私たちの体には、がん細胞という異変に立ち向かうための高度な防御網が備わっています。この防御網の核となるのが、性質の異なる二つの免疫システムです。
一方は即座に敵を発見して攻撃を仕掛け、もう一方は敵の情報を詳細に分析して強力な一撃を放ちます。
これら二つのシステムが手を取り合い、情報を共有することで、はじめてがん細胞という手強い相手に対抗できるのです。
この記事では、がんワクチンの効果を引き出すために欠かせない、免疫細胞たちの緊密な連携の姿を丁寧に紐解きます。
免疫システムにおける二つの防衛線が果たす役割
体内の健康を維持している免疫システムは、二つの防衛線が協調することで成立しています。一つは生まれつき備わっている自然免疫であり、もう一つは後天的に学習する獲得免疫です。
双方は役割が明確に分かれていますが、独立して機能するものではありません。互いの長所を活かしながら情報を共有して、効率的に異物を排除する体制を整えます。
がん細胞に対抗する場合、この二つの連携が円滑に行われることが重要です。まずはそれぞれの基本的な性質を整理しましょう。
瞬時に反応する自然免疫の即応性
自然免疫は、体内に侵入した異物を真っ先に発見する、パトロール部隊の役目を担っています。相手が誰であるかを詳しく分析する前に、異常を察知して攻撃を開始します。
このシステムは、反応速度が極めて速い点が大きな強みです。異常が発生したその瞬間に現場へ駆けつけ、被害の拡大を食い止める初動対応に優れています。
パトロールを行う代表的な細胞には、マクロファージや好中球などが存在します。彼らは体中の組織を巡回し、健康な細胞とは異なる特徴を持つがん細胞を敏感に察知します。
がん細胞がどれほど巧妙に偽装しても、自然免疫の細胞たちはそのわずかな違和感を見逃しません。この初期段階の攻防が、病気の進行を遅らせるための鍵を握っています。
特定の敵を狙い撃つ獲得免疫の精密性
獲得免疫は、特定の敵に合わせてオーダーメイドの攻撃を仕掛ける、特殊部隊のような存在です。相手の情報を詳細に学習し、その敵だけに有効な武器を作り出す性質を持っています。
反応を開始するまでに数日から一週間程度の時間を要しますが、その破壊力は極めて強力です。精密な狙い撃ちを行って、健康な細胞を傷つけずにがん細胞のみを排除します。
この部隊の主役は、T細胞やB細胞と呼ばれるリンパ球です。彼らは一度戦った相手の目印を記憶し、同じ敵が再び現れた際、迅速に排除する能力を備えています。
がん細胞の特定の情報を教え込むと、長期間にわたる警戒態勢を敷くことが可能です。この記憶という特性こそが、がんワクチンの理論的な根拠となっています。
二つのシステムが共鳴する意義
二つのシステムが共鳴し合って、免疫システムは強固な防衛網へと昇華します。自然免疫だけでは、増殖スピードの速いがん細胞を完全に取り逃がす恐れがあります。
反対に獲得免疫だけでは、敵の情報を得る前にがん細胞から攻撃を受けてしまう危険性があります。双方が情報のバトンを繋ぐことで、隙のない防衛体制を構築できるのです。
この協力体制があるからこそ、私たちは日々発生するがん細胞の芽を摘み取れています。連携の質が高まるほど、治療の成果も比例して向上します。
基本的な特徴の対比
| 区分 | 反応速度 | 攻撃対象 |
|---|---|---|
| 自然免疫 | 非常に早い | 広範囲の異物 |
| 獲得免疫 | 遅い(数日〜) | 特定の標的 |
| 連携時 | 総合的に向上 | 情報の共有 |
自然免疫ががん細胞を察知し攻撃を開始する仕組み
がん細胞との戦いにおいて、最初の一撃を放つのは自然免疫の細胞たちです。彼らが異常を察知しなければ、強力な援軍である獲得免疫の出番はやってきません。
