「小児がん」という言葉を聞くと、多くの人が不安を感じるかもしれません。
しかし、一口に小児がんと言っても、その種類は多岐にわたります。そして、子どもたちの未来を守るためには、がんを正しく「分類」し、その性質を正確に理解することが何よりも重要です。
この分類は、数ある治療法の中から、一人ひとりのお子さんにとって最も効果が期待できる方針を決定するための、いわば羅針盤の役割を果たします。
この記事では、小児がんの分類がなぜ大切なのか、どのような視点で分けられるのかを、白血病や固形がん、脳腫瘍などの具体的な種類を交えながら、一つひとつ丁寧に解説していきます。
小児がんと成人のがん – その根本的な違いとは何か
子どもに発生するがんと、大人に発生するがんは、同じ「がん」という名前がついていても、その成り立ちや性質に多くの違いがあります。
これらの違いを理解することは、小児がんの治療の特殊性を知る上で最初の重要な一歩となります。
発生する組織の起源から、生活習慣との関わり、そして治療への反応性まで、両者には明確な差異が存在します。
発生する組織の起源
最も根本的な違いは、がんが発生する細胞の種類にあります。成人のがんの多くは、長年にわたって外界からの刺激にさらされてきた臓器の表面を覆う「上皮細胞」から発生します。
これに対し、小児がんは体の深部にある骨や筋肉、神経といった、体を形作る過程にある未熟な「非上皮性」の細胞から発生することが多いのが特徴です。
小児がんと成人のがんの主な違い
| 項目 | 小児がん | 成人のがん |
|---|---|---|
| 主な発生組織 | 骨、筋肉、神経、血液など(非上皮性) | 胃、肺、大腸などの内臓の表面(上皮性) |
| 主な関連要因 | 特定の生活習慣との関連は少ない | 喫煙、食生活などの生活習慣 |
| 進行の速さ | 速い傾向 | 比較的ゆっくりなものが多い |
生活習慣との関連性
成人のがんでは、喫煙、食生活、飲酒といった長年の生活習慣が発症のリスクを高めることがよく知られています。
しかし、小児がんの場合、このような生活習慣が要因となることはほとんどありません。
多くは、細胞が分裂し増殖する過程で偶然起こる遺伝子の変化などが原因と考えられており、誰にでも起こりうるものです。
進行の速さと治療への反応
小児がんは、成人に比べて細胞分裂が活発な組織から発生するため、進行が速いという特徴があります。これは一見すると不利な点に思えるかもしれません。
しかし、その一方で、細胞増殖を標的とする化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療がよく効くという側面も持ち合わせています。
この性質が、小児がんの治療成績が向上してきた大きな理由の一つです。
なぜ「分類」が重要なのか – 治療方針を決定づける基準
がんの「分類」は、単なる名前分けではありません。それは、がんとの闘いに臨むための最も重要な戦略地図です。正確な分類がなければ、効果的な治療計画を立てることはできません。
診断の精度を高め、一人ひとりに合わせた治療を届け、今後の見通しを立てる上で、分類は中心的な役割を担います。
正確な診断の礎
がんの治療は、まず敵の正体を正確に知ることから始まります。分類は、そのがんがどのような細胞から発生し、どのような性質を持っているのかを明らかにするための作業です。
例えば、顕微鏡で見た細胞の形(組織型)が違えば、それは全く別の種類のがんであり、治療法も全く異なります。この最初の診断の精度が、その後の治療全体の成否を左右します。
治療計画の個別化
がんの分類情報に基づき、医師は治療計画を立てます。同じ小児の腹部にできた固形がんであっても、「神経芽腫」なのか「腎芽腫」なのかで、用いる薬の種類や手術のタイミングは大きく変わります。
さらに、同じ種類のがんであっても、進行度(ステージ)や遺伝子の特徴によって、治療の強さを調整します。
分類は、治療を個別化し、効果を最大化しつつ副作用を最小限に抑えるために必要です。
分類が治療計画に与える影響の例
| がんの種類 | 分類結果 | 主な治療法 |
|---|---|---|
| 急性リンパ性白血病 | 低リスク群 | 標準的な強度の化学療法 |
| 急性リンパ性白血病 | 高リスク群 | より強力な化学療法や造血幹細胞移植を検討 |
