日本人は胃がん、欧米人は皮膚がん?|人種とがんリスクの関係

あなたのルーツとがんリスク - 無視できない人種・民族的背景

「がん」は誰にでも起こりうる病気ですが、そのかかりやすさ(罹患率)に、人種や民族といった、ご自身の「ルーツ」が関係していることをご存知でしょうか。

なぜ日本人は胃がんにかかりやすく、欧米では皮膚がんが多いのか。その背景には、親から受け継いだ遺伝的な要因と、それぞれの地域で育まれた食文化や生活習慣が複雑に絡み合っています。

この記事では、人種・民族的背景ががんのリスクにどのように影響を与えるのかを、科学的な知見に基づいて解説します。

ご自身のルーツを知り、あなたに合ったがん予防や検診について考えるきっかけにしてください。

目次

世界地図で見るがんの分布 – なぜ地域によって差があるのか

世界に目を向けると、がんの罹患率や死亡率が国や地域によって大きく異なることがわかります。この「差」は、単なる偶然ではありません。

その土地の環境、人々の生活習慣、そしてそこに住む人々の遺伝的な背景が、がんの発生に深く関わっています。

統計データは、がんという病気の多様性を示し、その原因を探る重要な手がかりを与えてくれます。

がん罹患率の世界的な傾向

国際的な統計を見ると、例えば、オーストラリアやニュージーランドでは皮膚がんの罹患率が非常に高く、東アジアでは胃がんが多い傾向が見られます。

一方で、北米やヨーロッパでは乳がんや前立腺がん、大腸がんの報告が多くなっています。このように、がんの種類(がん種)によって、発生しやすい地域に偏りがあるのが現状です。

これは、がんの予防策を考える上で非常に重要な視点です。

地域別・主要ながん罹患率の傾向

地域罹患率が高い傾向にあるがん関連が指摘される要因
東アジア(日本、韓国など)胃がん、肝臓がんピロリ菌感染、B型・C型肝炎ウイルス
北米・西ヨーロッパ乳がん、大腸がん、肺がん高脂肪食、肥満、喫煙率
オーストラリア皮膚がん(悪性黒色腫)強い紫外線、白色人種の割合

環境要因と遺伝的要因の相互作用

がんの発生原因は一つではなく、複数の要因が絡み合って起こります。その中でも「環境要因」と「遺伝的要因」は二大要因です。環境要因には、食事や運動、喫煙、大気汚染、紫外線などが含まれます。

一方、遺伝的要因は、親から子へと受け継がれる遺伝子の違いに起因します。重要なのは、これらが独立しているのではなく、互いに影響し合っている点です。

例えば、特定の遺伝子を持つ人が、ある環境要因にさらされると、がんのリスクが格段に高まる場合があります。

移民研究が示すもの

人種・民族的背景とがんの関係を調べる上で、「移民研究」は多くの知見をもたらします。これは、ある国から別の国へ移住した人たちのがん罹患率を追跡する研究です。

遺伝的背景は同じまま、住む環境や生活習慣が変わることで、がんのリスクがどう変化するかを明らかにします。

移住先でのがんリスクの変化

有名な例として、日本から米国ハワイへ移住した日系人の研究があります。

この研究では、移住した第一世代から世代を重ねるごとに、日本人特有の胃がんの罹患率は低下し、代わりに米国で多い大腸がんや乳がんの罹患率が上昇する傾向が確認されました。

これは、遺伝的要因だけではがんリスクは決まらず、食事を中心とした生活習慣、つまり環境要因が非常に大きな影響を及ぼすことを示しています。

日本人と米国在住日系人のがん罹患率比較

がんの種類日本在住の日本人米国在住の日系人(2世、3世)
胃がん高い低下する傾向
大腸がん中程度上昇する傾向
乳がん増加傾向上昇する傾向

親から受け継ぐ遺伝子の違い – 人種によるがんのなりやすさ

私たちの体は、約2万種類の遺伝子情報に基づいて作られています。この遺伝子情報には個人差があり、その違いの一部が、特定のがんにかかりやすい、あるいはかかりにくいといった「体質」として現れます。

人種や民族は、長い年月をかけて形成された遺伝的特徴を共有する集団であり、その違いが、がんの罹患率の差の一因となります。

特定のがんに関連する遺伝子変異

一部のがんでは、発症リスクを大幅に高める特定の遺伝子の変異が知られています。その代表例が、BRCA1およびBRCA2という遺伝子です。

これらの遺伝子に変異があると、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と診断され、生涯のうちに乳がんや卵巣がんを発症するリスクが著しく高まります。

