- 永久脱毛をしたら1本もムダ毛がない状態が一生続く?
- 永久脱毛って、本当は永久じゃないって本当?
- どのくらいの期間や値段がかかる?
クリニックでの脱毛を検討する際に、上記のような疑問が浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
このページでは、永久脱毛の定義と仕組み、おおよその値段・必要な回数やデメリット、永久脱毛で後悔する方の具体例を掲載しています。
また、毛が生えてくる可能性や自宅での永久脱毛が可能か、など永久脱毛に関するよくある質問にもお答えしました。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
永久脱毛の定義
実は、永久脱毛は「毛が完全に、永久的に生えないこと」を保証するものではありません。
「永久脱毛」の言葉の意味から、施術が完了したら「ムダ毛が一生はえてこない」といったイメージを持たれる方もたくさんいらっしゃいます。
ですが、日本の法令では「永久脱毛」の定義が明確に定められていません。
それでは何をもって「永久脱毛」と言っているのかというと、アメリカ電気脱毛協会(AEA)やアメリカ食品医薬品局(FDA)の定義に照らし合わせて「永久脱毛かどうか」を判断しています。
アメリカ電気脱毛協会(AEA)公表の定義
「最終脱毛をしてから1カ月後の毛の再生率が20%以下であれば永久脱毛と認める」
アメリカ食品医薬品局(FDA)公表の定義
「一定の脱毛施術を行った後に再発毛する本数が長期間において減少し、その状態が長期間に渡って維持されること」(FDAでは、ニードル脱毛を永久脱毛の施術方法として挙げています)
どちらの定義を見ても「施術後は、毛が一本も生えない・永久的に生えない」ではないのが分かります。
脱毛に使用するマシンや脱毛に関する研究は、日々進化を続けています。今後、今よりもさらに効果が期待できる永久脱毛が受けられるようになる日がくるかもしれません。
しかし、現時点では「永久的に毛が生えない」永久脱毛は、不可能であると考えられています。
つまり「8~9割の毛を減らせるのが永久脱毛」といった認識が、最も適しているといえます。
永久脱毛は医療機関でしかできない
永久脱毛は規定によって、医療機関(クリニック)でなければ施術ができません。
厚生労働省は「用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為は、医師免許を有しない者が業として行うのであれば、医師法第17条に違反する」としています。1)
また、日本臨床医療レーザー協会では「医療機関による電気針脱毛(ニードル脱毛)と医療レーザー脱毛こそが永久脱毛」としています。2)
「では、なぜ美容サロン(エステサロン)で脱毛ができるの?違法行為では?」といった疑問も湧いてきますが、美容サロンでは、医療機関よりも出力の弱いレーザーを使用しています。
発毛細胞を一時的に弱らせることはできても、破壊することはできません。そのためエステサロンでの脱毛は「永久脱毛」とは呼べないのです。
クリニックとエステの見分け方は?
◯◯クリニックのように、クリニックと名前にあるところは医療機関です。ほかにも、◯◯美容皮膚科、◯◯美容外科といった診療科目が標榜されている場所も医療機関です。
永久脱毛を目的とする脱毛施術ができるクリニックには必ず医師が在籍し、脱毛照射は医師または看護師といった有資格者が行います。
永久脱毛を目的とした脱毛の仕組み
永久脱毛では、毛を生やす組織である「毛乳頭」「毛母」「バルジ領域」の3つを医療レーザーで破壊し、毛を再生できなくします。
永久脱毛(毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域の破壊)を目的として、クリニックで行われている脱毛方法は以下の2つです。
- 医療レーザー脱毛
- 電気針脱毛(ニードル脱毛)
それぞれの脱毛の仕組みについて見ていきましょう。
医療レーザー脱毛
永久脱毛のメジャーな方法である医療レーザーでは、黒い色(メラニン色素)に反応する波長が利用されています。
レーザーが黒い色に反応して発熱し、毛を生やすのに重要な組織を熱破壊します。いちど破壊された組織は再生しないので、新たに毛が生えてこない仕組みです。
脱毛に使用する医療レーザーは、黒い色以外には反応しません。そのため、皮膚やほかの細胞にはダメージを与えずに脱毛ができます。
ただ、黒い色に反応させるために、メラニン色素が少ない白髪や産毛には向かず、日焼けした肌や色素沈着の強い肌、ほくろはやけどのリスクが高く、基本的には照射できません(大きいほくろはシール等でカバーして照射します)。
一方、うぶ毛にも反応しやすく濃い色の肌でも照射できる「蓄熱式脱毛」を行うクリニックも増えてきています。
電気針脱毛(ニードル脱毛)
以前は主流であった電気針脱毛(ニードル脱毛)は、一つひとつの毛穴に針を差し込み、微弱な電流を流すことで発毛細胞を破壊します。
レーザーとは異なり毛根に直接アプローチするため、白髪や産毛でも効果が期待できます。
一つひとつの毛穴に針を差し込むため、高い技術力が必要とされ根気がいる作業となり、施術には時間がかかります。
白髪などの医療レーザーでは難しい毛や眉周りなどの細かなデザインが必要な部位に使用される方法です。
現在電気針脱毛を行うクリニックは少なく、まずは医療レーザー脱毛を複数回行ってから、抜けきらなかった毛に針脱毛を検討する方が効率的です。
永久脱毛のデメリット・後悔する可能性は?
