日本の医療レーザー脱毛(永久脱毛)で使用される機械は50種類以上あり、現在も進化している途中です。
クリニックによって扱う機械は違い、それぞれに向き・不向きがあって特徴もさまざま。そのため、「どの機械が一番効果が高い」とはなかなか言えない状況にあります。
ただ、それぞれの機械について知ると、ご自身の毛質や肌質、体質(痛みの感じやすさなど)に合った脱毛機器を見つけることができます。
当ページでは、医療脱毛の機械の種類や効果、特徴を解説。選び方やどれがいいかなど、違いを比較しました。
ご自身に合った機械の種類を選ぶ際の参考にしてください。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
脱毛レーザーの種類
医療レーザー脱毛機器の種類は、光源・波長によって大きく3つに分けられます。
脱毛レーザーの3つの種類
レーザーの種類 | 光源 | 波長 |
---|---|---|
アレキサンドライトレーザー | アレキサンドライト(宝石) | 755nm |
ヤグレーザー | イットリウム・アルミニウム・ガーネットの結晶 | 1064nm |
ダイオードレーザー | 半導体を利用して人工的につくられたレーザー | 805~940nm(機器による) |
アレキサンドライトレーザー
アレキサンドライトレーザーは日本人の肌質と相性がよく、世界的にも最もポピュラーなレーザー。主にショット式脱毛機器(後に説明します)に採用されています。
毛根を効率的に加熱、発毛組織を機能的に破壊するため、効果を実感しやすい特徴があります。ただ、色黒な肌や日焼けをした肌ではヤケドのリスクが高い弱点も。
ほとんどのアレキサンドライトレーザーでは、肌への負担やヤケドのリスクを軽減、痛みを緩和するため冷却システムを採用しています。
メラニン色素によく反応するため、VIOやワキといった、濃い毛や太い毛に効果的なのがアレキサンドライトレーザーです。
ヤグレーザー
ヤグレーザーは波長が長いため、根深い毛や硬毛化(脱毛の施術によって濃くて長い毛が生える副作用)に効果的です。
さらに、メラニンへの反応が弱く、色黒肌や日焼け肌でも奥深くまでエネルギーを届けられる特徴があります。
痛みを感じやすいため、脱毛開始からメインで使うのではなく、なかなか抜けない毛に対してスポット的に使うクリニックが多い傾向です。
ダイオードレーザー
特徴や効果がアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの中間に位置するレーザーで、ある程度の日焼け肌や色黒肌にも照射が可能です。
また、照射方式によっては産毛にも反応しやすく、剛毛にも対応できるオールマイティーな機械となっています。
他のレーザーよりも痛みを感じにくいメリットがあります。
ショット式(熱破壊式)と蓄熱式の違い
上記で紹介した波長の違いのほかに、脱毛機には照射方式が2種類あります。
脱毛レーザーの2つの照射方式
ショット式(熱破壊式) | 強い光を単発(1ショット)照射 |
蓄熱式 | 弱い光を連続して複数回照射 |
以前から使用されていて施術実績やデータが豊富なショット式(熱破壊式)では、痛みを感じやすいデメリットがありました。
そこで登場した新しい照射方式が「蓄熱式脱毛」で、1発で大きなパワーを肌に当てるショット式に対して、蓄熱式の機械は弱いパワーで同部位に重ねて照射することで、痛みを軽減させています。
ショット式は「バチッ」とした照射感ですが、蓄熱式はジワジワと温められるような照射感で、痛さよりも熱さを感じやすいのが特徴です。
蓄熱式はショット式に比べるとまだデータが少なく、効果の実感が施術者の技術力に左右されやすい機械ですが、正しく照射をすれば最終的な脱毛効果はどちらも変わりはありません。
医療脱毛で使われる機械の種類(機種名)と特徴
医療脱毛(永久脱毛)で使われる、機械の種類と特徴を紹介します。
薬事承認って何?
医薬品や医療機器などの有効性や安全性を厚生労働省が審査、製造販売を厚生労働大臣が承認すること。
現在クリニックで使用されている医療レーザー脱毛機器は、薬事承認を得ているものと、そうでないものがあります。
FDAの認可って何?
