ほくろと皮膚がんの見分け方|メラノーマ・基底細胞がんの初期症状

その「ほくろ」大丈夫? 見過ごさないでほしい皮膚がんのサイン

皮膚がんは、早期発見が非常に重要ながんです。普段ほくろやシミだと思っているものの中に、危険なサインが隠れているかもしれません。

この記事では、皮膚がんの基礎知識から、主な種類(メラノーマ、基底細胞癌、有棘細胞癌など)の特徴、ほくろとの見分け方、自分でできる「ABCDE基準」を用いたセルフチェックの方法まで、皮膚がんの症状と早期発見のポイントを詳しく解説します。

気になる症状がある場合、いつ皮膚科を受診すべきかの目安も紹介します。

目次

皮膚がんとは何か – 基礎知識

まず、皮膚がんがどのような病気なのか、基本的なところから見ていきましょう。皮膚は体を覆う最大の臓器であり、さまざまな細胞で構成されています。

皮膚がんは、これらの皮膚の細胞が異常に増殖することで発生します。

皮膚の構造とがんの発生

皮膚は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっています。

表皮はさらにいくつかの層に分かれており、その中にはメラニン色素を作る細胞(メラノサイト)や、表皮の大部分を占める細胞(角化細胞)などがあります。

皮膚がんは、これらのどの細胞ががん化するかによって、その種類や性質が異なります。

皮膚の層とがんの関連性

皮膚の層主な細胞関連する可能性のある皮膚がん
表皮(基底層)メラノサイト悪性黒色腫(メラノーマ)
表皮(基底層)基底細胞基底細胞癌
表皮(有棘層)有棘細胞(角化細胞)有棘細胞癌

皮膚がんの定義

皮膚がんは、皮膚を構成する細胞の遺伝子に傷がつくことで、細胞が無秩序に増え続ける状態を指します。

増殖した異常な細胞の集まりが「がん」であり、周囲の組織を破壊しながら広がったり、体の他の場所(リンパ節や他の臓器)に転移したりする能力を持つものを「悪性腫瘍」と呼びます。

なぜ皮膚にがんができるのか

皮膚がんの発生には、いくつかの要因が関わっていますが、最大の要因は「紫外線」です。

主な原因 – 紫外線(UV)の影響

日光に含まれる紫外線(UV)は、皮膚の細胞のDNAを損傷させます。

通常、体にはこの損傷を修復する働きがありますが、長年にわたり紫外線を浴び続けると、修復が追いつかなくなったり、修復ミスが蓄積したりします。

その結果、細胞のがん化が引き起こされると考えられています。特に、子供の頃に紫外線を多く浴びた経験は、将来の皮膚がんリスクと関連することが指摘されています。

その他の要因

紫外線以外にも、以下のような要因が皮膚がんの発生に関与することがあります。

  • 特定の化学物質への長期間の曝露
  • やけどや外傷の痕(瘢痕)
  • 放射線治療の既往
  • 免疫力の低下(病気や薬剤によるもの)
  • 遺伝的な要因(特定の遺伝性疾患など)

なぜ早期発見が重要なのか – 生存率との関係

皮膚がんは、他のがんと同様に、早く見つけることが治療成績に直結します。

特に皮膚がんは体の表面に発生するため、自分の目で見て確認できるという大きな特徴があります。この利点を活かすことが重要です。

早期発見の最大のメリット

皮膚がんを早期に発見する最大のメリットは、がんがまだ皮膚の浅い部分(表皮内)にとどまっている段階で治療できることです。

この段階であれば、多くの場合、比較的簡単な手術などでがんを取り除くことができ、完治する可能性が非常に高くなります。

治療による体への負担も少なく、傷跡も最小限に抑えられる可能性が高まります。

皮膚がんと進行

がんが進行すると、表皮を越えて真皮、さらには皮下組織へと深く浸潤していきます。

真皮には血管やリンパ管が豊富にあるため、がん細胞がこれらに入り込み、体の他の部分へ運ばれる「転移」のリスクが高まります。

転移のリスク

がんが転移すると、治療はより複雑になり、体への負担も大きくなります。

皮膚がんの種類によっては、進行が比較的ゆっくりなものもありますが、中には急速に進行し、早期から転移を起こしやすいものもあります。

種類別に見る進行度と生存率

皮膚がんの生存率は、がんの種類と発見された時点での進行度(ステージ)によって大きく異なります。

特に早期発見が重要なメラノーマ

悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚がんの中でも特に悪性度が高く、早期から転移しやすい性質を持っています。