このような強い影響を持つ遺伝子変異は、がん全体の5〜10%を占める「遺伝性のがん」の原因と考えられています。

人種・民族集団に特有の遺伝的傾向

特定のがん関連遺伝子変異は、すべての人種で同じ頻度で見つかるわけではありません。ある特定の民族集団で、その変異を持つ人の割合が他に比べて高いことがあります。

アシュケナージ系ユダヤ人とBRCA遺伝子変異

その典型例が、東ヨーロッパ系のルーツを持つアシュケナージ系ユダヤ人の集団です。

この集団では、一般の集団に比べて、BRCA1/2遺伝子の特定の変異を持つ人の割合が約10倍高い(約40人に1人)ことがわかっています。

このため、この集団に属する人々は、乳がんや卵巣がんへの注意がより一層必要となります。

BRCA1/2遺伝子創始者変異の保有率比較

集団変異の保有率(概算)備考
一般集団約400人に1人
アシュケナージ系ユダヤ人約40人に1人特定の3種類の変異が多い

遺伝子多型とがんリスク

がんのリスクに関わるのは、上記のような単一の強力な遺伝子変異だけではありません。

むしろ多くの場合は、一つ一つの影響は小さいものの、複数の遺伝子の個人差(遺伝子多型)が組み合わさることで、がんへのかかりやすさが少しずつ上下します。

こうした遺伝子多型の組み合わせのパターンは人種・民族間で異なるため、それががん罹患率の差を生む一因になっていると考えられています。

食文化と生活習慣の差 – 民族的背景ががんリスクに与える影響

遺伝的な要因が「がんになりやすい素地」だとすれば、食文化や生活習慣は「リスクのスイッチを押す」環境要因と言えます。

世界各地で受け継がれてきた伝統的な食事や生活スタイルは、その地域のがん罹患の傾向に深く関わっています。

グローバル化が進む現代では、伝統的な生活習慣の変化が、がんの発生状況にも変化をもたらしています。

食事がもたらすがんリスクの差

「何を食べるか」は、がん予防において最も重要な要素の一つです。地域によって主食や調理法、好まれる味付けが異なり、それが長期的に見てがんのリスクに影響を与えます。

日本食と胃がんリスク

伝統的な日本の食事は、漬物や干物、味噌汁など塩分濃度の高い食品を多く含んでいました。高塩分食は胃の粘膜を傷つけ、胃がんの発生を促す要因の一つと考えられています。

近年、減塩意識の高まりや食生活の変化により、日本の胃がん罹患率は減少傾向にありますが、依然として世界的に見れば高い水準です。

食事内容と関連が指摘されるがん

食事スタイル・食品リスクが高まる可能性のあるがんリスクが下がる可能性のあるがん
高塩分食胃がん
高脂肪・高タンパク食(欧米食)大腸がん、乳がん、前立腺がん
野菜・果物中心の食事食道がん、胃がん、大腸がん

欧米食と大腸がん・乳がん

赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ハム、ソーセージなど)の摂取量が多く、動物性脂肪が中心となる欧米型の食事は、大腸がんのリスクを高めることが確実視されています。

また、閉経後の女性においては、高脂肪食や肥満が乳がんのリスクを高めることも指摘されています。食物繊維の摂取量が少ないことも、欧米型食事のリスク要因の一つです。

【日本人の変化】「大腸がん」の急増

この影響は、現在の日本に色濃く現れています。 かつての日本では少なかった大腸がんですが、食生活の欧米化(肉食の増加や食物繊維不足)が進むにつれ、罹患数は右肩上がりに増加しました。

現在では日本人女性のがん死亡原因の第1位、男女合わせても第2位となるほど深刻化しており、「遺伝的な背景(日本人であること)」が変わらなくても、「環境(食生活)」が変われば、かかりやすいがんの種類も劇的に変化することを示す典型的な例と言えます。

喫煙・飲酒文化とがん罹患率

喫煙と過度な飲酒ががんの主要なリスク要因であることは、人種や民族を問いません。

しかし、国や文化によって喫煙率や飲酒習慣には大きな差があり、それが肺がんや食道がん、肝臓がんなどの罹患率の違いとなって現れます。

  • 喫煙
  • 過度な飲酒
  • 運動不足
  • 肥満

日本人に多い胃がん – ピロリ菌感染と遺伝的要因の関連

日本人のがんの中で、長年にわたり罹患率・死亡率ともに上位を占めてきたのが胃がんです。その最大の原因は「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」という細菌の感染です。

