婦人科系がんは、女性の体に特有の臓器に発生するがんです。多くの場合、初期段階では自覚症状が現れにくいため、発見が遅れることも少なくありません。
「いつもと違う」というわずかな体のサインに気づき、早期発見につなげることが、ご自身の未来を守るために非常に重要です。
この記事では、婦人科系がんの主な症状や特徴、そして早期発見の鍵となる検診について解説します。
婦人科系がんとは – 早期発見が未来を守る理由
婦人科系がんは、女性特有の生殖器に関連するがんで、主に子宮、卵巣、卵管、腟、外陰部に発生します。
これらのがんは種類によって性質や進行の仕方が異なり、それぞれ特有の症状を示しますが、早期の段階では自覚症状が乏しいことが多いのが共通の特徴です。
だからこそ、がんの存在を早く知り、適切な対応を始めることが何よりも大切になります。
婦人科系がんの主な種類
婦人科系がんにはいくつかの種類がありますが、特に罹患数の多い代表的なものとして「子宮頸がん」「子宮体がん」「卵巣がん」が挙げられます。
それぞれの特徴を理解することが、症状を見極める第一歩です。
代表的な婦人科系がん
| がんの種類 | 主な発生場所 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 子宮頸がん | 子宮の入り口(頸部) | HPV感染が主な原因。検診による早期発見が可能。 |
| 子宮体がん(子宮内膜癌) | 子宮の奥(体部) | 不正出血がサインとして出やすい。閉経後に多い。 |
| 卵巣がん | 卵巣 | 初期症状が出にくく「サイレント・キャンサー」と呼ばれる。 |
早期発見の重要性 – なぜ「早く」が鍵なのか
すべてのがんに共通していえることですが、婦人科系がんも早期に発見できれば、治療の選択肢が広がり、体への負担が少ない治療を選べる可能性が高まります。
また、がんが臓器内にとどまっている早い段階(早期)と、他の臓器へ広がった段階(進行)とでは、治療後の経過も大きく異なります。
しかし、子宮頸がんや卵巣がんのように、初期段階ではほとんど自覚症状がないものも多く、症状が出た時には既にがんが進行しているケースも少なくありません。
だからこそ、症状が出る前の「検診」と、わずかな「症状」を見逃さない意識が重要です。
婦人科系がんに共通する主な症状 – 注意すべき体の変化
がんの種類によって現れる症状は異なりますが、婦人科系の臓器は互いに近接しているため、共通する症状が現れることもあります。
これらのサインに気づいたら、ためらわずに婦人科を受診することを検討してください。
最も注意すべきサイン「不正出血」
婦人科系がんのサインとして、最も分かりやすく、また重要なのが「不正出血」です。これは月経(生理)以外の時期に出血したり、性交渉時に出血したり、閉経後に出血したりすることを指します。
特に子宮頸がんや子宮体がんでは、不正出血が初期症状として現れることが多いため、量や回数にかかわらず、異常な出血は婦人科医に相談が必要です。
おりものの異常 – 色・量・匂い
おりもの(帯下)は女性の健康のバロメーターです。
普段と違う色(茶褐色、ピンク色、膿のような黄色)、水っぽいおりものが続く、量が多い、または悪臭がするといった変化は、子宮頸がんや子宮体がんのサインである可能性も考えられます。
おりものの異常も不正出血と同様に注意深い観察が必要です。
注意したい症状と受診の目安
| 症状 | 具体的な例 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 不正出血 | 月経以外の出血、閉経後の出血、性交時の出血 | 量や回数に関わらず、一度でもあれば相談 |
| おりものの異常 | 水っぽい、血が混じる、膿のよう、悪臭 | 数日間続く、または繰り返す場合 |
| 腹部の不調 | お腹の張り、下腹部痛、腹部のしこり | 原因不明の不調が続く場合 |
腹部や骨盤周辺の不調
下腹部痛や腰痛、骨盤周りの痛みも、注意すべき症状です。特に卵巣がんでは、がんが大きくなるにつれてお腹の張り(腹部膨満感)や圧迫感、下腹部痛を感じることがあります。
進行すると、腹水がたまってお腹が大きく膨らむこともあります。