FDA(アメリカ食品医薬品局)は、日本における厚生労働省のような役割の機関です。
FDAの認可を受けた医療レーザー脱毛機器は、安全性や有効性が認められたものということになります。
ライトシェア・デュエット
照射方法 | ショット式(熱破壊式)・吸引式 |
薬事承認 | ◯ |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | ダイオードレーザー(805nm) |
ジェルの使用 | 使用するハンドピースにより異なる |
ルミナス社が開発したライトシェア・デュエットは、2つのハンドピースがあることから「デュエット」の名が付きました。
世界で圧倒的なシェアを誇り、小さいハンドピースは顔などの凹凸がある細かな部位にも照射が可能。ジェルを塗って冷却チップで冷やしながら照射するため、痛みを軽減できます。
一方、大きなハンドピースは吸引式となっており、ジェル不使用で皮膚を引き伸ばしながら照射する方式です。
レーザーが皮膚に含まれるメラニンに吸収されるのを防ぎ、効率的に毛にエネルギーを加えるため、痛み&肌ダメージを抑えることができます。
日焼けやアトピー肌の方、VIOなどの色素沈着した肌にも照射が可能です。
メディオスターNeXT PRO
照射方法 | 蓄熱式 |
薬事承認 | ◯ |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | ダイオードレーザー(808・940nm) |
ジェルの使用 | あり |
エースクレピオン社の「メディオスターシリーズ」第五世代となる「メディオスターNeXT PRO」は、ダイオードレーザーを使用した蓄熱式脱毛機器です。
2波長をブレンドして同時照射するため幅広い毛に対応でき、脱毛が難しいとされるうぶ毛にも反応しやすいとされています。
冷却ジェルを使用して肌の上を滑らせるように照射。10〜27℃のペルチェ冷却方式で痛みも軽減できます。
メディオスターNeXT PROは導入しているクリニックの多い機械の一つです。
多少の日焼け肌・アトピー肌・敏感肌など、ほぼすべてのスキンタイプに照射可能です。
メディオスターモノリス
照射方法 | 蓄熱式 |
薬事承認 | ◯ |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | ダイオードレーザー(808・940nm) |
ジェルの使用 | あり |
メディオスターの第六世代であるメディオスターモノリス。導入するクリニックが徐々に増えてきています。
蓄熱式の脱毛機器ですが、ショット式にも切り替え可能な機械です。
基本的な特徴には変化がありませんが、メディオスターNeXT PROなどの従来機器にくらべて照射スピードが速くなりました。
操作が簡単になっているため、施術者の技術力に効果が左右される蓄熱式でもムラのない照射が可能です。
ジェントルヤグ・ジェントルヤグ プロ
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | ヤグレーザー(1064nm) |
ジェルの使用 | なし |
キャンデラ社「ジェントルシリーズ」のうち、ヤグレーザーを使用した機械。色黒肌や日焼け肌にも対応でき、根深い毛を得意としています。
比較的痛みを感じやすいものの、ハンドピースから噴射される-26℃の冷却ガスにより痛みを軽減。直径1.5~18mmと照射サイズが豊富なため、眉毛や口周りなどの細かな部分にも照射できます。
後継機「ジェントルヤグプロ」は、ジェントルヤグの基本的な機能はそのままに、スポットサイズが大きく施術スピードが速くなった機械です。
ジェルが必要ないため、施術時のジェル使用によるひんやりとした寒さが苦手な方にも向いています。
ジェントルレーズ
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) |
ジェルの使用 | なし |
ジェントルレーズはアレキサンドライトレーザーを使用した脱毛機器。太い毛に反応しやすくジェルによる不快感がない特徴があります。
1秒で1ショットの照射が可能で、日本人の肌質に合った機種です。
日焼け肌や産毛は苦手なデメリットがありますが、レーザー照射と同時に冷却ガスで肌を保護できます。
ジェントルレーズプロ
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ◯ |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) |
ジェルの使用 | なし |
先に紹介した「ジェントルレーズ」の上位機種であるジェントルレーズプロ。パルス幅(照射時間)を変更することで、より幅広い毛質や肌質に対応できるようになりました。