| 神経芽腫 | MYCN遺伝子増幅なし | 手術や比較的軽い化学療法 |
予後予測とリスク評価
分類は、治療後の経過、つまり「予後」を予測するためにも用いられます。
がんの組織型やステージ、特定の遺伝子異常の有無などから、再発しやすいタイプ(高リスク)か、比較的おとなしいタイプ(低リスク)かを評価します。
このリスク評価に基づいて治療の強度を決定することで、不必要な治療を避けたり、逆に再発を防ぐために強力な治療を行ったりといった判断が可能になります。
小児がんの分類に使われる3つの主な視点
小児がんを正確に理解するため、専門家は複数の異なる角度からがんを観察し、分類します。
主に、細胞の顔つきを見る「組織学的分類」、がんが発生した場所による分類、そして細胞の中の遺伝子や分子の特性を見る「分子的分類」という3つの視点が用いられます。
これらを総合的に判断することで、がんの全体像が明らかになります。
発生した組織に基づく「組織学的分類」
最も基本的で重要な分類法が、この組織学的分類です。手術や生検で採取した組織の一部を顕微鏡で詳しく観察し、がん細胞の形や並び方、由来する組織の種類を特定します。
病理医という専門の医師がこの診断を担当し、がんの確定診断を行います。
例えば、筋肉になるはずの細胞から発生していれば「横紋筋肉腫」、神経細胞に由来していれば「神経芽腫」といった具体的な診断名がつきます。
がんの発生部位による分類
がんが体のどこにできたかという視点も、単純ですが非常に重要です。なぜなら、発生部位によって現れる症状や、手術のしやすさ、放射線治療の影響などが大きく異なるからです。
大きく分けて、血液やリンパ組織のように全身に広がる「血液がん」と、特定の臓器や組織に塊を作る「固形がん」、そして脳や脊髄にできる「脳腫瘍」に大別されます。
- 血液がん(白血病、リンパ腫など)
- 固形がん(神経芽腫、腎芽腫、骨肉腫など)
- 脳腫瘍(髄芽腫、星細胞腫など)
遺伝子や分子の特性による「分子的分類」
近年の技術の進歩により、がん細胞の遺伝子やタンパク質といった分子レベルでの特徴を調べることが可能になりました。
これにより、顕微鏡では同じに見えるがんでも、遺伝子の異常によって性質が全く異なる複数のサブタイプに分けられることがわかってきました。
この分子的分類は、特定の遺伝子異常を狙い撃ちする「分子標的薬」の選択や、より正確な予後予測に直結する、新しい分類の柱です。
血液のがん – 白血病とリンパ腫の分類
血液のがんは小児がんで最も頻度が高く、全体の約40%を占めます。これらは主に、血液細胞を作る骨髄で発生する「白血病」と、リンパ球が腫瘍を作る「リンパ腫」に分けられます。
どちらも血液やリンパの流れに乗って全身に広がりうるため、手術ではなく化学療法を中心とした全身治療が基本となります。
小児がんの代表格「白血病」
白血病は、血液細胞の「赤ちゃん」である造血幹細胞ががん化し、異常な血液細胞(白血病細胞)が骨髄で無制限に増殖する病気です。
どの種類の血液細胞ががん化したかによって、大きく二つに分類されます。
急性リンパ性白血病 (ALL)
リンパ球になる途中の若い細胞ががん化したもので、小児白血病の約80%を占めます。
ALLと診断された後も、染色体や遺伝子の異常の有無、治療への反応性などに基づいて、再発のリスクが低い「標準リスク群」から高い「高リスク群」などに細かく分類し、それぞれに応じた強度の化学療法を行います。
急性リンパ性白血病(ALL)のリスク分類
| リスク群 | 判断基準の例 | 治療の考え方 |
|---|---|---|
| 標準リスク群 | 特定の良好な遺伝子異常がある | 標準的な化学療法で治癒を目指す |
| 高リスク群 | 特定の予後不良な遺伝子異常がある | より強力な化学療法や移植を検討 |
急性骨髄性白血病 (AML)
骨髄球(白血球の一種)になる途中の細胞ががん化したもので、小児白血病の約15%を占めます。
AMLも、細胞の形態や染色体異常によってさらに多くの種類に分類され、その分類によって治療法や予後が異なります。
ALLとは使う抗がん剤の種類が異なり、より強力な治療が必要となることが多いです。
リンパ系組織のがん「リンパ腫」
リンパ腫は、免疫を担うリンパ球ががん化し、主にリンパ節などのリンパ組織で増殖する病気です。
