川魚の生食は危険?寄生虫とがん|肝吸虫・住血吸虫のリスク

寄生虫感染による癌 - 原因とリスク

「寄生虫」と聞くと、遠い国の話や過去の病気だと考えていませんか。しかし、私たちの食生活や生活環境の変化に伴い、日本でも寄生虫感染のリスクは決してゼロではありません。

そして、特定の寄生虫感染が長期間続くと、体内で「がん」を引き起こす原因になることが、WHO(世界保健機関)などの研究で明らかになっています。

この記事では、寄生虫とがんの知られざる関係、特に感染ががんの発生にどう関わるのか、その原因とリスク要因を詳しく解説します。

目次

寄生虫は過去の話?日本でも注意が必要な感染リスク

衛生環境が向上した現代の日本において、寄生虫感染は身近な問題ではないと感じるかもしれません。しかし、食文化の多様化やグローバル化により、私たちの生活の中に感染のリスクは依然として存在します。

ここでは、日本国内における寄生虫感染の現状と、特に注意すべきリスクについて考えます。

日本における寄生虫感染の現状

衛生環境の改善と新たなリスク

日本の公衆衛生レベルの向上は、かつて国内で流行した多くの寄生虫症を過去のものとしました。

しかし、その一方で、海外からの輸入食品の増加、日本人の海外渡航の一般化、あるいはペットブームといった社会の変化が、新たな感染の機会を生み出しています。

また、オーガニックや自然食への関心の高まりが、時として不適切な調理法につながり、感染リスクを高める可能性も指摘されています。

忘れられがちな国内の感染源

海外由来のリスクだけでなく、日本国内にも寄生虫の感染源は存在します。特に、河川や湖沼に生息する淡水魚の生食文化は、肝吸虫(かんきゅうちゅう)などの感染原因として重要です。

また、近年注目されているジビエ(野生鳥獣肉)も、種類によっては寄生虫感染のリスクを伴うため、十分な加熱調理が必要です。

過去の病気と片付けずに、現代のライフスタイルに潜むリスクを認識することが大切です。

なぜ今、寄生虫感染に注意が必要なのか

WHOが警鐘を鳴らす「顧みられない熱帯病」

WHOは、世界の貧しい人々の間で蔓延しているにもかかわらず、対策が十分に進んでいない感染症を「顧みられない熱帯病(NTDs)」と定義し、その制圧を呼びかけています。

住血吸虫症などの寄生虫感染症もこれに含まれており、世界的な健康課題です。日本は流行国ではありませんが、グローバル社会の一員として無関係ではいられません。

渡航者が感染を持ち込むケースも報告されています。

発がん性リスクを持つ寄生虫

数ある寄生虫の中でも、特定の種はヒトに対する発がん性が確認されています。これは、感染した部位で長期間にわたり組織の破壊と再生が繰り返される「慢性炎症」が主な原因です。

WHOの専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、これらの寄生虫を「発がん性がある」と明確に分類しています。

WHOが発がん性リスクを指摘する主な寄生虫

寄生虫の種類関連するがん主な感染源
肝吸虫(Clonorchis sinensis)胆管がん淡水魚の生食
日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)膀胱がん、大腸がん汚染された水との接触
タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)胆管がん淡水魚の生食

寄生虫感染が、がんを引き起こすとはどういうことか

寄生虫が体内に侵入し、長期間にわたって寄生を続けることで、がんが発生する土壌が作られることがあります。これは、ウイルスや細菌による発がんと同様に、感染症が要因となるがんの一つです。

この章では、寄生虫感染がどのようにしてがんの発生につながるのか、その基本的な関係性を解説します。

感染から発がんに至る長い道のり

慢性的な刺激が引き金に

寄生虫の虫体そのものが寄生部位の組織を物理的に圧迫したり、虫体が排出する代謝物が化学的な刺激となったりすることで、組織は常に傷つけられます。

これに対し、私たちの体は免疫反応を起こし、傷ついた組織を修復しようとします。この「攻撃と修復」のサイクルが何年、何十年と続く状態が「慢性炎症」です。

この終わりのない炎症が、細胞のがん化を促す主要な原因となります。

発がん性を持つ寄生虫の分類

国際がん研究機関(IARC)は、様々な物質や要因の発がん性を科学的根拠に基づいて評価し、分類しています。

寄生虫もその対象であり、肝吸虫や住血吸虫は、アスベストやたばこの煙と同じ「グループ1」に分類されています。これは、ヒトに対する発がん性について十分な証拠があることを意味します。

IARCによる発がん性分類(寄生虫関連)