さらに照射口が最大24mmになり、1秒に2ショット打てるようになったため、施術時間が速いのも特徴です(従来機種より照射範囲1.5倍・照射速度2倍)。
「バシッ」といった冷却ガス噴射時の感覚はありますが、ジェルによる寒さや不快感がないのがメリットです。
ジェントルマックス
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) ヤグレーザー(1064nm) |
ジェルの使用 | なし |
上記で紹介した「ジェントルヤグ」と「ジェントルレーズ」のどちらも取り入れた特徴を持つ脱毛機器です。
ジェントルマックスは、アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの切り替えが可能なため、より幅広い毛質で効果が期待できます。
日焼け肌や色黒肌でも照射が可能で、太く根深い毛にも対応。男性のヒゲや硬毛化してしまった毛にも効果を発揮します。
ジェントルマックスプロ
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ◯ |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) ヤグレーザー(1064nm) |
ジェルの使用 | なし |
痛みはやや感じやすいですが、ジェルのふき取り作業が不要で照射口が最大24mmあるため、スピーディーな照射ができます。
アレキサンドライトレーザーでは剛毛に、ヤグレーザーでは根が深い毛に効果的です。
メディオスターNeXT PROやジェントルレーズプロとともに、導入しているクリニックが多数あります。
ソプラノアイス・プラチナム
照射方法 | 蓄熱式 |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) ダイオードレーザー(810nm) ヤグレーザー(1300nm) |
ジェルの使用 | あり |
アルマレーザーズ社「ソプラノシリーズ」の第三世代の機器。ジェルを使用し、肌の上を滑らせるように照射します。
アレキサンドライトレーザー・ヤグレーザー・ダイオードレーザーの3波長をブレンドして照射するため、さまざまな毛質に対応できる機種です。
どちらかというと太い毛向きの機種ではありますが、うぶ毛にも反応しやすくなっています。
蓄熱式のため照射する人の技術力が重要になってきますが、ショット式にくらべて痛みを感じにくいメリットがあります。
ソプラノチタニウム
照射方法 | 蓄熱式 |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) ダイオードレーザー(810nm) ヤグレーザー(1300nm) |
ジェルの使用 | あり |
ソプラノアイス・プラチナムの上位機種である「ソプラノチタニウム」は、基本的には蓄熱式ですが、ショット式への切り替えも可能。
ソプラノアイス・プラチナムのスペックをそのままに、レーザー照射面積を巨大化して照射がよりスピーディーになりました。
ダイオードレーザーでうぶ毛にも効果的なアプローチができるほか、アレキサンドライトレーザーやヤグレーザーで濃く根深い毛にも適切な波長で照射できます。
ショット式にくらべて効果を実感するまで(毛が抜け落ちるまで)には時間がかかりますが(ショット式1~2週間に対し、蓄熱式3~4週間)痛みが少ないのがメリットです。
照射時間が短くて済むため、取り扱うクリニックが増え始めている機種です。
スプレンダーX
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ◯ |
FDA認可 | ― |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) ヤグレーザー(1064nm) |
ジェルの使用 | なし |
アレキサンドライトレーザー・ヤグレーザーの2波長が同時に照射できる脱毛レーザー機器で、幅広い毛質に対応しています。
スクエア型の照射口で面積も広いため、いちどに広範囲の照射が可能。均一にレーザー照射をするので、ムラなく照射できます。
ハンドピースが交換できず小回りが利かないため顔脱毛など細かい部位には不向きですが、ジェルによる不快感がなく施術時間が短めの機種です。
さらに、冷風と接による2種類の冷却システムを導入しているので、痛みを最小限に抑えられます。
施術スピードが速くさまざまな毛質に対応しているため、全身脱毛に向いている機種です。
ラシャ
照射方法 | ショット式(熱破壊式)・蓄熱式 |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ― |
光源・波長 | ダイオードレーザー(808nm) |
ジェルの使用 | あり |