組織の中に特徴的な細胞が見られるかどうかで、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大別されます。
- ホジキンリンパ腫
- 非ホジキンリンパ腫
体の各部位にできる「固形がん」の種類と特徴
固形がんとは、血液がんとは対照的に、特定の臓器や組織に塊(腫瘍)を形成するがんの総称です。
小児の固形がんは、大人のそれとは異なり、胎児期に体を形成する過程で残った未熟な細胞から発生するものが多く見られます。神経芽腫や腎芽腫など、子どもに特有のものが代表的です。
交感神経系に由来する「神経芽腫」
神経芽腫は、交感神経のもとになる細胞から発生するがんで、主に乳幼児に見られます。腹部の副腎や、背骨に沿った交感神経節から発生することが多いです。
このがんの大きな特徴は、非常に多様な経過をたどる点です。自然に小さくなるものから、極めて進行が速く治療が難しいものまで様々です。
そのため、年齢、ステージ、組織型、そして特定の遺伝子(MYCN)の異常の有無などを組み合わせて厳密にリスク分類を行い、治療方針を決定します。
神経芽腫の国際リスク分類の主な要素
| 分類要素 | 具体例 |
|---|---|
| 診断時年齢 | 18カ月未満か以上か |
| 進行度(ステージ) | 限局しているか、転移があるか |
| MYCN遺伝子 | 増幅があるか、ないか |
腎臓に発生する「腎芽腫(ウィルムス腫瘍)」
腎芽腫は、小児の腎臓に発生するがんの中で最も多いものです。多くは片側の腎臓に発生し、お腹のしこりとして見つかります。腎芽腫の分類では、顕微鏡で見た組織の様子が非常に重要です。
大部分は治療が効きやすい「予後良好な組織型」ですが、一部に治療抵抗性の「予後不良な組織型」があり、後者の場合はより強力な治療が必要となります。
骨や筋肉のがん
思春期の子どもの骨や軟部組織(筋肉など)にも、特有のがんが発生します。これらは手足の痛みや腫れが最初の症状となることがあります。
骨肉腫とユーイング肉腫
骨肉腫は、骨を作る細胞ががん化したもので、膝や肩の周りの骨に発生しやすいです。ユーイング肉腫は、骨やその周りの軟部組織に発生する未熟な細胞のがんです。
これらは発生部位や症状が似ていても、組織学的には全く別のがんであり、用いる化学療法の種類も異なります。
横紋筋肉腫
横紋筋肉腫は、筋肉になるはずの未熟な細胞から発生するがんで、頭頸部、泌尿生殖器、手足など、体のあらゆる部位に発生する可能性があります。
発生部位や、顕微鏡で見た細胞の種類(胎児型、胞巣型など)によって細かく分類され、治療方針が決定されます。
脳や脊髄に発生する「脳腫瘍」の多様な分類
脳腫瘍は、小児の固形がんの中では最も頻度が高く、その種類は極めて多様です。
頭蓋骨という限られた空間内に発生するため、腫瘍が大きくなることで頭蓋内の圧力が上がり、頭痛や嘔吐などの特有の症状を引き起こします。
治療は、発生部位や組織型を考慮して、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせて行います。
小児脳腫瘍の組織学的分類
脳腫瘍の分類は、国際的にはWHO(世界保健機関)が定める分類が標準として用いられています。これは、腫瘍がどの細胞に由来するかに基づいており、100以上の種類に細分化されています。
小児で代表的なものには、脳を支えるグリア細胞から発生する「グリオーマ(星細胞腫など)」、小脳にできる「髄芽腫」、脳室の壁から発生する「上衣腫」などがあります。
代表的な小児脳腫瘍の種類
| 腫瘍名 | 主な発生部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 髄芽腫 | 小脳 | 小児で最も多い悪性脳腫瘍。進行が速い。 |
| 毛様細胞性星細胞腫 | 小脳、視神経など | 比較的進行が緩やかなことが多い(低悪性度)。 |
| 上衣腫 | 脳室 | 脳脊髄液の流れを妨げ、水頭症を起こしやすい。 |
悪性度(グレード)による分類
組織学的分類に加え、腫瘍の増殖する速さや周囲への広がりやすさを示す「悪性度(グレード)」も重要な分類基準です。
グレードは1から4までの4段階に分けられ、数字が大きくなるほど悪性度が高くなります。