グループ定義該当する寄生虫
グループ1ヒトに対して発がん性がある肝吸虫、タイ肝吸虫、ビルハルツ住血吸虫
グループ2Aヒトに対しておそらく発がん性がある
グループ2Bヒトに対して発がん性の可能性がある

肝吸虫と胆管がん – 食文化に潜む危険性

日本を含むアジア地域で特に問題となるのが、肝吸虫の感染による胆管がんです。私たちの食文化、特に淡水魚を生で食べる習慣が、このリスクと深く関わっています。

ここでは、肝吸虫の感染経路と、それが胆管がんを引き起こす過程を詳しく見ていきます。

肝吸虫とはどのような寄生虫か

感染のライフサイクル

肝吸虫は複雑な生活環を持つ寄生虫です。成虫はヒトなどのほ乳類の肝臓内の胆管に寄生し、産卵します。卵は糞便と共に排出され、水中で第一中間宿主であるマメタニシに食べられます。

タニシの体内で発育した幼虫は水中に放出され、次に第二中間宿主であるコイ科の淡水魚の体内に入り込み、筋肉で感染力を持つ状態になります。

そして、この魚をヒトが生で食べることで感染が成立します。

肝吸虫の感染環

  • 第一中間宿主 マメタニシ
  • 第二中間宿主 コイ科の淡水魚(モツゴ、タモロコなど)
  • 終宿主 ヒト、イヌ、ネコなど

淡水魚の生食と感染リスク

注意すべき魚の種類と調理法

日本国内では、モツゴやタモロコ、ワカサギといった淡水魚が肝吸虫の感染源となる可能性があります。

これらの魚を刺身や”洗い”、なめろう、踊り食いなどの非加熱、または加熱不十分な調理法で食べることが、最も高いリスクとなります。

特に、河川の中流域から下流域や湖沼で獲れた魚には注意が必要です。

肝吸虫感染のリスクが高い淡水魚の例

魚の種類主な生息地注意すべき食べ方
モツゴ全国の河川、湖沼刺身、踊り食い
タモロコ西日本の河川、湖沼刺身、なめろう
ワカサギ全国の湖沼生食(まれに)

凍結処理は有効か

サバなどに寄生するアニサキスは、-20℃で24時間以上の凍結処理によって死滅することが知られています。

しかし、肝吸虫の幼虫は低温に比較的強く、アニサキスと同様の凍結処理では死滅しない可能性があります。

したがって、淡水魚については凍結処理を過信せず、加熱調理を原則とすることが最も安全な予防法です。

【比較】「アニサキス」と「肝吸虫」はどう違う?

刺身による寄生虫といえば「アニサキス」が有名ですが、発がん性のある「肝吸虫」とは性質が全く異なります。

特徴アニサキス肝吸虫(かんきゅうちゅう)
主な魚海の魚(サバ、イカ、サケなど)川の魚(コイ、モツゴなど)
症状激しい胃痛(直後に出る)ほぼ無症状(10〜20年後にがん化)
がんリスクなしあり(胆管がん)
対策冷凍(-20℃)または加熱加熱のみ(家庭用冷凍では死なない可能性あり)

※「川魚」を生で食べる際は、アニサキス対策(冷凍)では不十分な場合があります。必ず「加熱」しましょう。

なぜ寄生虫ががんの引き金に?体内で起こる慢性炎症の仕組み

寄生虫の感染がすぐにがんになるわけではありません。長期間にわたる寄生によって引き起こされる「慢性炎症」こそが、がん発生の重要な原因と考えられています。

この章では、体内で慢性炎症がどのように起こり、細胞をがん化させていくのかを解説します。

慢性炎症とは何か

終わりなき戦いが組織を壊す

本来、炎症は細菌やウイルスなどの異物を排除し、傷ついた組織を修復するための正常な生体防御反応です。

しかし、寄生虫のように簡単には排除できない異物が体内に存在し続けると、免疫システムが常に活性化した状態になります。この、いわば「終わりなき戦い」が慢性炎症です。

この過程で、免疫細胞から放出される様々な化学物質(サイトカインなど)が、周囲の正常な細胞にもダメージを与え続けます。

慢性炎症からがん細胞が生まれるまで

細胞増殖の異常

慢性的な炎症によって常に組織が傷つけられると、体はそれを修復するために細胞分裂を活発化させます。細胞分裂が頻繁に繰り返されると、遺伝情報(DNA)をコピーする際にミスが起こる確率が高まります。

