ホルモンとがんの関係|乳がん・前立腺がんのリスクと予防

ホルモン・内分泌の仕組みから紐解く、がんの原因とリスク要因

私たちの体は、様々な物質によって精巧にコントロールされています。その中でも「ホルモン」は、体の成長、代謝、生殖機能など、生命活動の根幹を支える重要な役割を担っています。

しかし、このホルモンのバランスが崩れると、時にがんの発生や進行に関与することがあります。

この記事では、ホルモンと内分泌の基本的な仕組みから説き起こし、乳がんや前立腺がんといった特定のがんとホルモンの深い関係、そして私たちの生活習慣がホルモンバランスにどう影響するのかを詳しく解説します。

目次

私たちの体を操る指揮者 – ホルモンの正体とは

私たちの体が日々、調和を保ちながら機能している背景には、ホルモンという名の化学物質の働きがあります。

これらは体内の特定の場所(内分泌腺)で作られ、血液に乗って全身を巡り、標的となる細胞に様々な指令を届けます。

まるでオーケストラの指揮者のように、体の各機能が適切なタイミングで正しく働くよう調整しているのです。

このセクションでは、そのホルモンの基本的な働きと、体をコントロールする内分泌の仕組みについて見ていきましょう。

ホルモンとは何か – 体内情報伝達の主役

ホルモンは、ごく微量で体の状態を大きく変える力を持つ情報伝達物質です。

内分泌腺で産生された後、血液によって全身に運ばれ、特定の臓器や細胞にある「ホルモン受容体」という鍵穴に、鍵のようにぴったりと結合することで作用を発揮します。

この働きにより、心身の健康維持、ストレスへの対応、エネルギーの代謝調整など、生命活動に欠かせない多くの機能がコントロールされます。

ホルモンの種類は100以上あるといわれ、それぞれが独自の役割を持ち、互いに連携しながら体全体のバランスを保っています。

主な内分泌腺とホルモンの種類

体内の様々な場所に点在する内分泌腺が、それぞれ異なる種類のホルモンを産生し、体の機能を調整しています。

主な内分泌腺代表的なホルモン主な働き
下垂体成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン体の成長、他の内分泌腺の調整
甲状腺甲状腺ホルモン新陳代謝の促進
副腎コルチゾール、アドレナリンストレス対応、血糖値の調整
膵臓インスリン、グルカゴン血糖値のコントロール
卵巣(女性)エストロゲン、プロゲステロン月経周期、妊娠の維持
精巣(男性)テストステロン男性的な身体的特徴の維持

内分泌系が果たす重要な役割

内分泌系とは、これらホルモンを産生・分泌する内分泌腺のネットワーク全体を指します。このシステムは、神経系と並んで体の二大情報伝達システムの一つです。

神経系が電気信号で素早く情報を伝えるのに対し、内分泌系はホルモンを介して、より広範囲に、そして持続的に体の状態を調整する役割を担います。

例えば、長期的なストレスへの対応や、思春期から老年期に至るまでの体の変化は、内分泌系によるホルモンの緻密なコントロールによって成り立っています。

ホルモンバランスの乱れ – それが、がんの引き金に?

ホルモンは多すぎても少なすぎても、体の機能に不調をきたします。この絶妙な均衡、いわゆる「ホルモンバランス」が崩れることが、様々な病気の原因となり得ます。

そして、一部のがんにおいては、このホルモンバランスの乱れが発生や進行の重要なリスク要因となることが分かっています。

ここでは、なぜホルモンバランスが崩れるのか、そしてそれがどのようにがんのリスクと結びつくのかを解説します。

ホルモンバランスが崩れるとは

ホルモンバランスが崩れるとは、特定のホルモンの分泌量が過剰になったり、逆に不足したりする状態を指します。また、複数のホルモン間の連携がうまくいかなくなることも含まれます。

加齢による自然な変化のほか、過度なストレス、不規則な生活習慣、栄養の偏り、特定の病気などが原因で、このバランスは容易に変動します。

体が正常な状態を保とうとする調整機能がうまく働かなくなり、心身に様々な影響が現れます。

乱れのサインと身体への影響

ホルモンバランスの乱れは、全身に多様なサインとして現れることがあります。

これらのサインは、がんの直接的な症状ではありませんが、体内で何らかの変調が起きていることを示唆する重要な手がかりとなります。

症状の分類具体的なサインの例関連する主なホルモン
身体的症状急な体重増減、疲労感、肌荒れ、ほてり甲状腺ホルモン、コルチゾール
精神的症状気分の落ち込み、イライラ、不眠、集中力低下セロトニン、コルチゾール
生殖系の症状月経不順、無月経、性欲減退女性ホルモン、男性ホルモン