グレード1は良性に近く、手術で完全に取りきれれば治癒も期待できますが、グレード4は非常に進行が速く、強力な治療を必要とします。
分子分類の導入
脳腫瘍の領域でも、遺伝子情報に基づく分子的分類の導入が進んでいます。
特に髄芽腫では、組織学的には同じに見えても、遺伝子発現のパターンによって予後が大きく異なる4つのサブグループに分けられることがわかりました。
この分子サブグループに応じて治療法を最適化する試みが、世界中で進められています。
がんの広がりを把握する進行度(ステージ)分類の意味
がんの「種類」の分類と並行して、がんが体の中でどれくらい広がっているかを示す「進行度(ステージ)」を決定することも、治療方針を決める上で極めて重要です。
ステージは、がんが最初に発生した場所(原発巣)にとどまっているのか、あるいは体の他の部分にまで広がっている(転移)のかを示します。
ステージ分類の基本的な考え方
多くの固形がんでは、ステージは主に3つの要素で評価されます。
- T因子-原発腫瘍の大きさや周囲への広がり
- N因子-近くのリンパ節への転移の有無と範囲
- M因子-離れた臓器への遠隔転移の有無
これらの組み合わせによって、一般的にステージI(早期)からステージIV(進行)までに分類します。
固形がんにおけるステージ分類の一般的な概念
| ステージ | 状態の目安 |
|---|---|
| I期 | 腫瘍が小さく、原発臓器に限局している |
| II期 | 腫瘍が大きくなったり、周囲の組織に広がり始めている |
| III期 | 近くのリンパ節への転移がある |
| IV期 | 肺や肝臓、骨など離れた臓器への遠隔転移がある |
がんの種類ごとに異なるステージ分類
ただし、全ての小児がんにこの考え方が当てはまるわけではありません。例えば、白血病は最初から全身の病気と考えるため、一般的なステージ分類は用いません。
また、神経芽腫や腎芽腫、リンパ腫などでは、それぞれのがんの特性に合わせて作られた独自の進行度分類やリスク分類を用いて、より詳細に治療方針を決定します。
ステージ診断が治療法選択に与える影響
ステージは治療法の選択に直接結びつきます。ステージIやIIのような早期のがんであれば、手術で腫瘍を取り除くことが治療の中心となります。
一方、ステージIIIやIVのように進行している場合は、手術だけでは治癒が難しいため、化学療法や放射線治療を組み合わせた総合的な治療(集学的治療)が必要です。
当然ながら、ステージは生存率にも大きく影響する重要な因子です。
遺伝子情報に基づく分類 – より個人に合わせた治療へ
これまでの分類に加えて、近年ではがん細胞が持つ遺伝子の情報を基にした分類が急速に重要性を増しています。
がんゲノム医療の進歩により、一人ひとりの患者さんのがんの遺伝子異常を特定し、それに基づいた、より個人に合わせた治療(個別化医療)の提供が可能になりつつあります。
特定の遺伝子異常と治療薬
がん細胞の中には、その増殖の「スイッチ」となっている特定の遺伝子異常が見つかることがあります。そのスイッチだけを狙ってOFFにする薬が「分子標的薬」です。
この薬が効果を発揮するのは、標的となる遺伝子異常を持つがんだけです。そのため、治療前に遺伝子検査を行い、薬の標的があるかどうかを確認することが重要になります。
がん遺伝子パネル検査
従来は一つの遺伝子を一つずつ調べていましたが、「がん遺伝子パネル検査」では、一度の検査で数百のがん関連遺伝子を同時に調べることができます。
この検査により、標準的な治療が効きにくくなった場合や、まれな種類のがんにおいて、新たな治療薬の候補が見つかる可能性があります。
小児がんの領域でも、この検査の活用が進んでいます。
遺伝子情報からわかること
- 治療薬の選択に役立つ遺伝子異常の有無
- 治療後の経過(予後)に関する情報
- がんになりやすい体質(遺伝性がん症候群)の可能性
遺伝子情報がもたらす予後予測の精度向上
遺伝子情報は、治療薬の選択だけでなく、予後の予測にも役立ちます。例えば、急性リンパ性白血病や神経芽腫では、特定の遺伝子異常の有無が再発のリスクを大きく左右することがわかっています。
こうした遺伝子情報をリスク分類に組み込むことで、より正確に予後を予測し、個々の患者さんに合わせた治療の強弱を判断することが可能になります。
正確な診断と分類が拓く、子どもたちの未来への道