しかし、メラノーマも早期(がんが表皮内にとどまっている段階)で発見できれば、5年生存率は90%以上と良好です。

一方で、発見が遅れ、遠隔転移がある場合の5年生存率は、大幅に低下してしまいます。このことからも、メラノーマを含む皮膚がんの早期発見がいかに大切かがわかります。

主な皮膚がんのステージ別生存率の目安

がんの種類早期(限局)領域(リンパ節転移など)
悪性黒色腫(メラノーマ)高い(90%以上)低下する
基底細胞癌非常に高い(ほぼ100%)転移はまれだが、局所進行あり
有棘細胞癌高い転移すると低下する
注:生存率はあくまで目安であり、個々の状況によって異なります。

皮膚がんの主な種類と見分け方のポイント

一言で皮膚がんと言っても、いくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。代表的な種類(メラノーマ、基底細胞癌、有棘細胞癌)と、それぞれの見分け方を知っておくことが大切です。

悪性黒色腫(メラノーマ)

メラノーマは、皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)ががん化したものです。「ほくろのがん」とも呼ばれることがありますが、通常のほくろとは全く異なる悪性腫瘍です。

メラノーマの特徴と症状

メラノーマは、黒色や茶褐色のシミやほくろのように見えることが多いのが特徴です。日本人では、足の裏や手のひら、手足の爪に発生するタイプ(末端黒子型)の頻度が高いとされています。

初期症状としては、色むらがあったり、形がいびつであったりすることが挙げられます。進行すると盛り上がったり、出血したりすることもあります。

「爪の黒い線」もがんのサイン?

爪に黒い縦線が入ることがありますが、これは色素沈着や老化現象であることが多いです。しかし、以下のような特徴がある場合は「爪のメラノーマ」の可能性があります。

  • 線が徐々に太くなっている(幅3mm以上)
  • 色が濃くなっている、または色ムラがある
  • 爪の根元の皮膚まで黒くなっている(ハッチンソン徴候)

「爪のゴミかな?」と放置せず、気になる場合は皮膚科を受診しましょう。

ほくろとの違い – 写真で見る注意点

メラノーマと良性のほくろとの見分け方は、非常に難しい場合があります。

専門医はダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて観察しますが、一般の方が注意すべき点として「ABCDE基準」(後述)があります。

インターネット上にはメラノーマの写真も多くありますが、自己判断は禁物です。

写真と見比べて「違うから大丈夫」と判断するのではなく、「少しでも似ている」「ほくろと違う感じがする」と思ったら、専門医に相談することが重要です。

基底細胞癌

基底細胞癌は、表皮の最も深い層(基底層)の細胞から発生するがんです。皮膚がんの中では最も発生頻度が高いとされています。

基底細胞癌の主な症状

初期症状は、黒色や黒褐色の小さな「ほくろ」のように見えることが多いです。ゆっくりと成長し、数年かけて徐々に大きくなります。

中心部がくぼんで潰瘍のようになったり、縁が盛り上がって光沢を持ったりするのが特徴的です。痛みやかゆみなどの自覚症状は、初期にはほとんどありません。

発生しやすい部位

主に顔面(特に鼻、まぶた、耳の周囲など)、首、頭部など、紫外線が当たりやすい部位に発生します。

転移することはまれですが、局所での破壊性が強いため、放置すると周囲の組織(筋肉や骨など)を壊しながら深く浸潤していきます。早期に切除することが重要です。

有棘細胞癌

有棘細胞癌は、表皮の有棘層の細胞(角化細胞)から発生するがんです。基底細胞癌の次に発生頻度が高いとされています。

有棘細胞癌の症状 – かゆみや痛み

初期症状は、赤みを帯びたシミのような状態や、表面がカサカサした「かさぶた」のような状態で見られることが多いです。

進行すると、盛り上がって硬いしこり(結節)になったり、中心部が崩れて潰瘍になったりします。かゆみや痛みを伴うこともあります。悪臭を放つようになる場合もあります。

前がん病変(日光角化症など)