がんリスクとホルモン異常の関連性

特定のホルモンは、細胞の増殖を促す働きを持っています。正常な状態では、この働きは体の成長や組織の修復に必要です。

しかし、ホルモンが過剰な状態が長く続くと、正常な細胞分裂のコントロールが効かなくなり、一部の細胞が異常に増殖を始めることがあります。

これが、がんの発生につながる一因と考えられています。特に、乳がん、子宮体がん、前立腺がんなどは、性ホルモンの影響を強く受けるため、「ホルモン依存性がん」とも呼ばれます。

女性ホルモンと乳がん・子宮体がん – 知っておきたい関係性

女性のライフステージは、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンの分泌量の変化と密接に関わっています。

これらのホルモンは女性らしい体つきを形成し、妊娠や出産を可能にする一方で、その作用が乳がんや子宮体がんといった女性特有のがんの発生リスクに深く関与していることが知られています。

エストロゲンが関与するがん

女性ホルモンの中でも、特にエストロゲンは細胞増殖を促進する作用を持ちます。このエストロゲンの影響を長期間にわたって受け続けることが、乳がんや子宮体がんのリスクを高める主要な要因の一つです。

初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産経験がない、あるいは初産年齢が高いといった要因は、生涯でエストロゲンにさらされる期間が長くなるため、リスクを高めると考えられています。

乳がんの増殖とエストロゲン

乳がんの約7割は、エストロゲンの刺激によって増殖する性質を持つ「ホルモン受容体陽性乳がん」です。

がん細胞の表面にあるエストロゲン受容体にエストロゲンが結合すると、細胞に対して「増殖せよ」というスイッチが入ります。

そのため、体内のエストロゲンレベルが高い状態は、乳がん細胞の増殖を助長してしまうことになります。

乳がんのリスクを高める要因解説
初経年齢が早い・閉経年齢が遅い生涯におけるエストロゲンへの曝露期間が長くなります。
出産経験がない・授乳経験がない妊娠・授乳期間中はエストロゲンの分泌が抑制されるため、経験がないと相対的に曝露期間が長くなります。
閉経後の肥満閉経後は脂肪組織がエストロゲンの主要な供給源となるため、肥満は血中エストロゲン濃度を高めます。
長期のホルモン補充療法閉経後の更年期症状の緩和のために用いるホルモン剤がリスクを高めることがあります。

子宮体がん発生とホルモンバランス

子宮体がんは、子宮内膜から発生するがんで、その多くがエストロゲンの過剰な刺激によって引き起こされます。

通常、排卵後にはプロゲステロンが分泌され、エストロゲンによって厚くなった子宮内膜の増殖を抑える働きをします。

しかし、排卵障害などでプロゲステロンの作用が不十分なままエストロゲンの刺激だけが続くと、子宮内膜は異常に増殖し、がん化のリスクが高まります。

これも閉経後の肥満が大きなリスク要因となります。

「ピル」や「ホルモン補充療法」とがんリスク

避妊や月経困難症に使われる「低用量ピル」や、更年期障害の「ホルモン補充療法(HRT)」は、がんのリスクになるのでしょうか?

  • 乳がん: わずかにリスクが上がるとされていますが、中止すれば数年でリスクは元に戻ると言われています。
  • 卵巣がん・子宮体がん: ピルの服用によって、逆にリスクが下がる(予防効果がある)ことが分かっています。

