ブローディ骨膿瘍(Brodie’s abscess)とは、主に長管骨の骨幹端部に発生する亜急性骨髄炎の一種で、骨の内部に膿瘍が形成される疾患です。
急性骨髄炎とは異なり、症状が軽微で進行が緩やかなため、診断が遅れる場合があります。
小児から若年成人に多く見られ、治療により良好な予後が期待できる疾患ですが、発熱などの全身症状はほとんど見られないのが特徴です。
この記事の執筆者

臼井 大記(うすい だいき)
日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師
2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。
ブローディ骨膿瘍の病型
ブローディ骨膿瘍はX線画像所見にもとづき、亜急性骨髄炎として6つのタイプに分類されます(Gledhill分類、1982年Roberts改変)。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| Type IA | 長骨の骨端部(骨の端)に生じる透亮域(骨が溶けた空洞)で、周囲に硬化(骨が固く白くなる変化)がみられないタイプです。 |
| Type IB | 骨端部の透亮域の周囲に反応性の硬化骨が取り巻くタイプで、典型的なブローディ骨膿瘍の像に該当します。 |
| Type II | 骨端部の透亮域が骨の皮質(表層の固い部分)を破壊しているタイプで、X線像が骨肉腫などの悪性腫瘍に似ることがあります。 |
| Type III | 骨幹部(骨の中央部)の骨皮質に生じた透亮域で、骨膜反応(骨膜の反応性の新生骨形成)を伴うタイプです。 |
| Type IV | 骨端の骨内(関節に近い部分)に発生する透亮域で、良性骨腫瘍の軟骨芽細胞腫に似た像を呈するタイプです。 |
| Type V | 骨端の骨内(関節に近い部分)に発生する透亮域で、良性骨腫瘍の軟骨芽細胞腫に似た像を呈するタイプです。 |
| Type VI | 脊椎(背骨)に発生する骨透亮域で、結核性脊椎炎や好酸球性肉芽腫といった疾患に似た像となるタイプです。 |
画像上は骨腫瘍や他の炎症性疾患との鑑別が難しい場合もあり、必要に応じて詳しい検査を行います。
ブローディ骨膿瘍の症状
ブローディ骨膿瘍は、急性骨髄炎と比較して症状が軽微かつ非特異的であるため、診断が遅れるケースも珍しくありません。
症状の程度は病変の活動性、大きさ、部位によって異なり、無症状で偶然発見される場合もあります。
早期発見のためには、持続する局所症状に注意を払うことが重要です。
局所症状
最も一般的な症状は、病変部位の慢性的な疼痛です。痛みは通常、鈍痛として現れ、運動時に増強し、安静によって軽減する傾向があります。
夜間痛を訴える患者もいますが、悪性腫瘍のような激しい痛み(深部痛)とは性質が異なります。
局所の腫脹(はれ)や熱感を認める場合もありますが、急性炎症のような著明な所見は呈しません。
触診では、病変部位に一致した限局的な圧痛を認めます。関節に近い部位に発生した場合、関節可動域の軽度制限を伴うおそれがあり、特に小児では患肢をかばうような歩き方(跛行:はこう)として現れることがあります。
スポーツ活動中の違和感として現れるケースも多く、運動後の疲労や成長痛と誤解しやすいため注意が必要です。
全身症状
ブローディ骨膿瘍では、全身症状は一般に軽微で、微熱(37.5℃前後)を認めるケースはありますが、高熱を呈するのはまれです。
全身倦怠感や食欲不振を訴える場合もありますが、日常生活に大きな支障をきたすほどではありません。
| 症状 | 頻度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 局所痛 | 80~90% | 慢性的な鈍痛、運動時痛 |
| 腫脹 | 30~40% | 軽度、限局性 |
| 発熱 | 20~30% | 微熱程度(高熱はまれ) |
体重減少や顕著な全身症状を伴う場合は、ほかの疾患を考慮する必要があります。
特に悪性腫瘍との鑑別は重要であり、進行性の症状や急激な悪化が見られる場合は、速やかな追加検査が必要です。
慢性経過による症状の変化
本症は慢性の経過をたどるため、症状も経時的に変化します。初期には軽微な違和感程度であっても、数週間から数か月かけて徐々に症状が明確化します。
- 活動期: 症状が増悪し、局所の炎症所見(発赤や熱感など)が強くなります。