有棘細胞癌は、前がん病変と呼ばれる「がんになる前の状態」を経て発生することがあります。代表的なものに「日光角化症」があります。

これは高齢者の顔面や手の甲など、紫外線の影響を強く受ける部位にできる、赤みを帯びたカサカサしたシミのような病変です。

日光角化症の段階で治療することが、有棘細胞癌への進行を防ぐことにつながります。

主な皮膚がん3種の特徴比較

種類特徴的な外見主な発生部位
悪性黒色腫(メラノーマ)色むら、いびつな形、大きさの変化全身(日本人は足裏、爪など)
基底細胞癌黒色、光沢のある盛り上がり、中心のくぼみ顔面、頭頸部(日光曝露部)
有棘細胞癌赤いしこり、治りにくいかさぶた・潰瘍顔面、手の甲、下口唇など

その他のまれな皮膚がん

上記3つの他にも、乳房外パジェット病(主に外陰部や肛門周囲にできる、湿疹に似た外見のがん)や、皮膚付属器がん(汗腺や脂腺などから発生するがん)など、まれな種類の皮膚がんも存在します。

見分けがつきにくい「がん」の初期症状とは

皮膚がんの初期症状は、日常的によく見られるシミやほくろ、湿疹、あるいは治りにくい傷などと間違えやすいものも多く、それが見過ごされる原因ともなります。

どのような点に注意すればよいか、具体的な症状を見ていきます。

シミと間違えやすい初期症状

加齢とともに出てくる「シミ」(老人性色素斑)は、多くの場合、良性です。しかし、がんの初期症状がシミのように見えることもあります。

色調の変化

通常のシミは、ほぼ均一な茶褐色です。

一方、がん(特にメラノーマや基底細胞癌)の初期症状では、色が均一でなく、濃い部分と薄い部分が混在したり(色むら)、黒、青、赤、白などが混じったりすることがあります。

有棘細胞癌やその前段階である日光角化症は、茶色ではなく赤みを帯びたシミのように見えることがあります。

形のいびつさ

通常のシミは、円形や楕円形に近い、比較的整った形をしています。

一方、がんの場合は、形が左右非対称であったり、境界線がギザギザしていたり、周囲の皮膚にしみ出すように見えたりすることがあります。

ほくろと見分けるポイント

「ほくろ」(色素性母斑)は、良性の母斑細胞の集まりです。ほとんどのほくろは心配いりませんが、メラノーマはほくろと非常によく似た外見で始まることがあります。

大きさの変化

通常のほくろは、ある程度の大きさになると成長が止まるか、非常にゆっくりとしか変化しません。

一方、がん(特にメラノーマ)は、数ヶ月から数年単位で徐々に大きくなり続ける傾向があります。直径が6mmを超えるものは、一つの注意点とされます。

盛り上がりや出血

元々平らだったほくろやシミが、急に盛り上がってきた場合や、ドーム状に隆起してきた場合は注意が必要です。

また、ぶつけたりしていないのに、ほくろやシミの表面が崩れて出血したり、かさぶたができたりする症状も、がんを疑うサインの一つです。

湿疹や傷と誤認しやすい症状

皮膚がんの中には、ほくろやシミではなく、湿疹や治りにくい傷のように見えるものもあります。

治りにくい「かさぶた」や「ただれ」

有棘細胞癌や基底細胞癌では、表面がジュクジュクしたり(ただれ)、かさぶたができたりすることがあります。通常の湿疹や傷であれば、薬を塗ったり保護したりすれば数週間以内に治ることがほとんどです。

しかし、治療してもなかなか治らない、あるいは一時的に良くなっても同じ場所ですぐに再発するような場合は、がんの可能性も考え、皮膚科を受診する必要があります。

かゆみや痛みの有無

皮膚がんの初期症状として、かゆみや痛みを伴うことは比較的まれです。しかし、有棘細胞癌や、がんが進行して潰瘍になった場合などでは、かゆみや痛みを伴うこともあります。