永久脱毛を検討している方からは「デメリットはある?」「高い料金を払って、後悔してしまったら嫌だ」といった声も聞かれます。
永久脱毛のデメリットや、後悔している方の具体例を下記にまとめました。
永久脱毛のデメリット
永久脱毛のデメリットには、以下が挙げられます。
- 永久脱毛後は元の状態に戻せない
- 毛が永久に生えないわけではない
- 施術時に痛みがある
- 何度も通院する必要がある
- 副反応や合併症が起こる可能性がある
- 費用がかかる
特に医療レーザーによる永久脱毛には、一時的なむくみや赤み、表皮焼けなどの副反応が起こる可能性があります。また、ごく稀ではありますが、色素沈着や硬毛化(今までなかった太くて長い毛が生えてくる)も合併症の一種です。
エステサロンでの脱毛は、機械のパワーが弱いためこうしたトラブルの発生は通常考えにくいのですが、万が一を考えたとき、クリニックでの脱毛がやはり一番安心できると言えます。
副反応や合併症が起きてしまった場合でも治療が可能なので、脱毛をするならば医療機関での契約をまず検討してください。
部位別のデメリット(具体例)
もみあげ・ひげ・顔(眉毛)・VIO(陰毛) | デザインを工夫できる場所ではありますが、永久脱毛を完了してしまうと立つもう前の状態には戻せません。 |
鼻毛 | 鼻毛には最近やウイルス、ほこりが身体へ侵入するのを防ぎ、鼻水を抑制するはたらきがあります。 鼻毛を脱毛すると、ウイルスやほこりの侵入を防ぐことができない、鼻水が垂れやすくなる、くしゃみが出やすくなるデメリットがあります。 |
脇 | 脇毛には脇の汗を吸収するはたらきがあり、脇毛の脱毛をすることで汗が増えたと感じる方がいます。 ※脇毛がなくなっても、脇の汗の量が変化するわけではありません。 |
すね毛・腕 | 医療レーザーはメラニン色素に反応するため、日焼けした肌に照射するとやけどを起こす危険性があります。 そのため、日焼けをしているとレーザーを照射できません(日常的に日焼けを避ける、紫外線対策をする必要があります)。 |
永久脱毛で後悔する方の具体例
VIO脱毛
アンダーヘア・VIOを脱毛した人の中には、アンダーヘアが全くないことを温泉などで周りの人にビックリされて後悔した方や、パートナーの方の好みと合わずに後悔した方がいらっしゃいます。
全て脱毛してしまうのか、逆三角形または長形にするのか、残す面積はどうするのか、など先のことまでよく考えてから脱毛を行いましょう。
ヒゲの脱毛
男性の場合、流行や好みが変わり「ヒゲを伸ばすスタイルにしたい」と思っても、永久脱毛をすると前のように生えてこないため、後悔する可能性があります。
さらに、ヒゲを部分的に脱毛できても、全体的に薄くする(1本1本の毛を細くする)のは不可能です。
最終的には完全になくしてしまうつもりで永久脱毛をスタートするか、完全になくなっても良い部分のみを脱毛するのがおすすめです。
永久脱毛にかかる期間(回数)とおおよその値段
医療レーザーを用いた永久脱毛にかかる期間(回数)とおおよその値段をまとめました。
永久脱毛にかかる回数・期間
部位 | 回数 | 期間 |
---|---|---|
全身脱毛(顔・VIOを除く) | 5~8回 | 1年~1年半 |
VIO脱毛(形をととのえる) | 5~8回 | 1年~1年半 |
VIO脱毛(ハイジニーナ) | 10回以上 | 1年半~2年 |
ワキ脱毛 | 5~8回 | 1年~1年半 |
顔脱毛 | 8~10回程度 | 1年程度 |
ヒゲ脱毛 | 10~15回 | 2年程度 |
上記の永久脱毛(医療レーザー)にかかる期間や回数はあくまでも目安となります。
毛の生え方の個人差や目指す仕上がりに違いがあるため、かかる期間・回数も異なります。
永久脱毛のおおよその値段
医療レーザー脱毛の相場
部位 | 値段相場(5回) |
---|---|