このコピーミスが、がんの発生につながる遺伝子の変異を蓄積させる原因の一つとなります。

活性酸素によるDNA損傷

免疫細胞は、寄生虫などの異物を攻撃するために「活性酸素」という強力な物質を産生します。

活性酸素は異物を排除するのに役立ちますが、同時に自身の正常な細胞のDNAをも傷つけてしまう「諸刃の剣」です。

慢性炎症の状態では、この活性酸素が過剰に産生され続け、細胞のDNAにダメージが蓄積し、やがて細胞のがん化を誘発します。

慢性炎症ががんを引き起こす主な要因

要因内容結果
細胞増殖の促進損傷した組織を修復するため細胞分裂が活発化するDNA複製のミス(突然変異)が起こりやすくなる
活性酸素の産生免疫細胞が寄生虫を攻撃する際に放出されるDNAやタンパク質を酸化させ、細胞を傷つける
血管新生の促進炎症部位に栄養を送るため新しい血管が作られるがん細胞の増殖と転移を助ける可能性がある

食生活だけではない – 見落としがちな感染経路とリスク要因

寄生虫感染の原因は、淡水魚の生食だけではありません。世界的に見れば、汚染された水を介した感染も大きな問題です。

ここでは、日本住血吸虫を例に、食生活以外の感染経路とそのリスクについて解説します。

日本住血吸虫と膀胱がん

かつて日本を苦しめた寄生虫

日本住血吸虫は、その名の通り、かつて日本の特定の地域(山梨県、広島県、佐賀県など)で流行し、「地方病」として恐れられていました。

官民一体となった対策により、現在では日本国内の感染環は撲滅されています。しかし、中国やフィリピンなどアジアの国々では、今なお深刻な健康問題であり続けています。

この寄生虫の虫卵が膀胱の壁に蓄積することで慢性的な炎症を引き起こし、膀胱がんの高いリスク要因となります。

皮膚から侵入する感染経路

日本住血吸虫の感染経路は食物を介したものではありません。原因となるのは、虫卵から孵化した幼虫がいる淡水(河川、湖沼、水田など)に、皮膚が直接触れることです。

幼虫は皮膚を突き破って体内に侵入し、血流に乗って成長します。流行地域での水遊びや農作業などが主な感染機会となります。

日本住血吸虫の主な流行地域

  • 中国(長江流域など)
  • フィリピン
  • インドネシアの一部

海外渡航時に注意すべきこと

流行地域での行動指針

これらの流行地域へ渡航する際は、寄生虫感染のリスクを念頭に置いた行動が必要です。特に、湖や川での水泳、カヌー、釣りなどのレクリエーション活動は感染のリスクを高めます。

安全が確認できない水には、手足を入れることも避けるべきです。シャワーなど、管理された水道水は基本的に安全ですが、万全を期すなら温水の使用が望ましいです。

海外渡航時の寄生虫感染予防策

行動注意点
安全な飲料水(ボトルウォーターなど)を飲む。河川や湖沼での遊泳を避ける。
食事加熱不十分な食物(特に淡水魚や甲殻類)は避ける。カットフルーツにも注意する。
衛生食事の前やトイレの後の手洗いを徹底する。

これはサインかもしれない – 気づきにくい寄生虫感染の症状

寄生虫感染は、初期段階では特徴的な症状が現れにくく、感染に気づかないまま長期間経過することが少なくありません。

しかし、体からのささやかなサインを見逃さないことが、早期発見とがん予防につながります。ここでは、寄生虫感染が疑われる可能性のある症状について解説します。

急性期の症状

感染初期のサイン

寄生虫が体内に侵入してから数週間以内に現れる症状を急性期症状と呼びます。多くの場合、発熱、下痢、腹痛、筋肉痛、咳、じんましんのような発疹などが見られます。

しかし、これらの症状は風邪や食中毒など他の多くの病気と共通しているため、この段階で寄生虫感染を疑うのは非常に困難です。

慢性期の症状

長期間を経て現れる体の変化

急性期の症状が治まった後、多くは無症状のまま慢性期に移行します。寄生虫が体内で成長し、数が増えるにつれて、寄生している臓器に特有の症状がゆっくりと現れてきます。

例えば、肝吸虫では肝臓の機能低下によるだるさや黄疸、胆管の炎症による右上腹部の痛みなどが見られます。

日本住血吸虫では、血尿や排尿時痛といった膀胱に関わる症状が特徴的で、これが膀胱がんの重要なサインである可能性もあります。

寄生虫と関連する慢性期の症状

寄生虫寄生部位主な慢性期の症状
肝吸虫肝臓内の胆管肝機能障害、黄疸、右上腹部痛、胆管炎
日本住血吸虫門脈、腸管、膀胱の静脈肝脾腫、腹水、血便、血尿(膀胱がんのリスク)