「かゆみがないから大丈夫」とは言えませんが、逆に「湿疹だと思ったら、かゆみや痛みが強くなってきた」という場合も注意が必要です。

シミ・ほくろと皮膚がんの初期症状の比較

項目良性のシミ・ほくろ皮膚がん(特にメラノーマ)を疑う所見
ほぼ左右対称、境界明瞭左右非対称、境界がギザギザ
ほぼ均一な黒色〜茶褐色色むらがある、複数の色が混在
大きさあまり変化しない徐々に大きくなる(目安6mm以上)
変化変化が乏しい色、形、大きさが変化する、盛り上がる

自分でできるセルフチェック -「ABCDE」基準の活用法

早期発見のために、日頃から自分の皮膚をチェックする習慣が重要です。専門家でなくても、変化に気づくことは可能です。

特に「ABCDE基準」は、メラノーマを疑うほくろやシミの特徴を判断するのに役立ちます。

セルフチェックの重要性

皮膚がんは、自分で発見できる可能性が最も高いがんの一つです。自分の体にどのようなほくろやシミが、どこにあるのかを普段から把握しておくことで、新しい変化や異常に気づきやすくなります。

月に一度は、全身の皮膚を鏡などを使ってチェックする「セルフチェック」を習慣にしましょう。

メラノーマの見分け方「ABCDE基準」

ABCDE基準は、メラノーマと良性のほくろを見分けるための代表的な指標です。以下の5つの項目をチェックします。

A – Asymmetry(非対称性)

形が左右非対称である。良性のほくろは円形や楕円形で対称的な形をしていることが多いですが、メラノーマは形がいびつで非対称になる傾向があります。

B – Border(境界)

境界が不鮮明でギザギザしている。良性のほくろは、周囲の皮膚との境界がはっきりしていることが多いです。

一方、メラノーマは境界がぼやけていたり、インクがにじんだようにギザギザしていたりします。

C – Color(色)

色が均一でなく、濃淡が混じっている。良性のほくろは、通常、均一な色調です。

メラノーマは、黒、茶、青、赤、白など複数の色が混在したり、色がまだら(色むら)になったりすることがあります。

D – Diameter(直径)

直径が6mmを超える。良性のほくろにも6mmを超えるものはありますが、メラノーマは徐々に大きくなる傾向があり、6mm(鉛筆の断面程度)を超える場合は注意が必要です。

E – Evolving(変化)

形、色、大きさ、盛り上がりなどが変化する。これが最も重要なサインです。

以前はなかったほくろやシミが現れた、あるいは既存のほくろの様子(大きさ、形、色、表面の状態、盛り上がりなど)が変化してきた場合は、特に注意が必要です。

ABCDE基準の詳細

基準読み方チェックポイント
AAsymmetry(非対称性)形が左右対称でない
BBorder(境界)境界線がギザギザ・あいまい
CColor(色)色が均一でなく、濃淡がある
DDiameter(直径)大きさが6mm以上
EEvolving(変化)大きさ、形、色、症状が変化する

セルフチェックを行う頻度と方法

月に1回、明るい場所で全身の皮膚を観察します。手鏡や姿見を使い、見えにくい場所もしっかり確認しましょう。家族やパートナーにチェックしてもらうのも良い方法です。

全身のチェックポイント

顔、首、腕、手のひら、指の間、胸、腹部はもちろんですが、以下の見えにくい場所も忘れないようにチェックすることが大切です。

  • 頭皮(髪をかき分けて)
  • 背中、お尻
  • 足の裏、指の間
  • 爪(爪の色が黒く変化していないか)

この症状が出たら受診 – 医療機関へ相談する目安

セルフチェックで少しでも気になる点が見つかった場合、不安に思いながら様子を見るのではなく、専門家である医師に相談することが重要です。

どのタイミングで医療機関を受診すべきか、その目安を知っておきましょう。

皮膚科を受診すべきサイン

以下のような症状や変化に気づいた場合は、早めに皮膚科を受診することを推奨します。

ABCDE基準に当てはまる

前述の「ABCDE基準」のいずれか一つでも当てはまるほくろやシミが見つかった場合、特に「E(変化)」がある場合は、専門医の診察を受けるのが賢明です。

急激な変化(大きさ、色、形)