- 非活動期: 症状が軽減し、時に無症状となります。
ただし、病変が完全に消失していない限り、運動負荷などを契機に再燃を繰り返す可能性があります。
また、朝のこわばりや運動開始時の痛みが活動とともに軽減するといった、関節疾患に類似した日内変動を見せるのも特徴の一つです。
合併症による症状
治療が行われない場合、ブローディ骨膿瘍はさまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。
周囲軟部組織への炎症波及
膿瘍周囲の筋肉や組織へ炎症が広がり、痛みや腫れが局所から広範囲に拡大する場合があります。
病的骨折
発生頻度は低いものの、病変が巨大な場合や、皮質骨(骨の外側の硬い部分)の菲薄化(ひふくか)を伴う場合は注意が必要です。
骨の強度が低下しているため、軽微な外力でも骨折を生じる可能性があり、急激な痛みが生じます。
瘻孔(ろうこう)形成
慢性的な経過の中で、膿が体表へとつながる管(瘻孔)を形成する場合があります。皮膚に開口部ができ、そこから持続的あるいは断続的に膿が排出される(排膿)のが特徴です。
反応性関節炎
病変が関節に近いと、関節内に直接細菌がいなくても炎症に反応して関節液が貯留する場合があります。可動域制限を伴うため、緊急の処置を要する化膿性関節炎との厳密な鑑別が必要です。
成長障害(小児の場合)
小児において、病変が骨端線(成長線)に近い部位に存在する場合、特に注意が必要です。
炎症が成長線に波及すると、将来的な肢の短縮や変形といった成長障害を招くおそれがあります。
ブローディ骨膿瘍の原因
ブローディ骨膿瘍の本態は、細菌感染に起因する骨の局所的な化膿性炎症です。
しかし、なぜ急性骨髄炎へと進展せずに慢性的な膿瘍を形成するのかについては、細菌の毒性(病原性)と宿主(患者側)の免疫抵抗力の絶妙なバランスが関与していると考えられています。
起因菌
最も一般的な起因菌は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)で、全症例の約60〜70%を占めます。
この菌は皮膚の常在菌であり、小さな傷口や毛から体内に侵入する場合があります。
- 表皮ブドウ球菌: 10〜15%
- 連鎖球菌属: 5〜10%
- グラム陰性桿菌: 5%未満
- 嫌気性菌:まれ
- 真菌: 免疫不全者において稀に認められる
近年では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による症例も増加しており、治療が難航するケース(治療抵抗性)もあります。
なお、培養検査で菌が検出されない症例も20〜30%存在しますが、これは検査前の抗菌薬投与や、膿瘍内の細菌密度が低いことが原因と考えられています。
感染経路
主な感染経路は、血流に乗って細菌が運ばれる血行性感染です。
| 感染経路 | 推定頻度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 血行性 | 70~80% | 遠隔の感染巣(皮膚・喉など)から血流を介して到達 |
| 外傷性 | 15~20% | 開放骨折、手術、穿刺などによる直接的な侵入 |
| 隣接感染 | 5~10% | 周囲の軟部組織の炎症が骨へ波及 |
原発巣(感染の起点)としては、皮膚軟部組織感染、上気道感染、尿路感染などが挙げられますが、多くの症例で明確な原発巣を特定できないのが本症の特徴でもあります。
宿主要因(リスク因子)
発症には宿主側の条件も大きく関わります。
年齢・性別
5〜20歳の若年者に好発します。これは、成長期の骨幹端部(こつかんたんぶ)は血流が豊富である一方で、血流速度が遅く細菌が定着しやすいためです。
男女比は約2:1で男性に多い傾向があります。
基礎疾患
糖尿病、慢性腎不全、免疫抑制薬の使用、悪性腫瘍などがリスクを高めます。
その他
栄養不良や慢性的なストレスも免疫力低下を招き、発症に関与する可能性があります。
病態生理
ブローディ骨膿瘍が急性骨髄炎と異なる点は、炎症が広がらずに限局化(壁に囲まれること)している点です。
包囲網の形成
細菌の病原性が比較的低い、あるいは宿主の免疫反応が適切に働いた場合、体は感染部位を封じ込めようとします。
その結果、膿瘍の周囲に反応性の骨硬化が起こり、硬い壁が作られます。
低酸素環境とバイオフィルム