がん細胞は遺伝子が傷つくことで、正常な細胞とは異なるタンパク質を表面に出し始めます。自然免疫は、この表面的な異物感を逃さず捉え、排除のための行動に移ります。
この迅速な初動対応が、がん細胞の増殖を封じ込めるための生命線となります。現場で起きている具体的な働きを見ていきましょう。
マクロファージが異物を発見し排除する初動
マクロファージは、体内のあらゆる場所に存在し、異物を飲み込んで消化する大食漢の細胞です。がん化し始めた細胞を非自己として認識し、積極的に取り込みます。
この食作用によってがん細胞を物理的に分解し、組織の清掃を行います。
しかし、彼らの真の価値は、単なる掃除だけではありません。がん細胞を分解する過程で、情報伝達物質を放出して周囲に警告を発します。
この信号を受け取った他の免疫細胞たちが、次々と戦場に集結し始めます。
マクロファージは自身も情報を保持し、後続の部隊へ伝えるための準備を整えます。この小さな発見の積み重ねが、大きな防衛戦の幕開けとなるのです。
NK細胞による異常細胞のパトロール活動
ナチュラルキラー細胞は、名前の通り常に全身を巡回している殺し屋のような存在です。彼らは誰の助けも借りずに、単独でがん細胞を攻撃できる強力な能力を持っています。
攻撃対象を選ぶ基準は、細胞の表面に現れる目印の有無です。がん細胞が免疫の攻撃を逃れるために目印を隠しても、その不自然さを感知して攻撃します。
標的を見つけると瞬時に接着し、細胞を破壊するためのタンパク質を注入します。この働きによってがん細胞は内部から崩壊し、速やかに排除されます。
獲得免疫が準備を整えるまでの時間を稼ぐために、彼らの活動は極めて重要です。がん細胞がまだ少数であるうちに叩いて、深刻な事態を未然に防ぎます。
炎症反応が周囲の免疫細胞に送る合図
自然免疫の細胞たちががんと戦い始めると、その場所には炎症と呼ばれる反応が起こります。これは不快な現象ではなく、戦いを有利に進めるための防御反応です。
戦場の環境を整えるために、さまざまな化学物質が放出されます。血流が増えて組織が腫れると、遠くにいる免疫細胞が血管から移動しやすくなります。
この場には、専門性の高い細胞である樹状細胞なども集まってきます。炎症によって生じた熱や物質は、眠っていた細胞たちを覚醒させるアラームとなります。
体はこの反応を通じて、特定の部位で戦いが起きている事実を認識します。自然免疫が作り出す熱気こそが、獲得免疫という強力な援軍を呼び出すための合図です。
パトロール部隊の構成員
- マクロファージ:全身に分布し、敵を食べて情報を発信する。
- NK細胞:事前教育なしで、異常細胞を即座に破壊する。
- 好中球:血液中に多く存在し、初期の強力な排除を担う。
獲得免疫ががん細胞の特異的な情報を記憶する特性
獲得免疫は、がん細胞の表面にある固有の目印を正確に学習して攻撃を実行します。一度学習した情報は長期間にわたって記憶され、再発を防ぐための監視役となります。
広域的な対応を行う自然免疫に対し、こちらは特定の敵を徹底的に追い詰めるのが得意です。その精密な攻撃は、体内の安全を維持するために欠かせない力です。
高度な専門性を持つ細胞たちがどのように機能するのか、その実態を解説します。学習と記憶がもたらす効果は、計り知れません。
キラーT細胞が異常細胞を直接攻撃する威力
キラーT細胞は、獲得免疫における実行部隊の筆頭です。がん細胞特有のタンパク質の断片を認識し、その目印を持つ相手だけを狙い撃ちます。
標的に接触すると、細胞の膜に穴を開ける物質や、自死を誘導する物質を放出します。この攻撃によって、がん細胞は確実に仕留められることになります。