「ホルモン剤=がんになる」と恐れすぎず、主治医と相談しながらメリットとデメリットを天秤にかけて選択することが大切です。

男性ホルモンと前立腺がん – 無関係ではいられない男性たちへ

男性の健康や活力に深く関わる男性ホルモン(アンドロゲン)。その代表格であるテストステロンは、筋肉や骨格の発達、性機能の維持などに重要な役割を果たします。

しかし、この男性ホルモンが、中高年の男性に多く見られる前立腺がんの発生と進行に密接に関わっていることも事実です。

男性ホルモンの働きを理解することは、前立腺がんのリスクを考える上でとても大切です。

男性ホルモン(アンドロゲン)の働き

アンドロゲンは、主に精巣で作られるステロイドホルモンの総称です。

第二次性徴期に声変わりや体毛の増加といった男性的な特徴を発現させ、成人後も精子の産生や性欲の維持、筋肉量の保持など、生涯にわたって男性の心身の健康を支えます。

前立腺もアンドロゲンの作用によって発達し、その機能を維持しています。

前立腺がんの発生と進行

前立腺がんは、多くの場合、男性ホルモンであるアンドロゲンの刺激を栄養源として増殖します。

がん細胞の発生そのものにアンドロゲンが直接関与するかどうかはまだ完全には解明されていませんが、一度発生したがん細胞の多くは、アンドロゲンの存在下で活発に増殖することが分かっています。

この性質を利用したのが、前立腺がんの治療の柱の一つであるホルモン療法です。

アンドロゲンと前立腺がん細胞の増殖

前立腺がんのリスクは、加齢とともに高まります。特に50歳を過ぎると増加傾向が見られます。遺伝的な要因も指摘されており、近親者に前立腺がんの患者さんがいる場合はリスクが高まります。

また、食生活の欧米化、特に動物性脂肪の過剰摂取がリスク要因として考えられています。

前立腺がんのリスクを高める要因解説
加齢最も大きなリスク要因で、高齢になるほど発生率が高まります。
家族歴父親や兄弟に前立腺がんの人がいる場合、リスクが上昇します。
人種欧米の黒人男性で発生率が高いことが知られています。
食生活高脂肪食、特に動物性脂肪の多い食事がリスクを高める可能性があります。

治療におけるホルモン療法の位置づけ

前立腺がんがアンドロゲンの刺激で増殖するという性質を利用し、体内のアンドロゲンの量を減らしたり、アンドロゲンががん細胞に作用するのを妨げたりするのがホルモン療法(内分泌療法)です。

手術や放射線治療と並ぶ主要な治療法であり、特に進行した前立腺がんに対して中心的な役割を果たします。副作用として、ほてりや性機能の低下などが現れることがあります。

なぜホルモンががん細胞を増殖させるのか – その仕組みに迫る

これまで見てきたように、特定のホルモンは乳がんや前立腺がんなどの増殖を促します。では、具体的にどのような仕組みで、ホルモンはがん細胞に「増えろ」という指令を送るのでしょうか。

その鍵を握るのが、細胞の表面や内部に存在する「ホルモン受容体」です。この受容体の働きと、それを利用したホルモン療法の考え方について詳しく見ていきましょう。

ホルモン受容体の鍵と鍵穴の関係

ホルモンとその受容体の関係は、よく「鍵と鍵穴」に例えられます。

血液中を流れてきたホルモン(鍵)が、標的となる細胞にある特定の受容体(鍵穴)にぴったりと結合することで、初めてその細胞に作用します。

この結合がスイッチとなり、細胞内で様々な化学反応が連鎖的に起こり、結果として細胞の性質を変えたり、増殖を促したりするのです。

がん細胞のホルモン受容体

ホルモン依存性のがん細胞は、このホルモン受容体をたくさん持っています。乳がんや子宮体がんの細胞はエストロゲン受容体を、前立腺がんの細胞はアンドロゲン受容体を持っています。

手術や生検で採取したがん組織を調べて、これらの受容体があるかどうか(陽性か陰性か)を確認することは、その後の治療方針を決める上で極めて重要です。

ホルモン受容体の状態意味治療への影響
陽性 (+)がん細胞の増殖にホルモンが関与している。ホルモン療法が有効である可能性が高い。
陰性 (-)がん細胞の増殖にホルモンは関与していない。ホルモン療法は効果が期待できず、他の治療法を選択する。