膿瘍内部は低酸素状態となり、細菌がバイオフィルムと呼ばれる膜を形成して身を守ります。
これにより、宿主の免疫細胞や抗菌薬が内部まで届きにくくなり、感染が慢性的に持続します。
骨代謝の乱れ
慢性的な炎症刺激により、骨を壊す細胞(破骨細胞)と作る細胞(骨芽細胞)のバランスが崩れ、画像上で透亮像(穴があいたような像)と硬化像が混在する特徴的な所見を呈します。
ブローディ骨膿瘍の検査・チェック方法
ブローディ骨膿瘍は症状が非特異的であるため、詳細な病歴聴取と身体診察に加え、画像検査と血液検査を組み合わせた総合的な評価が不可欠です。
早期に的確な診断を下すことが、合併症の回避と早期回復への鍵となります。
画像検査
画像検査は診断の柱となります。各検査の特性を理解し、段階的に実施します。
単純X線撮影(レントゲン)
最初に行う基本検査です。典型例では、骨幹端部に境界がはっきりした円形・楕円形の透亮像(骨が溶けて見える部分)を認め、その周囲を白く硬い硬化像が囲みます。
ただし、発症から2〜3週間は異常が現れないケースがあるため、初期に異常がないからといって否定はできません。
CTスキャン
骨の構造を詳細に把握するのに適しており、病変の正確な位置やサイズ、周囲の骨硬化の程度を立体的に評価できます。
また、骨の中に隠れた小さな瘻孔(膿の通り道)や、皮質骨の薄さを確認する際にも非常に有用です。
MRI検査
感度が高く、早期診断に有用な検査です。膿瘍そのものだけでなく、周囲の骨髄浮腫も鮮明に描き出します。
造影剤を用いた検査では、膿瘍の縁が白く染まるrim enhancement(リング状濃染)が認められ、これが診断の大きな決め手となります。
血液検査
血液検査は炎症の強さを測る指標ですが、ブローディ骨膿瘍では数値がそれほど上がらないのが大きな特徴です。
| 検査項目 | 典型的な所見 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 白血球数 (WBC) | 正常 〜 軽度上昇 | 急性骨髄炎(著明な上昇)との差をみる |
| CRP | 軽度上昇(1-5mg/dL) | 現在進行中の炎症の程度を評価 |
| 血沈(赤沈) | 軽度 〜 中等度亢進 | 慢性的な炎症の持続を確認する指標 |
白血球数は12,000/μL以下、CRPは10mg/dL以下にとどまり、一見すると軽症に見える場合があります。
また、血液培養の陽性率は10%未満と低いため、血液検査だけで原因菌を特定するのは困難です。
病理組織検査・培養検査
ブローディ骨膿瘍の確定診断においては、病理組織検査と細菌培養検査が重要な役割を果たします。
具体的には、CTガイド下生検や手術時に採取された組織を用いて診断を確定させますが、この際、治療薬を選定するための培養用検体も同時に採取することが一般的です。
病理組織学的な所見としては、慢性炎症細胞の浸潤や肉芽組織の形成、および壊死組織などが認められ、その周囲には反応性の骨新生や線維化を伴うのが特徴です。
ここでの最も重要なプロセスは悪性腫瘍との鑑別であり、特に骨肉腫やユーイング肉腫、悪性リンパ腫、さらには好酸球性肉芽腫といった疾患を確実に除外することが、その後の治療方針を決定するうえでの大前提となります。
一方、原因菌を特定するための培養検査については、陽性率が60〜70%程度にとどまるため、正確な結果を得るには抗菌薬を投与する前の検体採取が欠かせません。
通常の好気性培養に加えて、症例に応じて嫌気性培養や真菌培養も実施されます。
また、薬剤感受性検査により、適切な抗菌薬の選択が可能となります。
ブローディ骨膿瘍の治療方法と治療薬、リハビリテーション、治療期間
ブローディ骨膿瘍の治療は、病変の大きさ、活動性、患者の年齢などを総合的に考慮して個別に計画します。
抗菌薬による保存的治療と外科的治療を組み合わせた治療が一般的です。
抗菌薬治療
起因菌が判明している場合は感受性のある薬剤を選択し、不明の場合は最も頻度の高い黄色ブドウ球菌を標的とした薬剤を選択します。
- セファゾリン: 1回1〜2g、1日3回(標準的な第一選択薬)
- セフトリアキソン: 1回1〜2g、1日1〜2回
- バンコマイシン: MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が疑われる場合
- クリンダマイシン: 1回600mg、1日3回(点滴または内服)