なぜ日本ではピロリ菌感染者が多く、胃がんにつながりやすかったのか。その背景には、衛生環境の歴史と、日本人特有の遺伝的素因が関わっています。

ピロリ菌感染が胃がんの主因

ピロリ菌は、主に幼少期に口から感染し、胃の粘膜に棲みつきます。感染すると、多くの人で慢性的な胃炎が起こり、胃の粘膜が萎縮する「萎縮性胃炎」へと進行します。

この萎縮性胃炎が、胃がんの発生母地となります。かつての日本では、井戸水の使用など衛生環境が整っていなかったため、ピロリ菌の感染率が非常に高い時代がありました。

現在の若い世代では感染率は激減していますが、高齢層では依然として高いままです。

ピロリ菌感染と胃がん発生リスク

状態年間胃がん発生率の目安備考
ピロリ菌未感染ほぼ 0%胃がんリスクは極めて低い
ピロリ菌感染(除菌なし)約 0.5%感染者の約200人に1人が毎年発症
ピロリ菌除菌後約 0.2%リスクは約半分~1/3に低下

遺伝的素因とピロリ菌感染の影響

ピロリ菌に感染した人すべてが胃がんになるわけではありません。発症には、個人の遺伝的な体質が関わっています。

特に、炎症反応や免疫反応の強さに関わる遺伝子の個人差(遺伝子多型)が、胃がんへの進行しやすさに影響を与えることがわかってきました。

特定の遺伝子多型を持つ人は、ピロリ菌に感染した際に胃の炎症が強く長く続き、がん化しやすいと考えられています。

胃がん予防のためにできること

胃がん予防の最も効果的な方法は、ピロリ菌の検査を受け、感染している場合は「除菌治療」を行うことです。除菌は、2種類の抗生物質と胃酸を抑える薬を1週間服用するだけの簡単な治療です。

成功すれば、その後の胃がん発生リスクを大幅に下げることができます。特に、胃の粘膜の萎縮が進む前、若いうちに除菌する方が予防効果は高いとされています。

  • ピロリ菌検査・除菌
  • 定期的な胃がん検診(内視鏡検査)
  • 塩分を控えた食事
  • 野菜・果物の摂取

欧米で報告が多い皮膚がんや乳がん – 紫外線と遺伝的背景の影響

ところ変わって、欧米、特にオーストラリアや北欧など、肌の色が白い(白色人種の)人々が多く住む地域では、皮膚がんの罹患率が突出して高くなっています。

また、乳がんも欧米で非常に多いがんの一つです。これらの背景には、紫外線という強力な環境要因と、人種的な遺伝背景、そして生活習慣が複雑に関係しています。

皮膚がんと紫外線の関係

皮膚がんの最大の原因は、太陽光に含まれる紫外線(UV)です。紫外線を浴びることで皮膚細胞の遺伝子が傷つき、その傷が修復されずに蓄積することで、がん細胞が発生します。

メラニン色素と肌の防御機能

肌の色は、メラニンという色素の量で決まります。メラニン色素は、天然の日傘のように紫外線を吸収し、皮膚の細胞核にある遺伝子がダメージを受けるのを防ぐ重要な役割を担っています。

肌の色が濃い人種(黄色人種や黒色人種)はメラニン色素が多いため、紫外線に対する抵抗力が比較的強いです。

一方、肌の色が白い人種はメラニン色素が少なく、紫外線によるダメージを受けやすいため、皮膚がん、特に悪性度の高い悪性黒色腫(メラノーマ)のリスクが非常に高くなります。

肌の色と皮膚がんのリスク

肌のタイプメラニン色素の量皮膚がんのリスク
白色人種少ない高い
黄色人種(日本人など)中間中程度
黒色人種多い低い

乳がんと遺伝・生活習慣

乳がんは女性で最も多いがんですが、その罹患率には顕著な地域差があり、欧米で特に高くなっています。この差は、遺伝的要因と生活習慣の両方によって説明されます。

欧米における乳がん罹患率の高さ

先に述べたBRCA遺伝子変異の保有率が一部の集団で高いことに加え、欧米の生活習慣がリスクを高めていると考えられています。

具体的には、初経年齢が早い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がない、閉経後の肥満、過度な飲酒などがリスク要因として挙げられます。