細胞増殖シグナルの活性化

ホルモンが受容体に結合すると、細胞の核に向かって「増殖せよ」というシグナルが伝わります。

このシグナルが核内のDNAに到達すると、細胞分裂に必要な遺伝子のスイッチがオンになり、細胞は分裂・増殖を開始します。

ホルモン依存性のがんでは、この一連の流れが過剰に働くことで、がん組織が大きくなっていくのです。

ホルモン療法の作用点

ホルモン療法は、この「ホルモンと受容体の結合」から始まる一連の増殖シグナルを断ち切ることを目的とした治療です。

そのアプローチは大きく分けて2つあります。

ホルモンの産生を抑える治療

一つは、体内で作られるホルモン(鍵)そのものの量を減らす方法です。

例えば、精巣や卵巣からのホルモン分泌を薬で抑制したり、閉経後の女性で脂肪組織から作られるエストロゲンの産生を阻害したりします。

ホルモン受容体をブロックする治療

もう一つは、がん細胞にあるホルモン受容体(鍵穴)にホルモンが結合するのを邪魔する方法です。

ホルモンの代わりに受容体に結合するが、増殖のスイッチは入れない薬(抗ホルモン剤)を投与します。これにより、鍵穴がふさがれ、本物のホルモンが作用できなくなります。

ホルモン療法の種類主な作用対象となる主ながん
LH-RHアゴニスト/アンタゴニスト脳下垂体に働きかけ、性ホルモンの分泌を指令するのを止める。乳がん、前立腺がん、子宮体がん
アロマターゼ阻害薬閉経後の女性において、脂肪組織でのエストロゲン産生を阻害する。乳がん
抗エストロゲン薬エストロゲン受容体に結合し、エストロゲンの作用を妨げる。乳がん
抗アンドロゲン薬アンドロゲン受容体に結合し、アンドロゲンの作用を妨げる。前立腺がん

生活習慣が招くホルモンの変動 – がんリスクを高める要因

ホルモンバランスは、生まれ持った体質だけでなく、日々の生活習慣によっても大きく左右されます。私たちが毎日口にする食事、身体活動の量、そして心の状態までもが、ホルモンの分泌に影響を与えます。

特に、ホルモン依存性がんのリスクを考える上では、これらの生活習慣を見直すことが、予防の観点からとても重要になります。

食事とホルモンバランス

食事は、ホルモンの材料となる栄養素を補給し、その働きを調整する上で基本的な役割を担います。特定の栄養素の過不足は、ホルモンバランスを乱す原因となります。

特に、脂肪の摂取量や種類は、性ホルモンのレベルに影響を与えることが知られています。バランスの取れた食事を心がけることが、内分泌系を健やかに保つ第一歩です。

影響を与える栄養素と食品

ホルモンバランスを整えるためには、特定の食品だけを食べるのではなく、多様な食品を組み合わせることが大切です。

  • 大豆製品(イソフラボン)
  • 食物繊維(野菜、きのこ、海藻)
  • 良質な脂質(青魚、ナッツ類)
  • ビタミン・ミネラル

運動不足と肥満がもたらす影響

運動不足は肥満につながりやすく、この肥満がホルモンバランスを乱す大きな要因となります。

特に閉経後の女性の場合、脂肪組織はエストロゲンを産生する主要な場所になるため、内臓脂肪が増えると血中のエストロゲン濃度が高まり、乳がんや子宮体がんのリスクを上昇させます。

また、肥満はインスリンの働きを悪くし、これも一部のがんの増殖を促進する可能性があります。

ストレスや睡眠不足とホルモンの関係

長期的なストレスや慢性的な睡眠不足も、ホルモンバランスを乱す原因です。ストレスを感じると、副腎からコルチゾールという「ストレスホルモン」が分泌されます。

この状態が続くと、免疫機能の低下や性ホルモンのバランスの乱れを引き起こすことがあります。

また、睡眠中には成長ホルモンなど体の修復や調整に必要なホルモンが分泌されるため、睡眠不足はこれらの働きを妨げます。

生活習慣の要因ホルモンへの主な影響関連するがんリスク
高脂肪・高カロリーな食事性ホルモン(特にエストロゲン)の血中濃度を上昇させる。乳がん、子宮体がん、前立腺がん
運動不足・肥満インスリン抵抗性を高め、脂肪組織からのエストロゲン産生を増やす。乳がん、子宮体がんなど多くのがん
過度なストレス・睡眠不足コルチゾールの過剰分泌、成長ホルモンの分泌低下などを招く。免疫機能低下による間接的なリスク

今日からできること – ホルモンバランスと上手に付き合う生活術

ホルモンとがんの関係を理解した上で、次に大切なのは、リスクを減らすために日々の生活で何ができるかを知ることです。特別なことを始める必要はありません。

食事や運動など、毎日のちょっとした心がけが、長期的に見てホルモンバランスを整え、がんの予防につながります。ここでは、今日から実践できる具体的な生活術を紹介します。