数ヶ月の間に、明らかに大きくなった、色が濃くなった、形が変わった、盛り上がってきた、といった急激な変化は、重要なサインです。

出血、かゆみ、痛みが続く

ほくろやシミが、特別な刺激がないのに出血したり、かさぶたができたり、治りにくい潰瘍になったりした場合。

また、これまで何もなかった場所に、新たにかゆみや痛みを伴うしこりができた場合も受診の目安です。

何科を受診すべきか

皮膚の異常に気づいた場合、まずは皮膚科を受診してください。特に「皮膚科専門医」の資格を持つ医師がいる医療機関を選ぶと、より正確な診断が期待できます。

まずは皮膚科専門医へ

皮膚科医は、皮膚の状態を詳細に観察するための知識と経験を持っています。必要に応じて、ダーモスコピー検査(後述)などを行い、がんの疑いがあるかどうかを判断します。

もし、がんの疑いが強ければ、生検(皮膚の一部を採取して調べる検査)や、より高度な治療が可能な総合病院などを紹介してくれます。

医師に伝えるべき情報

受診の際は、いつからその症状があるのか、どのような変化があったのかを具体的に医師に伝えることが、診断の助けになります。

医師に伝えることの例

  • いつ頃そのほくろやシミに気づいたか
  • 以前と比べてどのように変化したか(大きさ、色、形、盛り上がりなど)
  • かゆみ、痛み、出血などの症状があるか
  • 過去に紫外線を多く浴びる生活をしていたか
  • 家族に皮膚がんになった人がいるか

がんの診断プロセス – 病院で行う検査の流れ

実際に皮膚科を受診した場合、がんが疑われると、どのような検査が行われるのでしょうか。一般的な診断の流れを解説します。

視診と問診

まず、医師が患者さんから症状の経過(いつから、どのように変化したかなど)を詳しく聞きます(問診)。

その後、病変部を直接目で見て、その形、色、大きさ、表面の状態などを詳細に観察します(視診)。この時点で、ある程度の良性・悪性の見当をつけます。

ダーモスコピー検査

ダーモスコピー検査は、皮膚がんの診断において非常に重要な検査です。特にほくろとメラノーマの見分け方に威力を発揮します。

ダーモスコープとは

ダーモスコープ(またはダーマトスコープ)は、皮膚の表面を拡大して観察するための特殊な拡大鏡です。

光の乱反射を抑えることで、皮膚の表面だけでなく、表皮の内部や真皮浅層の色素沈着や血管の状態などを詳細に観察できます。

検査でわかること

この検査により、肉眼では難しい「ほくろ」か「メラノーマ」かの鑑別診断の精度が格段に上がります。メラノーマに特徴的な色素のパターンや、基底細胞癌に特徴的な血管のパターンなどを確認します。

この検査は痛みを伴わず、その場ですぐに行えます。

皮膚生検(組織検査)

視診やダーモスコピー検査の結果、がんの疑いが強いと判断された場合、確定診断のために皮膚生検(組織検査)を行います。

確定診断のための重要な検査

皮膚生検は、病変部の一部または全部をメスなどで切り取り、それを顕微鏡で詳細に調べる検査(病理組織検査)です。

これにより、がん細胞の有無、がんの種類(メラノーマ、基底細胞癌、有棘細胞癌など)、がんの深達度(どれくらい深く入り込んでいるか)などを確定させます。

生検の方法

局所麻酔を行った上で、病変の大きさや場所に応じて、皮膚を小さく円形にくり抜く「パンチ生検」や、病変全体または一部をメスで切り取る「切除生検」「部分生検」などが行われます。

通常は日帰りで行えます。

皮膚がんの主な検査法

検査名目的方法
視診・問診症状の把握、経過の確認目で見て、話を聞く
ダーモスコピー良性・悪性の鑑別特殊な拡大鏡で皮膚を観察
皮膚生検(病理検査)確定診断(がんの種類・深達度)皮膚の一部を採取し顕微鏡で調べる