ここまで見てきたように、小児がんの分類は非常に多角的で、専門的な知識を要します。
しかし、この複雑な分類を正確に行うことこそが、一人ひとりのお子さんを救い、未来へとつなぐための最も確実な道筋となります。
そのためには、多くの専門家による協力体制と、新しい治療法を開発していくための取り組みが欠かせません。
チーム医療による総合的な診断
正確な分類と診断は、一人の医師の力だけで成し遂げられるものではありません。
小児がんを専門とする医師、診断の要となる病理医、画像からがんの広がりを評価する放射線診断医、そして外科医や放射線治療医など、様々な分野の専門家が協力し、それぞれの知見を持ち寄って議論する「チーム医療」によって、初めて最適な診断と治療方針が導き出されます。
分類に基づいた臨床試験への参加
小児がんの治療成績は、これまで多くの臨床試験(新しい治療法の効果や安全性を確かめる研究)を積み重ねることで向上してきました。
現在行われている臨床試験も、がんの組織型やステージ、遺伝子情報といった詳細な分類に基づいて、対象となる患者さんを定めています。
臨床試験への参加は、ご本人にとってより良い治療の選択肢となる可能性があると同時に、未来の子どもたちのための治療開発にもつながります。
希望をつなぐための情報理解
保護者の方々が、お子さんのがんの診断名や分類について正しく理解することは、治療の過程で非常に大切です。
医師からの説明を十分に理解し、わからないことは質問し、納得した上で治療を選択することが、親子でがんに立ち向かう力となります。
正確な分類という土台の上に、医療者と家族が協力して治療を進めていくこと、それが子どもたちの輝く未来を拓く鍵となるのです。
よくある質問
小児がんの分類に関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 小児がんの分類は一度決まったら変わりませんか?
-
基本的に、最初に診断されたときのがんの種類(組織型など)が変わることはありません。
しかし、治療の過程でがん細胞の性質が変化したり、再発した際に以前とは異なる遺伝子異常が出現したりすることがあります。
そのため、再発時などには、改めて組織を採取して検査を行い、その時点でのがんに最も適した治療法を検討することがあります。
- 分類によって生存率はどのくらい変わりますか?
-
がんの生存率は、がんの種類、組織型、進行度(ステージ)、遺伝子情報、診断時の年齢、治療への反応性など、非常に多くの要因によって決まります。
そのため、「この分類だから生存率は何%」と一概に言うことはできません。
詳細な分類は、あくまでも個々の患者さんの状態をより正確に把握し、統計的なデータに基づいた予後予測の参考にするためのものです。
お子さんの具体的な見通しについては、主治医とよく話し合うことが大切です。
- まれな種類の小児がんでも、きちんと分類できますか?
-
はい、可能です。小児がんの中には、年間数人しか発生しないような非常にまれな種類も存在します。
そうした場合でも、小児がんの拠点病院などの専門施設では、国内外の多くの症例や研究データを基にした診断基準を持っています。
経験豊富な病理医による診断や、遺伝子パネル検査などを駆使して、できる限り正確な分類を目指します。必要に応じて、他の施設の専門家に意見を求めることもあります。
小児がんの診断・分類に関する相談先
相談先 概要 小児がん拠点病院 専門的な診断・治療体制が整っている病院。 がん相談支援センター 全国のがん診療連携拠点病院に設置。療養上の相談が可能。
小児がんの中には、生まれつき特定の遺伝子に変化があることが原因で、がんを発症しやすい体質(遺伝性がん症候群)が背景に隠れている場合があります。
例えば、ご家族に若くしてがんになった方が多い場合や、お子さんのがんが非常にまれな種類である場合などが考えられます。
遺伝的な要因について知ることは、ご本人だけでなく、ごきょうだいや他のご家族の将来の健康管理にも役立つ可能性があります。
もし、がんの遺伝に関してご心配な点があれば、主治医にご相談ください。
関連情報として「遺伝性がん症候群」についての詳しい解説記事もございますので、関心のある方はぜひご覧ください。
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