非常に精度の高い攻撃を行うため、隣接する正常な細胞を傷つける心配がありません。この細胞が十分に活性化されることが、がん治療の成功を左右します。
訓練されたキラーT細胞は、がん細胞がどんなに増殖しても対抗し続けます。一度特定の標的を覚えた彼らは、体内のどこへ移動しても敵を探し出します。
ヘルパーT細胞による戦術の指令と統率
ヘルパーT細胞は、自ら手を下すことは少ないですが、システム全体を指揮する司令塔です。樹状細胞から提示された情報を受け取ると、各部隊へ指令書を送ります。
この司令書はサイトカインと呼ばれ、キラーT細胞やB細胞を奮起させる役割を担います。彼らの統率がなければ、各部隊はバラバラに動き、十分な戦力を発揮できません。
戦況に応じてどの部隊を強化すべきかを判断し、反応の方向性を決定します。
がん治療においては、攻撃的な部隊への分化を促すことが重要となります。適切な指示が飛ぶと、免疫系は疲弊せずに効率的にがんを攻め立てます。
この司令塔の存在こそが、大規模な防衛反応を支える基盤となっています。
B細胞が作る抗体ががん細胞を封じ込める働き
B細胞は、がん細胞にぴったりと貼り付く抗体という武器を作る能力を持っています。抗体は体液に乗って全身を駆け巡り、がん細胞の特定の部位に結合します。
この結合が、がん細胞が栄養を取り入れるのを妨害する役割を果たします。さらには、増殖のための信号を遮断して、がんの勢いを弱めます。
抗体が貼り付いたがん細胞は、他の免疫細胞にとって非常に見つけやすい存在になります。この印が付けられるため、自然免疫の細胞も攻撃に参加しやすくなるのです。
このように、B細胞は直接的な攻撃だけでなく、全体の効率を向上させる助けも行います。ワクチンによって抗体産生能力が高まれば、網羅的な監視網が完成します。
精鋭部隊の役割分担
| 担当細胞 | 主な役割 | 具体的な効果 |
|---|---|---|
| キラーT細胞 | 実力行使 | がん細胞の物理的な破壊 |
| ヘルパーT細胞 | 全体指揮 | 他細胞への活性化指令 |
| B細胞 | ミサイル製造 | 抗体による標的の無力化 |
樹状細胞が橋渡し役として情報を伝達する重要性
性質の異なる二つの免疫システムを繋ぐ架け橋が、樹状細胞です。この細胞は敵を捕らえながら、その情報を獲得免疫に伝える特別な能力を持っています。
樹状細胞が機能しなければ、獲得免疫は攻撃すべき標的を知ることができません。まさに、情報のバトンを繋ぐアンカーとしての重責を担っています。
がんワクチンの研究においても、この細胞をいかに活性化させるかが重要です。情報の伝達がどのように行われるのか、詳細な流れを紐解いていきましょう。
がんの目印を正確に読み取る情報収集能力
樹状細胞は、木の枝のような突起を伸ばして周囲を探り、異物を効率的に捕らえます。がん細胞の破片やタンパク質を取り込み、それを体内で細かく分解します。
単に片付けるだけでなく、がん細胞に特有の構造を精緻に分析するのが彼らの仕事です。この情報収集の精度が、その後の攻撃部隊の質を大きく決定づけます。
正確な情報を読み取って、樹状細胞は敵が危険であることを確信します。この変化に伴い、自身も情報を伝えるための成熟した状態へと進んでいきます。
情報の詰まったカタログを携えたような状態で、次のステージへと向かいます。初期の情報処理能力こそが、的確な攻撃を可能にするための確かな土台です。
リンパ節へ移動して指令を出す情報伝達能力
がん細胞の情報を手に入れた樹状細胞は、速やかにその場を離れます。リンパ管を通り、多くの免疫細胞が待機しているリンパ節へと移動を開始します。