症状だけで判断することの難しさ

寄生している虫の数が少ない場合など、感染していても全く症状が現れないことも珍しくありません。

症状がないからといって、感染していない、あるいはリスクがないとは言い切れないのが寄生虫感染の難しいところです。

したがって、リスクのある食事(淡水魚の生食など)や行動(流行地域での遊泳など)に心当たりがある場合は、症状の有無にかかわらず、一度専門医に相談することを検討する価値があります。

がんリスクを減らすために今日からできる予防と対策

寄生虫感染によるがんのリスクは、正しい知識を持ち、日常生活で適切な予防策を講じることで大幅に減らすことができます。特別なことではなく、日々の心がけが重要です。

この章では、具体的な予防と対策について解説します。

食生活における予防策

加熱調理の徹底

ほとんどの寄生虫は熱に弱いため、加熱は最も確実で効果的な予防法です。食品の中心温度が75℃で1分間以上(ノロウイルス対策と同様の基準)加熱すれば、寄生虫は死滅します。

焼く、煮る、揚げるといった調理法を基本とし、特に厚みのある食材は中心部まで火が通っているかを確認する習慣が大切です。

淡水産動植物の生食を避ける

肝吸虫のリスクがある淡水魚はもちろんのこと、肺吸虫などの原因となるサワガニやモクズガニ、顎口虫の原因となるドジョウなども生食は危険です。

これらの食材は、日本の伝統的な食文化の一部でもありますが、健康を守るためには加熱して食べるという原則を徹底する必要があります。

食中毒予防の基本

  • 加熱する(中心部まで十分に)
  • よく洗う(生で食べる野菜など)
  • 生で食べない(リスクのある食材)

調理器具の衛生管理

二次汚染を防ぐ

生の魚や肉を扱った包丁やまな板には、寄生虫の幼虫や卵が付着している可能性があります。

これらの調理器具を洗浄せずに、そのままサラダなど生で食べる食材の調理に使うと、二次汚染を引き起こす原因になります。

生の食材を扱った後は、調理器具を洗剤でよく洗い、熱湯をかけるなどして消毒することが重要です。また、生の肉・魚用と、加熱不要の食材用でまな板を使い分けるのも有効な対策です。

感染が疑われる場合の早期の治療

万が一、寄生虫に感染したとしても、早期に発見し、駆虫薬で適切に治療すれば、体内の寄生虫を排除することができます。

これにより、慢性炎症への移行を防ぎ、がんの発生リスクを大幅に下げることが可能です。

リスクのある行動をとった後、気になる症状がある場合は、ためらわずに医療機関を受診し、治療の機会を逃さないようにしましょう。

不安を感じたら – 寄生虫感染を調べるための検査方法とは

食生活や渡航歴などから寄生虫感染の不安を感じた場合、医療機関で検査を受けることが重要です。早期に感染を発見し、適切な治療につなげることで、がんへの進行を防ぐことができます。

ここでは、主な検査方法について解説します。

問診の重要性

医師に伝えるべき情報

診察の際、医師は患者からの情報をもとに診断を進めます。寄生虫感染を疑う場合、特に重要なのが「食生活」と「渡航歴」です。

いつ、どこで、何をどのように食べたか(特に淡水魚やジビエの生食の有無)、また、どの国や地域にいつ頃滞在したか、現地で何をしていたか(川遊びなど)といった情報をできるだけ正確に伝えることが、的確な検査と診断への第一歩となります。

主な検査方法

便検査(虫卵検査)

多くの腸管寄生虫や肝吸虫などは、便の中に卵を排出します。この便を採取し、顕微鏡で虫卵を探すのが便検査です。

寄生虫感染の診断における基本的かつ確定的な検査方法ですが、虫卵の排出は断続的である場合も多く、一度の検査で見つからなくても感染を否定できないため、日を変えて複数回検査することがあります。

血液検査(抗体検査)

寄生虫が体内に侵入すると、免疫システムが反応して特異的な「抗体」を作ります。この抗体の有無を血液で調べるのが抗体検査です。

便検査で虫卵が見つからない場合や、組織内に寄生して虫卵を排出しないタイプの寄生虫の診断に有用です。ただし、過去の感染でも陽性になることがあるため、結果の解釈には専門的な判断が必要です。

寄生虫感染を調べる主な検査

検査の種類検査内容特徴
便検査便中の虫卵を顕微鏡で確認する直接的な証拠を見つける検査。虫卵の排出が少ないと見つかりにくい。
血液検査血中の抗体の有無を調べる感染の有無を間接的に知る。スクリーニング検査として有用。
画像検査超音波(エコー)、CT、MRIなど肝臓の肥大や胆管の拡張など、寄生による臓器の変化を確認する。