進行度を調べるための追加検査

生検の結果、がんと確定し、特にがんが深く浸潤していたり、転移のリスクが高い種類(メラノーマなど)であったりした場合は、がんの広がりや転移の有無を調べるために、CT検査、MRI検査、超音波(エコー)検査、PET検査などの画像検査を行うことがあります。

知っておきたい主な治療法の選択肢

皮膚がんと診断された場合、がんの種類、進行度(ステージ)、発生した場所、患者さんの年齢や全身の状態などを総合的に考慮して、治療法が検討されます。

外科手術(切除)

皮膚がん治療の基本は、がん細胞を残さず完全に取り除くことです。そのため、多くの場合、外科手術が第一の選択肢となります。

最も基本的な治療

がんの病変部と、その周囲の健康な皮膚組織をある程度の余裕(マージン)を持って切除します。早期のがんであれば、この手術だけで完治することが期待できます。

拡大切除とセンチネルリンパ節生検

がんの種類(特にメラノーマ)や深達度によっては、再発を防ぐためにより広い範囲を切除する「拡大切除」が必要になることがあります。

また、がんが最初に転移しやすいリンパ節(センチネルリンパ節)を特定し、そこへの転移の有無を調べる「センチネルリンパ節生検」を、切除手術と同時に行うこともあります。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーのX線などをがんに照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。

手術が難しい場所(まぶたや鼻など)にがんができた場合や、高齢や他の病気のために手術が難しい場合、あるいは手術後の再発予防などを目的に行われます。

有棘細胞癌や基底細胞癌は、放射線治療が効きやすいとされています。

薬物療法(化学療法・免疫療法)

がんが進行して手術では取り切れない場合や、他の臓器に転移している場合には、薬物による全身治療が行われます。

進行したメラノーマなどに対する治療

従来は抗がん剤による化学療法が中心でしたが、近年、皮膚がんの治療、特に進行したメラノーマの治療は大きく進歩しています。

体の免疫の力を利用してがんを攻撃する「免疫チェックポイント阻害薬」や、がん細胞の特定の遺伝子変異を標的とする「分子標的薬」などが、高い治療効果を示しています。

皮膚がんの種類別 主な治療法

がんの種類早期の場合進行・転移した場合
メラノーマ外科手術(拡大切除など)薬物療法(免疫療法、分子標D的薬)
基底細胞癌外科手術、放射線治療薬物療法(分子標的薬など)
有棘細胞癌外科手術、放射線治療薬物療法(免疫療法、化学療法)

治療法の決定

実際の治療法は、これらの選択肢の中から、担当医と患者さんが十分に話し合い、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で決定していきます。

日常生活でできる紫外線対策と予防法

皮膚がんの多くは、長年にわたる紫外線の蓄積が大きな原因となっています。そのため、皮膚がんの予防には、日常生活での紫外線対策が非常に重要です。

紫外線の危険性(UVAとUVB)

日光に含まれる紫外線には、主にUVA(A波)とUVB(B波)があります。

UVBは皮膚の表面(表皮)に強く作用し、日焼け(サンバーン)やシミの原因となるだけでなく、皮膚細胞のDNAを直接傷つけ、皮膚がんの主な原因となります。

UVAは皮膚の奥深く(真皮)まで達し、シワやたるみの原因となるとともに、UVBによるがん化を促進するとも言われています。

具体的な紫外線対策

紫外線対策は、夏や晴れた日だけではなく、年間を通して行うことが大切です。曇りの日でも、また屋内でも窓際では紫外線の影響を受けます。

日焼け止めの選び方と使い方

日焼け止めは、UVBを防ぐ効果(SPF)とUVAを防ぐ効果(PA)の両方の表示があるものを選びましょう。

日常生活ではSPF15〜30、PA++程度、屋外でのレジャーなどではSPF50+、PA++++など、場面に応じて使い分けると良いでしょう。

重要なのは、十分な量をムラなく塗り、2〜3時間おきにこまめに塗り直すことです。

衣服や帽子による防御

物理的に紫外線を遮ることも効果的です。

  • つばの広い帽子をかぶる
  • サングラスをかける(目から入る紫外線も影響する)
  • 長袖、長ズボンの着用(色の濃いもの、織り目の詰まった布地が効果的)
  • 日傘の利用