美容大国・韓国の「ブルーコア社」が開発した医療レーザー脱毛機器「ラシャ」。
ショット式と蓄熱式の切り替えができる機種で、冷却ジェルを使用し、マイナス5℃まで冷やせる強力な冷却プログラムで痛みやヤケドのリスクを抑えながら脱毛します。
うぶ毛から剛毛まで発毛状態に合わせて照射方法が選べ、照射口が広いため施術スピードの速さも魅力です。
デピライト
照射方法 | 蓄熱式 |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | ダイオードレーザー(808nm) |
ジェルの使用 | あり |
蓄熱式の機種で、ダイオードレーザーを使用し日焼けした肌にも照射可能です。
ジェルを塗り肌の上を滑らせるように照射するため短い時間で照射ができ、ショット式のようにバチッとした痛みを感じることがなく、じんわりと熱い照射感が特徴です。
クリスタルプロ
照射方法 | ショット式(熱破壊式)・蓄熱式 |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ― |
光源・波長 | ダイオードレーザー |
ジェルの使用 | ローションを塗ってから施術 |
エミナルクリニックが独自に開発した医療脱毛レーザー機器「クリスタルプロ」は、ショットと蓄熱の切り替え式で、毛質・肌質ともにさまざまなタイプに対応できます。
硬毛化のリスクが低く照射スピードが速いメリットを持ち、強力な冷却システムで肌への負担を軽減しつつ、痛みも軽減できます。
エリート+(プラス)
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | アレキサンドライトレーザー(755nm) ヤグレーザー(1064nm) |
ジェルの使用 | なし |
サイノシュアー社の「エリートプラス」はアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの2波長を切り替えできるので、さまざまな肌質や毛質にアプローチできます。
メラニンチェッカーを搭載しスキンタイプ(肌の色)を認識、個々に合わせて脱毛ができ、敏感肌や色黒肌でも照射可能な点が魅力です。
ジェルが不要なので、施術時のひんやりとした寒さが苦手な方にも向いています。
ベクタス
照射方法 | ショット式(熱破壊式) |
薬事承認 | ― |
FDA認可 | ◯ |
光源・波長 | ダイオードレーザー(810nm) |
ジェルの使用 | なし |
上記の「エリート」と同じサイノシュアー社の医療脱毛機器であるベクタスは、ダイオードレーザーを使用しています。
従来のダイオードレーザー機器とは異なり、レーザーの出力が調整可能。メラニンチェッカー搭載で皮膚のメラニン量を客観的に把握して、マシンが適切なレベルを選択します。
照射口が23×32mmとかなり広いので広範囲に照射でき、スピーディーに照射が可能。さらに照射口12×12mmのハンドピースも搭載しているので、細かな部分にも対応できます。
自分にはどれが向いている?機械の選び方
ここまで多くの機器を紹介してきましたが「それぞれの特徴が分かっても、どれが自分に向いている機械か分からない」といった方のほうが多いのではないでしょうか。
アレキサンドライトレーザー・ダイオードレーザーが第一選択肢
2005年に行われた研究では、被験者20人の女性へ、3種類(アレキサンドライトレーザー、ダイオードレーザー、Nd:YAGレーザー)のレーザー脱毛機器でワキへの脱毛を行い、効果や満足度を評価しています。
- 755nmアレキサンドライトレーザーと810nmダイオードレーザーが最も高い脱毛効果(約59%)を示し、両者に統計的な有意差はありませんでした。
- 1064nmのNd:YAGレーザーと3種類のレーザーを順番に使用するローテーション療法は、脱毛効果がやや低かったです(それぞれ約32%と40%)。
- 赤色や明るい色の毛髪を持つ被験者は、いずれのレーザーを使用しても脱毛効果が5〜15%低下しました。
- 被験者は、アレキサンドライトレーザーとダイオードレーザーの忍容性が同程度で高く、Nd:YAGレーザーが最も不快感が強いと評価しました。
- 満足度は、ダイオードレーザー、アレキサンドライトレーザー、ローテーション療法、Nd:YAGレーザーの順に高かったです。
出典:RAO, Jaggi; GOLDMAN, Mitchel P. Prospective, comparative evaluation of three laser systems used individually and in combination for axillary hair removal. Dermatologic Surgery, 2005, 31.12: 1671-1677.