どこで相談・検査できるか

寄生虫感染が疑われる場合、まずはかかりつけ医に相談するか、消化器内科や感染症内科を受診するのが一般的です。

特に海外渡航後の不調であれば、渡航者外来やトラベルクリニックといった専門機関が適しています。必要に応じて、より専門的な検査や治療が可能な大学病院や研究機関に紹介されることもあります。

寄生虫感染によるがんを正しく理解し、自分の健康を守る

寄生虫感染とがんの関係について、これまで様々な角度から見てきました。重要なのは、過度に恐れるのではなく、リスクを正しく理解し、冷静に予防策を実践することです。

最後に、これまでの内容を振り返り、自身の健康を守るために大切な心構えを確認します。

リスクの正しい認識

ゼロリスクはないという心構え

衛生的な環境で生活していても、私たちの周りには様々な感染症のリスクが存在します。寄生虫感染もその一つです。

食文化は豊かさの象徴ですが、その裏にあるリスクを理解し、食材の選択や調理法を意識することが重要です。

「絶対に安全」を求めるのではなく、リスクを認識した上で、それを最小限に抑える行動を選択する賢明さが求められます。

予防可能な「がん」という視点

知識が最大の武器

感染症が原因となるがんの多くは、その感染経路を断つことで予防が可能です。寄生虫感染によるがんも例外ではありません。

「淡水魚は加熱して食べる」「流行地では安易に水に入らない」といった基本的な知識を持つことが、自分自身をがんのリスクから遠ざける最も効果的な武器になります。

この記事で得た知識を、ぜひご自身の生活の中で実践してください。

健康への意識と行動

体の変化に気を配り、定期検診を受ける

寄生虫感染の症状は分かりにくいことが多いですが、それでも自分の体の小さな変化に日頃から気を配ることは大切です。

そして、リスクのある行動に心当たりがある場合や、原因の分からない体調不良が続く場合は、専門医に相談する勇気を持ちましょう。

また、症状がなくても定期的にがん検診を受けることは、万が一がんが発生した場合の早期発見につながり、治療の選択肢を広げる上で非常に重要です。

よくある質問

寄生虫感染とがんについて、多くの方が抱く疑問にお答えします。

寄生虫に感染したら、必ずがんになりますか?

いいえ、必ずがんになるわけではありません。がんのリスクが高まるのは、特定の種類の寄生虫に感染し、治療されないまま長期間、体内で慢性的な炎症が続いた場合です。

多くの寄生虫は発がん性とは無関係ですし、発がん性のある寄生虫に感染した場合でも、早期に発見して駆虫薬で治療すれば、がんのリスクを大幅に下げることができます。

国産の淡水魚なら安全ですか?

安全とは言い切れません。肝吸虫などの寄生虫は、日本の河川や湖沼に生息する淡水魚にも寄生している可能性があります。

産地に関わらず、淡水魚やサワガニなどを生で食べることは感染のリスクを伴います。安全に食べるためには、中心部まで十分に加熱することが最も確実な予防法です。

家族が寄生虫に感染しました。人から人へうつりますか?

肝吸虫や日本住血吸虫など、この記事で取り上げた寄生虫の多くは、人から人へ直接感染することはありません。

これらの寄生虫は、タニシや魚といった中間宿主を経て感染環が成立するため、患者の便や尿に直接触れても感染する心配は基本的にありません。

ただし、家庭内では同じ食事を摂ることが多いため、感染源となった食物を家族も食べている可能性はあります。

駆虫薬を飲めば、がんのリスクは完全になくなりますか?

駆虫薬による治療は、体内の寄生虫を排除し、慢性炎症を食い止めることで、がん化への進行を止める最も重要な手段です。これにより、がんのリスクは大きく減少します。

しかし、感染期間が非常に長く、すでに胆管などにがんの前段階の変化が起きている場合は、治療後も定期的な検査で経過を観察することが大切です。

ウイルス感染による癌リスク

がんの原因となる感染症は寄生虫だけではありません。日本人のがん原因としてより身近なものに「ウイルス感染」があります。

特に、肝臓がんの原因となるB型・C型肝炎ウイルスや、胃がんの大きな原因であるピロリ菌は、多くの人が知るところでしょう。

また、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)も重要です。

これらのウイルス感染がどのようにがんを引き起こすのか、そしてどのような予防や対策があるのかを知ることを詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

▶ ウイルス要因による癌リスク

参考文献

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