時間帯や場所の工夫

紫外線が最も強くなるのは、午前10時から午後2時頃です。この時間帯の外出をなるべく避けるか、対策をより徹底することが重要です。

また、日陰を利用することも有効ですが、アスファルトや水面からの照り返しにも注意が必要です。

定期的なセルフチェックの継続

紫外線対策を行うとともに、予防のもう一つの柱は「早期発見」です。前述したセルフチェックを定期的に続け、皮膚の小さな変化も見逃さないように心がけましょう。

皮膚がんに関するよくある質問

最後に、皮膚がんに関して多く寄せられる疑問にお答えします。

ほくろが多いと皮膚がんになりやすいですか?

ほくろ(色素性母斑)が多いこと自体が、直接的にがんになりやすい体質を意味するわけではありません。

しかし、ほくろの数が多い人は、メラノーマのリスクがやや高いという統計的なデータもあります。

重要なのは、ほくろの数が多いか少ないかよりも、一つ一つのほくろに「ABCDE基準」のような変化がないか、あるいは新しいほくろができていないかを定期的にチェックすることです。

皮膚がんに「かゆみ」や「痛み」は必ずありますか?

いいえ、必ずしもあるわけではありません。特にメラノーマや基底細胞癌の初期では、かゆみや痛みを伴わないことがほとんどです。

そのため、「症状がないから大丈夫」と自己判断するのは危険です。有棘細胞癌や、がんが進行して表面が崩れた(潰瘍になった)場合には、かゆみ、痛み、出血などを伴うことがあります。

子供のほくろも注意が必要ですか?

子供にできるほくろのほとんどは良性です。成長とともにほくろが大きくなることも、大人に比べてよくあります。

子供のメラノーマの発生は非常にまれですが、ゼロではありません。

もし、ほくろの大きさの変化が体の成長に比べて著しく早い場合や、色がまだらで形が非常にいびつな場合、出血を繰り返す場合などは、念のため皮膚科に相談すると安心です。

一度できた皮膚がんは再発しますか?

早期に発見し、がんを完全に取り除くことができれば、その場所での再発(局所再発)のリスクは低くなります。

しかし、がんの種類や進行度によっては、数年後に同じ場所や、別の場所(リンパ節や他の臓器)に再発・転移する可能性もあります。

そのため、治療後も定期的な通院とセルフチェックを続けることが非常に重要です。

また、一度皮膚がんになった方は、別の場所に新しい皮膚がんが発生するリスクも一般の人より高いとされるため、紫外線対策の徹底が求められます。

メラノーマ以外の皮膚がんは心配ないですか?

基底細胞癌は転移することがまれであり、有棘細胞癌も早期であれば完治しやすいがんです。そのため、メラノーマに比べると「たちの良いがん」と言われることもあります。

しかし、これらのがんも放置すれば、局所で組織を破壊しながら進行し、顔の形を変えたり、機能(視覚や呼吸など)に影響を与えたりすることがあります。

有棘細胞癌はリンパ節や他の臓器に転移することもあります。どの種類の皮膚がんであっても、早期に発見し、適切に治療することが重要であることに変わりはありません。

その他の部位のがん症状

皮膚がんの症状は、目に見える変化として現れることが多いのが特徴です。しかし、がんの症状は発生する部位によって大きく異なります。

例えば、消化器系のがんであれば腹痛や下痢、便秘、血便など、呼吸器系のがんであれば咳や血痰、息切れなどが初期症状として現れることがあります。

がんの種類ごとに異なる特徴的なサインを知っておくことは、自分自身や家族の健康を守る上で重要です。

皮膚以外の部位のがんについて、その症状や早期発見のポイントを知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

▶ 頭頸部・脳・甲状腺など-多様化するがんの症状と早期発見のポイント

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