日本人における乳がんの増加

かつて日本は乳がんの少ない国でしたが、現在では増加の一途をたどり、女性のがん罹患数第1位となっています。

この背景には、食生活の欧米化による動物性脂肪の摂取増加や、女性のライフスタイルの変化(晩婚化・少子化など)が大きく影響していると考えられています。

遺伝的背景は急に変わりませんが、環境の変化が乳がんリスクを高めているのです。

  • 初経年齢が早い・閉経年齢が遅い
  • 出産経験がない・初産年齢が高い
  • 閉経後の肥満
  • 飲酒習慣

人種・民族を超えた共通のがんリスク – 喫煙・肥満の影響を考える

これまで人種や民族によるがんリスクの「差」に注目してきましたが、一方で、どのようなルーツを持つ人であっても共通してがんのリスクを高める、強力な要因が存在します。

その代表が「喫煙」と「肥満」です。これらは予防可能な最大のリスク要因であり、世界中のがん対策において最も重要な課題と位置づけられています。

喫煙 – 最大のがんリスク要因

たばこの煙には70種類以上もの発がん性物質が含まれており、喫煙はあらゆるがんの中で最も影響の大きい単一のリスク要因です。

肺がんの原因の大部分を占めることはよく知られていますが、煙が直接触れないような口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肝臓、膵臓、膀胱、子宮頸がんなど、全身のさまざまながんのリスクを高めます。

また、本人が吸わなくても、周囲の人が吸うたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」にも、同様のリスクがあります。

肥満とがんの関連

肥満、特に内臓脂肪の蓄積は、単に体重が多いというだけでなく、体内で慢性的な炎症を引き起こしたり、がん細胞の増殖を促すホルモン(インスリンや女性ホルモンなど)の分泌バランスを乱したりします。

これにより、さまざまながんのリスクが高まることが科学的に証明されています。

肥満と関連の強いがん

がんの種類関連の強さ(科学的根拠)
食道がん(腺がん)、大腸がんほぼ確実
乳がん(閉経後)、子宮体がん、腎臓がんほぼ確実
肝臓がん、膵臓がん、胆のうがん可能性大

運動不足と感染症

定期的な身体活動、つまり運動は、肥満を予防・改善するだけでなく、それ自体が独立してがんのリスクを下げる効果があることがわかっています。特に大腸がんや乳がんに対する予防効果は明らかです。

また、がんの中にはウイルスや細菌への感染が原因で起こるものがあります。

B型・C型肝炎ウイルス(肝臓がん)、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)、ピロリ菌(胃がん)などは、人種を問わず誰にでも感染の可能性があり、ワクチンや治療による対策が重要です。

自分のルーツを知り、個別化されたがん検診の重要性を理解する

ここまで見てきたように、がんのリスクは、生まれ持った遺伝的背景と、生涯を通じて経験する環境要因の組み合わせで決まります。

この事実を踏まえると、すべての人に画一的ながん対策を行うのではなく、一人ひとりのリスクに応じた「個別化」のアプローチが、がんの予防と早期発見において極めて重要になります。

なぜ個別化されたアプローチが必要なのか

例えば、ピロリ菌感染率の高い日本人の家系に生まれた人は、そうでない人に比べて胃がんのリスクが高いため、より早期からの胃がん検診が推奨されます。

一方で、色白で紫外線の強い地域に住む人は、皮膚のチェックを習慣にすることが大切です。

このように、自分のルーツ(人種・民族的背景)や家族の病歴(家族歴)、生活習慣を把握することで、自分にとって特に注意すべきがんが何かを理解し、的を絞った対策を講じることが可能になります。

推奨されるがん検診と受診のタイミング

日本では、科学的根拠に基づいて死亡率を減少させる効果が認められている5つのがん検診が、対策型検診として多くの自治体で実施されています。

まずは、これらの検診を対象年齢になったら定期的に受けることが基本です。

その上で、ご自身の個別リスクに応じて、検診の開始年齢を早めたり、より精密な検査方法を選択したりすることを、かかりつけ医と相談するのが賢明です。

日本で推奨される主な対策型がん検診

  • 胃がん検診(バリウム検査または内視鏡検査)
  • 肺がん検診(胸部X線検査、喀痰細胞診)
  • 大腸がん検診(便潜血検査)
  • 乳がん検診(マンモグラフィ)
  • 子宮頸がん検診(細胞診)