以上より、フィッツパトリック分類のIII型の肌(日本人に多い肌色)を持ち、黒い毛髪の場合、アレキサンドライトレーザーまたはダイオードレーザーによる脱毛が最も効果的で、被験者の満足度も高いことが示唆されました。
一方、赤色や明るい色の毛髪の場合は、脱毛効果が若干低下する可能性があります。
また、1998年から2003年の間に発表された臨床試験を対象に、レーザーの種類ごとに結果を統合した研究では、最終治療の6ヶ月後の脱毛率について記載があります。
レーザーの種類 | 6ヶ月後の脱毛率 |
---|---|
ダイオードレーザー | 57.5% |
Nd:YAGレーザー | 42.3% |
アレキサンドライトレーザー | 54.7% |
ルビーレーザー | 52.8% |
この研究では、分散分析法(Scheffeの方法)とスチューデントのt検定による二重比較の結果、ダイオードレーザーが最も効果的で、Nd:YAGレーザーの脱毛効果が最も低いことが明らかになりました。
ダイオードレーザーとアレキサンドライトレーザーは脱毛に適していますが、肌の色が濃い場合は高いフルエンス(エネルギー密度)が必要となり、合併症のリスクが高まります。
そのため、肌の色が明るい場合はダイオードレーザーが、肌の色が濃い場合はアレキサンドライトレーザーが適していると考えられます。
熱破壊式(ショット式)と蓄熱式脱毛の比較
2011年に行われた研究では、ショット式脱毛(高フルエンス・単一パス)のダイオードレーザー(LightSheer)と、蓄熱式脱毛(低フルエンス・多重パス)のダイオードレーザー(Soprano XL)の脱毛効果が18ヶ月間にわたって比較されました。
結果として、両者の脱毛効果に統計的な有意差はなく、蓄熱式脱毛(低フルエンス・多重パス)の方式でも長期的な脱毛効果が得られることが示されました。
出典:BRAUN, Martin. Comparison of high-fluence, single-pass diode laser to low-fluence, multiple-pass diode laser for laser hair reduction with 18 months of follow up. Journal of Drugs in Dermatology: JDD, 2011, 10.1: 62-65.
また、2014年に行われた研究でも、低フルエンス・多重パスと高フルエンス・単一パスの810nmダイオードレーザーの脱毛効果を比較しています。
3ヶ月後の追跡調査で、両者の脱毛率に有意差はなく、低フルエンス・多重パス法が高フルエンス・単一パス法と同等の効果を持つことが確認されました。
出典:KOO, Bonnie, et al. A comparison of two 810 diode lasers for hair removal: low fluence, multiple pass versus a high fluence, single pass technique. Lasers in Surgery and Medicine, 2014, 46.4: 270-274.
これらの研究から、蓄熱式脱毛(低フルエンス・多重パス)とショット式脱毛(高フルエンス・単一パス)は、長期的な脱毛効果において同等の結果が得られることが示唆されています。
ただし、蓄熱式脱毛では痛みや副作用のリスクが低いという利点があります。
自分に合ったレーザー機器を選ぶためのポイント
- 肌の色が白い場合:アレキサンドライトレーザーかダイオードレーザーを選ぶ
- 肌の色が濃い場合:アレキサンドライトレーザーを選ぶ
- 毛の色が明るい場合:脱毛効果が若干低下する可能性があることを理解する
- Nd:YAGレーザーは、脱毛効果や満足度が比較的低く、他の選択肢がない場合に検討する
- 蓄熱式脱毛(低フルエンス・多重パス)とショット式脱毛(高フルエンス・単一パス)に効果の優位な差はみられない。
- 痛みが苦手な場合:蓄熱式脱毛を選ぶと良い
特徴別レーザー脱毛機まとめ
最後に、特徴別にレーザー脱毛機をまとめました。
薬事承認を得ている機器
未承認の機器は効果がないというわけではありませんが、日本人に効果があり安全性が認められている「薬事承認を得た機器」は、安全な機器を選ぶ一つの目安でもあります。
痛みを感じにくい機器
脱毛に多少の痛みは付き物ではありますが、痛みを感じにくい機器もあります。痛みが心配な方や痛みに弱い方は、蓄熱式の機器を扱うクリニックを選んでみましょう。
色黒肌でも照射できる機器
蓄熱式脱毛機器はじわじわとエネルギーを照射するので、ある程度の色黒肌であれば安全に照射できます。
さらに、色黒肌や日焼けした肌でも深くまでエネルギーを届けられるヤグレーザーの機器であれば、太い毛にも有効的なアプローチが可能です。