初期治療は静脈内投与(点滴)で行い、症状の改善や炎症反応(CRP値など)の低下を確認したあと、セファレキシンやアモキシシリンやクラブラン酸などの経口薬へ切り替えます。
再発リスクを抑えるため、通常6〜12週間の投与が必要であり、自己判断での中断は厳禁です。
外科的治療
保存的治療で効果不十分な場合や、膿瘍が大きく(目安として3cm以上)骨折のリスクがある場合、または診断の確定が必要な場合に検討します。
| 手術方法 | 適応 | 特徴 |
|---|---|---|
| 掻爬(そうは)術 | 標準的治療 | 膿瘍を開窓し、内容物や壊死組織を除去。周囲の健全な骨は温存する。 |
| ドリリング | 小病変 | 膿瘍に穴を開けて減圧・排膿を促す。低侵襲で経皮的に行われることもある。 |
| 切除術 | 大病変・再発例 | 病変部を骨ごと切除する根治的な方法。大きな骨欠損が生じる場合がある。 |
術後は必要に応じて抗菌薬含有セメントビーズを留置したり、大きな骨欠損部に対して二期的に骨移植を行ったりする場合があります。
小児の場合、骨端線(成長線)を損傷しないよう細心の注意を払う必要があります。
リハビリテーション
リハビリテーションは、廃用性症候群を防ぎ、円滑な社会・スポーツ復帰を果たすため段階的に進めます。
急性期(術後0〜2週):安静と保護
- 患肢の挙上による浮腫(むくみ)の管理
- 固定していない関節の他動的可動域訓練
- 健側の筋力維持訓練
回復期(術後2〜6週):荷重の開始
- 画像所見に応じた段階的な荷重訓練(部分荷重から全荷重へ)
- 患部周囲の筋力強化訓練の開始
維持期(術後6週以降):機能回復と復帰
- 日常生活動作(ADL)の完全自立
- 骨癒合の進行に合わせた高負荷運動(ランニング、ジャンプなど)の再開
治療期間と予後
一般的に、完治までには3〜6か月程度の期間を要します。
治療成績
適切な治療が行われれば90%以上の症例で治癒が得られ、長期予後も良好です。
成長障害や変形などの後遺症が残ることはまれです。
再発リスク
再発率は5〜10%程度で、主な原因は壊死組織の掻爬不十分や、抗菌薬治療の早期中断によるものです。
予後因子
早期診断・早期治療が最も重要です。
一方で、MRSA感染例や免疫状態が低下している患者、診断が大幅に遅れた症例では、治療期間が延長する傾向があります。
治療終了後も、再燃がないかを確認するために定期的な画像評価を行う必要があります。
薬の副作用や治療のデメリット
ブローディ骨膿瘍の治療は数か月に及ぶため、薬剤の副作用や治療に伴うデメリットを事前に正しく理解しておくことが重要です。
抗菌薬による副作用
長期間の抗菌薬投与では、消化器症状やアレルギー反応、肝機能障害などの副作用が現れる場合があります。
- 消化器症状:下痢、悪心、食欲不振などが見られる。多くの場合、整腸剤の併用や食事指導により軽減が可能。
- アレルギー反応:皮疹や掻痒感(かゆみ)から、まれに重篤なアナフィラキシーまで幅がある。投与開始時は特に注意深い観察が必要であり、異常を認めた場合は速やかに薬剤を中止する。
- 肝機能障害:定期的な血液検査によるモニタリングが不可欠。数値が正常上限の3倍を超えるような場合は薬剤の変更を検討する。
- 腎機能障害:特にアミノグリコシド系やバンコマイシンを使用する際に注意を要する。尿量の減少や血液検査値の変化に留意し、必要に応じて投与量の調整を行う。
手術治療のリスク
手術には一般的な外科的リスクに加え、本症特有の注意点があります。
| リスク | 発生頻度 | 主な対処法 |
|---|---|---|
| 感染の再燃 | 5~10% | 壊死組織の徹底した除去(掻爬)と、適切な抗菌薬の継続。 |
| 病的骨折 | 2~5% | 術後の活動制限と、画像所見に基づいた段階的な荷重。 |
| 成長障害 | 1~3%(小児) | 骨端線(成長線)を傷つけない慎重な手術操作。 |
また、病変部位(大腿骨や骨盤など)によっては術中の出血が多くなる可能性があるため、事前に輸血の準備を検討する場合もあります。
神経や血管の損傷を防ぐため、術前MRIなどによる詳細な位置確認が不可欠です。
長期治療が日常生活に与える影響
特に若年者の場合、数か月の治療期間は学業やスポーツ活動に大きな影響を及ぼします。
- 身体的・精神的ストレス: 活動制限による体力・筋力の低下が避けられない。また、学業やスポーツ活動の中断による不安やフラストレーションが生じやすい。