がん予防を意識した食事のポイント

バランスの良い食事は、健康な体づくりの基本です。ホルモンバランスを整え、がんのリスクを低減するためには、以下の点を意識すると良いでしょう。

  • 野菜や果物を積極的に摂る
  • 動物性脂肪は控えめに
  • 食物繊維を十分に摂る
  • 塩分を控える

適度な運動のすすめ

定期的な運動は、肥満を予防・改善し、ホルモンバランスを整える上で非常に効果的です。運動によって筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、インスリンの働きも良くなります。

ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動と、軽い筋力トレーニングを組み合わせるのが理想的です。無理なく、楽しみながら続けられる運動を見つけることが長続きの秘訣です。

心身の健康を保つための生活習慣

食事や運動に加え、心身のコンディションを整えることもホルモンバランスの維持には重要です。

質の良い睡眠の確保

毎日決まった時間に寝起きする、寝る前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。

体が十分に休息することで、ホルモンの分泌リズムが整います。

ストレスマネジメント

趣味の時間を持つ、リラックスできる音楽を聴く、親しい人と話すなど、自分なりのストレス解消法を見つけておくことが大切です。

ストレスを溜め込まない生活を心がけましょう。

習慣具体的な行動例期待される効果
バランスの取れた食事主食・主菜・副菜をそろえる。野菜を毎食プラスする。ホルモンの材料供給、肥満予防
定期的な運動週に150分程度の有酸素運動(早歩きなど)。適正体重の維持、インスリン感受性の改善
質の良い睡眠1日6〜8時間を目安に。寝室の環境を整える。ホルモン分泌リズムの正常化、心身の回復

よくある質問

ホルモンとがんの関係について、患者さんやそのご家族からよく寄せられる質問にお答えします。

ホルモン療法にはどのような副作用がありますか?

ホルモン療法は、作用するホルモンの種類や薬剤によって様々な副作用が現れる可能性があります。

女性ホルモンを抑える治療では、更年期障害に似た症状(ほてり、発汗、関節痛など)や骨粗しょう症のリスクが高まることがあります。

男性ホルモンを抑える治療では、ほてり、性機能低下、筋力低下、気分の落ち込みなどが報告されています。

これらの副作用は個人差が大きく、症状を和らげるための対策や治療もありますので、つらい場合は我慢せず、主治医や看護師、薬剤師に相談することが重要です。

大豆製品の摂りすぎは乳がんのリスクになりますか?

大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持つため、その影響を心配する声があります。

しかし、現時点での多くの研究結果からは、通常の食事から摂取する範囲の大豆製品(味噌汁、豆腐、納豆など)が乳がんのリスクを高めるという証拠は見つかっていません。

むしろ、適度な摂取はリスクを下げる可能性も示唆されています。

ただし、イソフラボンを高濃度に凝縮したサプリメントなどの長期的な安全性についてはまだ十分に分かっていないため、過剰な摂取は避けるべきでしょう。

ホルモンバランスを調べる血液検査でがんのリスクは分かりますか?

ホルモン値を測定する血液検査は、体の状態を知る上で有用な情報を提供しますが、その値だけでがんのリスクを正確に判断することはできません。

ホルモン値は日内変動や月経周期、体調などによっても変わるため、一時的な値だけで一喜一憂する必要はありません。

がんのリスク評価は、年齢、家族歴、生活習慣、そして検診結果などを総合的に見て判断します。

ホルモンバランスの乱れが気になる場合は、まずかかりつけ医に相談し、生活習慣の見直しから始めることをお勧めします。

過去の放射線治療・化学療法によるがんリスク

がんのリスク要因はホルモンだけではありません。過去に受けた特定の治療が、将来のがん発生リスクに関与することもあります。

特に、放射線治療や一部の化学療法(抗がん剤治療)は、がんを治療する強力な手段であると同時に、二次的ながんを引き起こす可能性も指摘されています。

どのような治療がリスクとなり得るのか、そしてそのリスクとどう向き合っていけばよいのかを詳しく解説した記事もご用意しています。

▶ 過去の放射線治療・化学療法と、二次がんのリスクについて考える

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