VIO脱毛向きの機器
VIOは毛が太く、比較的密集して生えている部位です。
太く根深い毛へはヤグレーザーが向いていますが、VIOは毛が寝て生えている(皮毛角が小さい)ので、ヤグレーザーほどの波長がなくても充分に効果が期待できます。
さらに、色素沈着しやすい部位なので、メラニンが多い肌でも照射可能な蓄熱式が向いています。
痛みを感じやすい部位ですので、痛みが少ない蓄熱式やダイオードレーザーの機器がおすすめです。
うぶ毛にも反応しやすい機器
うぶ毛は脱毛が難しいとされている毛ですが、メラニンが少ない毛でも効果を得やすい蓄熱式であれば反応しやすいとされています。
さらに、細い毛にも効果のあるダイオードレーザーの機器であれば、より効果を実感しやすいでしょう。
施術時間が短い機器
とくに全身脱毛をする場合、どうしても施術時間が長くなりがちです。
しかし、塗布やふき取りに時間がかかるジェルの使用がない機器であれば、施術時間が短い傾向があります。
さらに照射口が大きい機種であれば、いちどに照射できる範囲が広いため、より速く施術を終わらせられます。
医療レーザー機器比較表
上記で紹介したレーザー機器の比較表です。
機器名 | ライトシェアデュエット | メディオスターNeXT PRO | メディオスターモノリス | ジェントルヤグ プロ | ジェントルレーズ | ジェントルレーズプロ | ジェントルマックス | ジェントルマックスプロ | ソプラノアイスプラチナム | ソプラノチタニウム | スプレンダーX | ラシャ | デピライト | クリスタルプロ | エリートプラス | ベクタス |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
照射方式 | 熱破壊式 | 蓄熱式 | 蓄熱式 ※ショット式にも切替可能 | 熱破壊式 | 熱破壊式 | 熱破壊式 | 熱破壊式 | 熱破壊式 | 蓄熱式 | 蓄熱式 | 熱破壊式 | 熱破壊式 蓄熱式 | 蓄熱式 | 熱破壊式 蓄熱式 | 熱破壊式 | 熱破壊式 |
薬事承認 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ||||||
FDA認可 | ― | ― | ― | |||||||||||||
光源 | ダイオード | ダイオード | ダイオード | ヤグ | アレキサンドライト | アレキサンドライト | アレキサンドライト ヤグ | アレキサンドライト ヤグ | アレキサンドライト ダイオード ヤグ | アレキサンドライト ダイオード ヤグ | アレキサンドライト ヤグ | ダイオード | ダイオード | ダイオード | アレキサンドライト ヤグ | ダイオード |
ジェルの使用 | △ | ◯ | ◯ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ | ✕ | ◯ | ◯ | ローション使用 | ✕ | ✕ |
医療脱毛で扱われるレーザー機器は、この他にも多くの種類があります。通院を検討しているクリニックがどの機械を扱っているか、光源や照射方式を比較してみましょう。
参考文献
IBRAHIMI, Omar A., et al. Laser hair removal. Dermatologic therapy, 2011, 24.1: 94-107.
HAEDERSDAL, M.; WULF, H. C. Evidence‐based review of hair removal using lasers and light sources. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2006, 20.1: 9-20.
RAO, Jaggi; GOLDMAN, Mitchel P. Prospective, comparative evaluation of three laser systems used individually and in combination for axillary hair removal. Dermatologic Surgery, 2005, 31.12: 1671-1677.
GOLDBERG, David J. Laser hair removal. Dermatologic clinics, 2002, 20.3: 561-567.
SADIGHHA, Afshin; MOHAGHEGH ZAHED, Golnaz. Meta-analysis of hair removal laser trials. Lasers in medical science, 2009, 24: 21-25.