- 通院・経済的負担: 定期的な検査やリハビリに伴う時間的・金銭的負担が生じる。家族のサポート体制や社会資源の活用も検討が必要。
- 薬剤耐性菌のリスク: 不適切な抗菌薬の使用や治療の中断により、耐性菌が出現するおそれがある。将来的な治療が困難になる可能性があるため、処方通りの服用を徹底しなければならない。
治療中止のリスク
症状が改善したからといって、自己判断で治療を中止するのは危険です。
早期の中止は高い再発率を招き、結果として深刻な状況を引き起こすおそれがあります。
- より強力な抗菌薬(副作用リスクの高い薬剤)が必要となる。
- 治療期間がさらに数か月単位で延長する。
- 初回よりも侵襲の大きな手術が必要となる可能性が高まる。
- 耐性菌が出現し、治療の選択肢が狭まる。
- 骨の破壊が進行し、関節機能障害などの合併症リスクが高まる。
画像所見と血液検査の結果が完全に正常化するまで治療を完遂することが大切です。
保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
ブローディ骨膿瘍の治療は、基本的に健康保険の適用対象となります。しかし、治療が長期に及ぶため、自己負担額の総計は決して少なくありません。
治療開始前に、おおよその治療費を把握しておくと、経済的な準備ができ、安心して治療に専念できます。
保険診療における自己負担額の目安
診断から治療終了まで、すべて保険診療として扱われます。
- 初診・検査費用:レントゲン、血液検査、MRI検査などを含めて15,000〜25,000円程度。CTスキャンを追加する場合は、さらに5,000〜8,000円程度が必要。
- 入院・手術費用:1か月の入院(手術含む)で、個室代などの自費分を除き200,000〜300,000円程度。ただし、高額療養費制度の利用により、実際の支払額は80,000〜160,000円程度(所得相応)に軽減される。
- 外来・薬剤費用:抗菌薬治療(内服)で月額15,000〜30,000円程度。点滴治療が必要な場合より高額になる傾向がある。
検査・治療別の費用内訳(3割負担時)
| 項目 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 単純X線撮影 | 1,500〜2,000円 | 2方向撮影の場合 |
| CT検査 | 5,000〜8,000円 | 造影剤使用時は追加費用が発生 |
| MRI検査 | 8,000〜12,000円 | 造影剤使用時は追加費用が発生 |
| 血液検査 | 2,000〜3,000円 | 培養検査追加時はプラス2,000円程度 |
| 手術料(掻爬術) | 60,000〜100,000円 | 麻酔料や手術材料費は別途加算 |
| リハビリテーション | 600〜1,200円 | 1回あたり(週2〜3回が一般的) |
医療費負担を軽減する制度
高額な医療費に対しては、公的な助成制度を最大限に活用しましょう。
高額療養費制度
1か月(暦月)の自己負担額が限度額を超えた場合、その差額が払い戻されます。
事前に限度額適用認定証を取得し、窓口で提示すれば、支払いを自己負担限度額までに抑えられます。
小児医療費助成制度
自治体により内容は異なりますが、多くの場合、中学生または高校生までの医療費が無料、あるいは定額となります。
多数該当制度
過去12か月以内に3回以上、高額療養費の支給を受けている場合、4回目以降はさらに自己負担限度額が引き下げられます。
治療期間を通じた総費用のシミュレーション
治療期間が長期化するため、トータルの出費も考慮しておく必要があります。
- 保存的治療(内服のみ)を6か月継続した場合:総額で150,000〜250,000円程度。定期的な外来診察、検査、薬剤費が含まれる。
- 手術・入院を経て完治を目指す場合:高額療養費制度を適用した実負担額で200,000〜300,000円程度。
- 経過観察期間(1〜2年)の費用:3か月ごとの受診と画像検査で、年間30,000〜50,000円程度。
医療費そのものだけでなく、通院のための交通費や入院時の日用品代、付き添い者の負担なども無視できません。
自治体によっては独自の交通費助成を設けている場合もあるため、病院のソーシャルワーカーなどに相談することをおすすめします。
以上
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