排尿や排便に関する変化
がんが大きくなり、近くにある膀胱や直腸を圧迫すると、頻尿、排尿時の痛み、残尿感、便秘といった症状が出ることがあります。
これらは他の病気でも起こり得る症状ですが、婦人科系のがんが進行した際の一つのサインでもあります。
子宮頸がんのサイン – 不正出血やおりものの変化
子宮頸がんは、子宮の入り口である「子宮頸部」に発生するがんです。ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が主な原因であることが分かっています。
このがんは、がんになる前の「異形成」という状態を経て、数年から十数年かけてゆっくりとがんに進行するのが特徴です。
子宮頸がんの初期症状
子宮頸がんは、がんになる前の「異形成」の段階や、ごく初期のがん(上皮内がん)では、自覚症状がほとんどありません。そのため、症状がないうちに検診で発見することが非常に重要です。
初期症状に気づくことは難しいですが、進行し始めるといくつかのサインが現れます。
子宮頸がんの主な初期サイン
| 症状の種類 | 詳細な内容 |
|---|---|
| 不正出血 | 性交渉時の出血、月経と月経の間の出血、閉経後の出血 |
| おりものの異常 | 水っぽいおりもの、ピンク色や茶褐色のおりもの、悪臭 |
不正出血の詳細
子宮頸がんのサインとして最も多いのが不正出血です。特に、性交渉の際に出血(接触出血)が見られる場合は、注意が必要です。
がんが進行すると、月経の出血量が増えたり、月経期間が長引いたりすることもあります。
おりものの異常
おりものの変化も重要なサインです。がん組織がもろくなって崩れると、水っぽいおりものや、血が混じったピンク色・茶褐色のおりものが増えることがあります。
また、感染を伴うと膿のようになり、悪臭を放つこともあります。
進行した場合の症状
子宮頸がんがさらに進行し、がんが子宮の周囲の組織に広がったり、他の臓器に転移したりすると、よりはっきりとした症状が現れます。
子宮頸がん 進行時の症状
- 下腹部痛や腰痛
- 排尿や排便の障害(血尿・血便)
- 足のむくみ(リンパ節への転移による)
これらの症状は、がんが膀胱や直腸、骨盤壁にまで及んでいる可能性を示します。下腹部痛や腰に広がる痛みは、がんが神経を圧迫することで生じます。
これらの症状が現れる前に、検診や初期症状の段階で対応することが極めて重要です。
子宮体がん(子宮内膜癌)- 閉経後の出血は特に注意
子宮体がん(子宮内膜癌)は、胎児を育てる子宮本体(体部)の内側にある「子宮内膜」から発生するがんです。子宮頸がんとは発生場所も原因も異なります。
女性ホルモン(エストロゲン)の影響を長く受けることが主なリスク要因の一つと考えられています。
最大の警告「閉経後の出血」
子宮体がんの最も代表的で、最も重要なサインは「閉経後の不正出血」です。
閉経を迎えた後に、たとえ少量であっても性器から出血があった場合、それは月経の再開ではなく、何らかの異常のサインである可能性が非常に高いです。
閉経後の出血を経験した場合、年齢のせいだと自己判断せず、速やかに婦人科を受診し、必要な検査を受ける必要があります。
子宮体がんは、このサインによって早期に発見されることが多いがんです。
閉経前の不正出血
閉経前の女性であっても、子宮体がんを発症することはあります。その場合のサインも、やはり不正出血です。
月経の周期が不規則になる、月経の期間がだらだらと続く、月経の量が多い(過多月経)、月経以外の時期に出血するといった症状がみられます。
出血のサインと時期
| 時期 | 主なサイン | 注意点 |
|---|---|---|
| 閉経後 | 量に関わらずすべての出血 | 最も重要なサイン。直ちに検査が必要。 |
| 閉経前 | 不規則な出血、過多月経 | 月経不順や更年期症状と見分けにくい。 |
子宮体がんのリスク要因
- 肥満
- 出産経験がない
- 月経不順(多嚢胞性卵巣症候群など)
- 糖尿病、高血圧
その他の症状
不正出血以外にも、おりものに血が混じって茶褐色になる、膿が混じって悪臭がするといった症状が現れることもあります。
がんが進行すると、下腹部痛、排尿時や性交渉時の痛み、骨盤周辺の痛みを感じるようになります。
