膜の損傷を伴う性行為での感染リスクが高いと考えられています。

握手やハグ、キス、食事の共用、トイレの便座など日常的な接触では感染しにくいです。

リスク要因

リスク要因感染経路
薬物使用注射器の共有による感染
医療従事者針刺し事故などによる感染
入れ墨不衛生な器具の使用
性行為生理中の性交や肛門性交など、血液が介在する場合の感染

これらの要因に該当する方はC型肝炎ウイルスに感染するリスクが高いため、注意が必要となります。

以前は輸血や医療器具の再利用が主な感染経路でしたが、現在では輸血や医療器具の管理が厳しくなり、これらの経路での感染は大幅に減少しました。

しかし、薬物注射や入れ墨など、特定の行動による感染は依然として問題となっています。

C型肝炎の検査・チェック方法

C型肝炎の診断は主に血液検査によって行い、必要に応じて画像診断や組織検査を追加します。

初期スクリーニング検査

まずは初期スクリーニング検査として、血液検査を通じてC型肝炎ウイルスに対する抗体の有無を調べます。

この抗体検査は、過去にC型肝炎ウイルスに感染したことがあるかどうかを確認するものです。

現在の感染状況を正確に判断するには不十分な場合がありますので、抗体検査で陽性反応が出た際には、さらなる検査が必要です。

ウイルスRNA検査

抗体検査で陽性反応が確認された場合は、ウイルス RNA 検査を行い、現在体内にC型肝炎ウイルスが存在しているかどうかを確認します。

この検査では、PCR法という高感度な技術を用いて血液中のウイルス遺伝子を検出します。

結果が陽性であれば、現在C型肝炎ウイルスに感染していることになります。

肝機能検査

肝機能検査では、肝臓の健康状態や損傷の程度を調べることができます。

主な検査項目

  • AST(GOT)
  • ALT(GPT)
  • γ-GTP
  • アルブミン
  • ビリルビン

画像診断

画像診断は、肝臓の大きさや形状の変化、脂肪肝の有無、肝硬変や肝がんの兆候などを確認するために行います。

  • 超音波検査
  • CTスキャン
  • MRI

肝生検

肝生検は、肝臓の一部を採取して顕微鏡で観察し、肝臓の炎症や線維化の程度を調べる検査です。

負担が大きい検査であるため、他の検査結果や状態を総合的に考慮し、実施するかどうかを判断します。

C型肝炎の治療方法と治療薬について

C型肝炎の治療では、主に抗ウイルス薬を使います。体内からウイルスを排除し、肝臓の炎症を抑えることが治療目標です。

治療により肝硬変や肝がんなどの深刻な合併症のリスクを低減できるほか、他者への感染リスクも抑えられます。

直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療

現在のC型肝炎治療の主流は、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を用いる方法です。

DAAはC型肝炎ウイルスの複製を直接阻害する薬剤で、以前の治療法と比べて副作用が少なく、治療期間も短いことがメリットです。

薬剤名作用機序
ソホスブビルNS5B阻害薬
レジパスビルNS5A阻害薬
グラゾプレビルNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬
エルバスビルNS5A阻害薬

治療効果の判定

治療効果は、血液検査でウイルスが検出されなくなることで判断します。

治療終了後24週間経過してもウイルスが検出されない状態を、「持続的ウイルス学的著効(SVR)」と呼びます。

SVRが達成されると、ほとんどの場合で完治したと考えられます。

判定時期判定基準
治療終了時ウイルス陰性
治療終了12週後ウイルス陰性持続
治療終了24週後ウイルス陰性持続

治療における注意点

DAAによる治療は効果的ですが、薬剤耐性ウイルスの出現を防ぐため、処方された薬を確実に服用する必要があります。

また、他の薬剤との相互作用にも注意が必要です。

検査項目目的
HCV RNA定量ウイルス量の確認
ALT(GPT)肝機能の評価
血球数副作用のモニタリング

治療中アルコールを控えるなど、肝臓への負担を減らす生活習慣も重要となります。

  • 処方された薬を確実に服用する
  • 他の薬剤との相互作用に注意する
  • 定期的な血液検査を受ける
  • 肝臓に優しい生活習慣を心がける

C型肝炎の治療期間と予後

C型肝炎の治療期間は通常8~12週間程度であり、治療を受けた患者さんの9割以上が治癒する良好な予後が期待できます。

従来のインターフェロン療法では24~48週間かかるのが一般的でしたが、現在ではあまり用いられません。

ただし、肝臓の状態や他の合併症の有無によっては、より長期の治療が必要な場合もあります。

治療法治療期間の目安
経口抗ウイルス薬8~12週間
インターフェロン療法24~48週間

予後

医学の進歩により、C型肝炎は「治る病気」となりました。

経口抗ウイルス薬による治療を受けた方の90%以上でSVRが得られることが報告されており、非常に高い治癒率となっています。

※「持続的ウイルス学的著効(SVR)」:治療終了後24週間経過してもウイルスが検出されない状態

SVRが得られた場合は肝硬変への進行リスクや肝がん発症リスクが低下し、肝臓関連の死亡リスクも減少します。

経過観察について

C型肝炎の治療後は、定期的な検査によって万が一の再発や合併症を早期に発見できます。

治療前に肝硬変や肝線維化が進行していた場合は肝がんの発症リスクが残るため、特に注意が必要です。

C型肝炎を放置すると

多くの感染症は時間が経つと自然に治りますが、C型肝炎ウイルスに感染すると、約70%の人では自力でウイルスを追い出すことができません。

治療をしない場合は慢性肝炎や肝硬変へ進行し、肝臓がんになる危険性も高くなります。

C型肝炎ウイルスに感染していることがわかったら、すぐに治療を始めることが大切です。

薬の副作用や治療のデメリットについて

C型肝炎の治療薬は、倦怠感、吐き気、発疹などの副作用が出る可能性があります。まれに重篤な副作用を引き起こす場合もあるため、医師の指示を守り服用することが大切です。

治療薬の主な副作用

副作用発生頻度
倦怠感高い
頭痛中程度
吐き気低い
不眠中程度

副作用の多くは一時的なものですが、副作用がつづく場合や、強い症状が出た場合は医師に相談するようにしてください。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

C型肝炎の治療費は、非常に高額になります。これは、直接作用型抗ウイルス薬であるDAAの薬価が高いこと、治療が長期間かかることが主な理由です。

自己負担を軽減するため、肝炎治療に対する医療費助成が受けられます。

詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。

※高齢者医療制度や高額療養費精度も併用できます。

治療費の目安

現在主流の経口抗ウイルス薬による治療では、12週間から24週間程度の投薬期間が必要で、総費用はおよそ300万円から600万円程度と高額になります。

治療期間概算総費用
12週間300万円
24週間600万円

治療費の支払いについて

事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。

詳しくは担当医や医療機関で直接ご確認ください。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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