家族歴の確認

個別化されたがん対策の第一歩は、ご自身の「家族歴」を正確に把握することです。血縁者(親、兄弟姉妹、子)に、どのようながんに、何歳でなった人がいるかを確認しましょう。

特定のがんが家族内で多発している場合や、若くしてがんと診断された血縁者がいる場合は、遺伝的な要因が強く関わっている可能性があります。

これは、がんのリスクを評価し、適切な検診計画を立てるための非常に重要な情報となります。

多様な背景を理解し、すべての人のがん予防へつなげる

この記事を通じて、がんのリスクが人種や民族的背景によって異なることを解説してきました。この知識は、特定の集団に対する偏見や差別を生むためにあるのではありません。

むしろ、一人ひとりの違いを科学的に理解し、それぞれに最も適した医療や情報を提供することで、社会全体としてのがん克服を目指すためにあります。

医療における多様性への配慮

医療の現場では、患者さんの人種的・文化的背景を理解し、尊重することが求められます。例えば、食事指導を行う際には、その人の食文化を無視した提案は現実的ではありません。

また、遺伝的リスクに関する説明も、正確かつ慎重に行う必要があります。多様性への配慮は、患者さんと医療者が信頼関係を築き、より良い治療結果を目指す上で土台となります。

社会全体で取り組むがん対策

人種や民族に関わらず、誰もが正しいがん情報にアクセスでき、質の高い予防、検診、治療を受けられる社会を築くことが究極の目標です。

そのためには、科学的根拠に基づいた知識の普及、検診を受けやすい環境の整備、そして、がんになっても安心して暮らせる社会的な支援体制の構築が重要です。

自分のルーツを知ることは、自分自身のがん対策を考える出発点であると同時に、社会全体の課題に目を向けるきっかけともなるのです。

がん予防のために個人ができること

分類具体的な行動期待される効果
生活習慣の改善禁煙、節度ある飲酒、バランスの取れた食事、運動多くのがんの一次予防
検診の受診自分に推奨されるがん検診を定期的に受けるがんの早期発見・早期治療
リスクの把握家族歴の確認、自分のルーツを意識する個別化された予防策の立案

人種・民族的背景とがんに関するよくある質問

自分の正確な人種的背景を知るにはどうすればいいですか?

まずはご両親や祖父母など、ご家族にルーツを尋ねてみることが第一歩です。

より詳細な情報を得るための遺伝子検査サービスも存在しますが、その結果の解釈には専門的な知識が必要です。

特にがんリスクなどの医療に関する情報を目的とする場合は、必ず医療機関で医師や遺伝カウンセラーに相談の上で行うようにしてください。

日本人なら胃がん検診だけを重点的に受ければ十分ですか?

いいえ、十分ではありません。

確かに日本人は伝統的に胃がんのリスクが高い民族ですが、食生活の欧米化やライフスタイルの変化により、大腸がんや乳がんといった欧米型のがんが急増しています。

胃がん検診はもちろん重要ですが、それだけでなく、国が推奨している大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの検診も、対象年齢になったら必ず定期的に受けることが大切です。

健康的な生活を送れば、遺伝的ながんリスクはなくなりますか?

遺伝的に受け継いだリスクが完全になくなるわけではありません。しかし、リスクを大幅に低減させることは可能です。

例えば、遺伝的に大腸がんのリスクが高い家系の人でも、禁煙、バランスの取れた食事、定期的な運動を心がけ、定期的に大腸内視鏡検査を受けることで、発症を予防したり、早期発見で根治したりする可能性を高めることができます。

遺伝的リスクが高い人ほど、予防的な生活習慣の重要性は増します。

遺伝子変異と家族歴

がんのリスクは、人種や民族的背景だけで決まるわけではありません。ご家族にがんになった方がいる場合、それは「家族歴」として、あなた自身のリスクを考える上で非常に重要な情報となります。

特定のがんが家族内で多発する背景には、共通の生活習慣だけでなく、「遺伝子変異」が関わっている可能性もあります。

次の記事では、がんの遺伝に焦点を当て、どのような場合に遺伝性のがんを疑うべきか、遺伝子検査やカウンセリングについて詳しく解説しています。

ご自身の家族について振り返りながら、さらに理解を深めていきましょう。

がんは遺伝する?家族歴と遺伝子検査

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