卵巣の異常 – お腹の張りや不調を見逃さない
卵巣がんは、卵子を生成し女性ホルモンを分泌する「卵巣」に発生するがんです。
卵巣は骨盤の奥深くにあり、がんが発生しても初期症状が現れにくいことから、発見が遅れがちになる傾向があります。
「サイレント・キャンサー」と呼ばれる理由
卵巣がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。
卵巣は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、ある程度がんが大きくなるまで、あるいは腹水がたまるなどして周囲を圧迫するまで、はっきりとしたサインが出にくいのです。
そのため、症状を自覚して受診した時には、がんが既に進行しているケースも少なくありません。
注意すべき初期のサイン – お腹の張り
卵巣がんの初期症状として比較的見られるのが、腹部の不調です。これらは非常にあいまいな症状であり、消化器系の不調や便秘、あるいは単なる体調不良として見過ごされがちです。
見過ごされがちな卵巣のサイン
- お腹が張る(腹部膨満感)
- 食欲不振、またはすぐに満腹になる
- 頻尿、便秘
- 下腹部痛、腰痛
ポイントは、これらの症状が「持続すること」です。一時的な不調ではなく、原因が分からないまま上記のような症状が続く場合は、卵巣がんの可能性も視野に入れ、婦人科を受診することが重要です。
卵巣がんのチェックポイント
| 症状 | チェックポイント |
|---|---|
| お腹の張り | 食事内容に関わらず、持続的にお腹が張っているか |
| 腹痛・腰痛 | はっきりした原因がないのに、鈍い痛みが続いていないか |
| 消化器症状 | 食欲不振や胃もたれ、便秘などが改善しないか |
進行した場合の症状
がんが進行し、卵巣が大きく腫れたり、腹水(お腹の中に水がたまること)が大量にたまったりすると、お腹がぽっこりと出てきたり、ウエストがきつくなったりします。
さらに進行すると、息苦しさや強い痛み、体重減少などが現れます。
「更年期だから」と思い込んでいませんか – 症状を正しく見極める
40代後半から50代にかけての更年期は、女性ホルモンのバランスが大きく変動し、心身にさまざまな不調が現れる時期です。
この時期に起こる症状が、婦人科系がんの初期症状と非常に似ているため、注意が必要です。
更年期の症状と婦人科系がんの症状の境界線
更年期によく見られる症状の一つに「月経不順」があります。月経の周期が乱れたり、出血が長引いたり、逆に少なくなったりします。
これは、子宮体がんや子宮頸がんの初期症状である「不正出血」と見分けるのが非常に困難です。
また、お腹の張りや下腹部痛なども、更年期の体調不良として片付けられてしまうことがあります。
症状の比較
| 症状 | 更年期による可能性 | がんの可能性(受診推奨) |
|---|---|---|
| 不正出血 | 月経周期が乱れる、経血量が不安定 | 月経と無関係の出血、閉経後の出血、性交時出血 |
| お腹の張り | ホルモンバランスによる一時的な張り | 持続する張り、痛みや食欲不振を伴う |
| 下腹部痛 | 排卵や月経に伴う一時的な痛み | 持続する鈍痛、次第に強くなる痛み |
閉経後の出血は「異常」と認識する
特に重要なのは、閉経(月経が1年間ない状態)を迎えた後の出血です。これを「更年期がぶり返した」などと自己判断することは非常に危険です。
前述の通り、閉経後の出血は子宮体がんの重要なサインです。
自己判断の危険性
「きっと更年期だから」「もう少し様子を見よう」という自己判断が、がんの発見を遅らせる最大の要因となり得ます。
症状が更年期によるものなのか、あるいは病気によるものなのかを個人で判断することはできません。
いつもと違う症状や、長く続く不調を感じたら、必ず婦人科を受診し、専門家による検査と診断を受けるようにしてください。
症状がなくても安心は禁物 – 定期検診の重要性
これまで述べてきたように、婦人科系がんは初期の自覚症状が乏しいものが多くあります。症状が出てからでは、がんが進行している可能性もあります。