全身脱毛(顔・VIOを除く) | 17~23万円 |
全身+VIO脱毛 | 25~30万円 |
全身+顔脱毛 | 25~30万円 |
全身+VIO+顔脱毛 | 28~38万円 |
VIO脱毛 | 7~10万円 |
ワキ脱毛 | 1万5000~2万円 |
ヒゲ脱毛 | 10~15万円 |
学生の場合、学生証の提示で割引が受けられたり、お友達や親子で契約する「ペア割」、他クリニックやエステサロンからの「乗り換え割」といった割引制度のあるクリニックも多くあります。
割引額は5~20%程度と大幅に安くなるケースもあるため、契約するクリニックを選ぶ際は、基本料金以外にも割引プランについても比較すると安く利用できます。
※ちなみに医療脱毛は自由診療となり、医療保険は適用されません。
永久脱毛に関するよくある質問
さいごに、永久脱毛に関するよくある質問をまとめました。
いつか毛はまた生えてくるのでしょうか。
永久脱毛後に毛の生え方が元の状態に戻ることはありません。
いちど破壊された発毛細胞は再生しませんので、理論的にはそこから毛は生えてこず、もし生えてきたとしてもうぶ毛程度と考えて良いでしょう。
すべての発毛細胞が破壊されたかを確認するすべはありませんが、一つ残らずすべての発毛細胞を破壊すれば、再び毛が生えてくるのは原理的に難しいです。
ただし、見かけ上は薄くなった毛が、多少濃くなるケースは考えられます(毛髪細胞が完全に破壊しきれていなかったため)。
これには、ホルモンバランスの変化が影響しており、たとえば妊娠・出産や小児が成人するなどのタイミングで、残っている発毛細胞から太くなった毛が生えてくるケースが考えられます。
また、現在永久脱毛の持続期間は10年以上ということまでしか分かっていません。
永久脱毛は痛いですか。
使用する機械や部位などにもよりますが、永久脱毛には痛みが伴います。
医療レーザー脱毛の場合、熱による痛み(針で刺されたような痛みやゴムでパチンと弾かれるような痛み)があるケースも。なかには「あまり痛くなかった」という方もいらっしゃいますが、我慢できる程度の痛みを感じる方が多い傾向があります。
各クリニックでは、麻酔や冷却剤などを用意しています。
痛みが心配な方は、事前に相談すると麻酔の使用などで対応できるので、遠慮せずにクリニックに伝えましょう。
自宅で永久脱毛は可能ですか。
自宅での永久脱毛はできません(永久脱毛ができるのは、医療機関のみです)。
クリームやブラジリアンワックスなどでは、発毛細胞を破壊できないため永久脱毛はできません。除毛はできても、1週間程度するとまた元のように毛が生えてきます。
さらに、機械を使用した自宅での脱毛も、永久脱毛は不可能です。
家庭用脱毛器(光脱毛)は、光の波長がクリニックで使用するものにくらべて弱いのが特徴です。
発毛組織を弱らせて一時的な効果は期待できますが、クリニックと同じような効果は得られません。
中学生も脱毛に通えますか。
中学生でも医学的には脱毛に通えますが、クリニックによって年齢制限が設けられている場合が多くなります。
年齢は「16歳以降」を推奨しているクリニックが多く、施術には親権者の同伴もしくは同意が必要です。
10代前半以下は毛が充分に成長していないので、レーザーに反応しにくい傾向があり、さらに毛周期も安定していないため、脱毛完了後にまた発毛してくる可能性も充分に考えられます。
最近はキッズ脱毛も流行っているようですが、中学生時期の脱毛はデメリットもありますので、クリニックに確認し充分に検討してからおこなってください。
参考文献
1) 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて/厚生労働省
2) 永久脱毛(医療レーザー脱毛)/日本臨床医療レーザー協会
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