だからこそ、症状が何もない健康な時にこそ「検診(スクリーニング検査)」を受けることが、早期発見のための最大の防御策となります。
検診(スクリーニング)の目的
検診の目的は、がんの症状が出る前に、がんそのものや、がんになる可能性のある「前がん病変」(子宮頸がんの異形成など)を見つけることです。
検診によって早期に発見できれば、命を落とす危険性を大幅に減らすことができます。
「子宮がん検診」だけでは卵巣は見えません
自治体の「子宮がん検診」は、主に子宮頸部の細胞をとる検査であり、卵巣の状態までは分かりません。
卵巣がんや子宮体がんを早期発見するためには、オプションで「経腟超音波(エコー)検査」を追加する必要があります。
痛みはほとんどなく、数分で子宮や卵巣の腫れを確認できます。検診を受ける際は、ぜひエコー検査の追加を検討してください。
各がんの主な検査方法
婦人科系がんの検診では、がんの種類に応じて異なる検査を行います。
婦人科がんの主な検診・検査
| 対象のがん | 主な検査方法 | 検査の概要 |
|---|---|---|
| 子宮頸がん | 子宮頸部細胞診 (Pap smear) | 子宮頸部をブラシなどでこすり、細胞を採取して調べる。 |
| 子宮体がん | 子宮内膜細胞診・組織診 | 子宮の内部に細い器具を挿入し、細胞や組織を採取する。 |
| 卵巣がん | 経腟超音波(エコー)検査 | 腟から器具を挿入し、卵巣の大きさや内部の状態を画像で見る。 |
子宮頸がん検診は、自治体や職場の検診で広く行われています。子宮体がん検診は、不正出血などの症状がある場合や、リスクが高い場合に推奨されます。
卵巣がんについては、確立された検診方法はありませんが、婦人科での超音波検査が発見のきっかけになることがあります。
検診や婦人科受診を検討するタイミング
- 自治体などから検診の案内が来た時
- 不正出血やおりものの異常、腹痛などがある時
- 閉経を迎えた時
- 血縁者に婦人科系がんの既往歴がある時
よくある質問 – 感染症要因とリスクについて
- 子宮頸がんの原因は感染症だと聞きました。本当ですか?
-
はい。子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの持続的な感染が原因であることが分かっています。
HPVは主に性交渉によって感染する一般的なウイルスですが、感染しても多くの場合は自己の免疫力で排除されます。
しかし、ごく一部の人がウイルスを排除できずに感染が持続すると、数年から十数年かけて「異形成」という前がん病変を経て、子宮頸がんへと進行することがあります。
- 婦人科系がんになりやすいリスク要因にはどのようなものがありますか?
-
がんの種類によって異なります。子宮頸がんはHPV感染が最大のリスクです。
子宮体がんは、女性ホルモン(エストロゲン)の影響が関係し、肥満、出産経験がないこと、糖尿病などがリスク要因となります。
卵巣がんは、明確な原因は分かっていませんが、出産経験がないことや、家族(特に母親や姉妹)に卵巣がんや乳がんの既往歴があることがリスク要因とされています。
- まったく症状がありません。婦人科に行く必要はないでしょうか?
-
症状がない場合でも、定期的な検診は非常に重要です。特に子宮頸がんは、症状がない初期段階や前がん病変の段階で発見できるがんの代表です。
検診は、症状がない健康な人が受けるからこそ意味があります。20歳を過ぎたら、定期的に子宮頸がん検診を受けることを強く推奨します。
また、卵巣がんなども初期症状が出にくいため、何か気になることがなくても、1年に1回程度は婦人科で超音波検査などを受けると安心です。
がんは体のさまざまな場所に発生します。婦人科系のがんとは異なりますが、「血液のがん」(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など)も存在します。
血液のがんは、発熱、倦怠感、あざ、リンパ節の腫れなど、全身に症状が現れることが多いのが特徴です。
異なる種類のがんについても知識を深めることは、ご自身やご家族の健康を守る上で役立ちます。
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