リンパ節では、まだ敵を知らないT細胞たちが、指令が届くのを待っています。ここで樹状細胞は、自身の表面にがんの情報を載せてT細胞に提示します。
この抗原提示と呼ばれる瞬間こそが、免疫の連携における最も重要な局面です。
T細胞に対し、体内で増えている敵を具体的に教え、攻撃の指示を出します。この働きによってT細胞は眠りから覚め、がん細胞と戦う戦士へと進化します。
情報の交差点であるリンパ節で、確実にタスキが繋がれることになります。
未熟なT細胞を戦士へ変える教育訓練の役割
樹状細胞の役目は情報の伝達に留まらず、T細胞に対する教育も行います。どのような攻撃手法をとり、どの程度強く反応すべきかを細かく指導します。
適切な教育を受けたT細胞は、自分の体を傷つけずに、敵だけを追い詰められます。この訓練のプロセスは非常に繊細で、送られる信号がT細胞の運命を決めます。
がんワクチンの多くは、この細胞に人為的に情報を与え、教育能力を高める狙いがあります。優れた教師が体内の戦士を育てることで、がんに対する耐性を築けます。
教育が成功すれば、体の中には精鋭部隊が溢れ、がん細胞の隙を突きます。一連の指導こそが、長期的な健康を守るための揺るぎない礎となるでしょう。
情報のバトンタッチ
- 分析:がん細胞の特徴を正確に解析して、攻撃の標的を定める。
- 移動:戦場からリンパ節へ移動し、待機中のT細胞に接触する。
- 提示:T細胞にがんの情報を渡し、攻撃のスイッチをオンにする。
自然免疫と獲得免疫が共同でがんを封じ込める流れ
がん細胞を封じ込めるには、二つのシステムが重層的に重なる連続的な流れが必要です。この防衛反応は、一つの出来事が次の反応を引き起こすドミノ倒しに似ています。
個々の細胞がバラバラに動くのではなく、大きな流れとして機能することが理想的です。このうねりががん細胞を圧倒し、体内からの排除を実現します。
時間の経過とともに深まっていく連携の全容を確認しましょう。最初の一歩から再発防止まで、途切れることのない物語が存在します。
最初の一撃から始まる連携の開始点
がんが発生した直後、まずは自然免疫の細胞たちが異常を察知して攻撃を開始します。最初の一撃でがん細胞が破壊されると、その中から成分が漏れ出します。
この破片こそが、次なる段階へ進むために必要な貴重な手がかりとなります。自然免疫ががんにダメージを与えて正体を暴くのが、全体のスタート地点です。
この局面では、放出された物質が周囲に警戒態勢を呼びかけることになります。これによって、普段は見逃してしまうような微細な異常も、網にかかりやすくなります。
がん細胞が守りを固める前に、自然免疫が力強く踏み込むことが重要です。最初の火を絶やさない姿勢が、その後の大きな勝利への道筋を作ります。
獲得免疫を呼び覚ますための信号増幅
自然免疫ががん細胞の破片を回収し、情報を運ぶことで獲得免疫のスイッチが入ります。ここで重要になるのが、情報の質と量のバランスです。
情報の精度が低いと、獲得免疫は十分な威力を発揮できません。自然免疫の細胞たちが活発に動き、信号を送り続けることで、対応が本格化します。
一度活性化した部隊は、さらなる援軍を呼ぶために強力な物質を放出します。その作用が、再び自然免疫を刺激するという、好ましい循環を生み出します。
相乗効果によって、体内の免疫力は当初の数倍から数十倍へと膨れ上がります。この巨大な勢いががん細胞を圧倒し、組織からの排除を加速させていきます。
免疫記憶が再発を防ぐための長期監視体制
がん細胞との戦いが終結した後も、免疫システムの仕事が完全に終わることはありません。獲得免疫の一部はメモリー細胞として、体内に残り続けます。
今回の敵の特徴を長期間にわたって記憶し、再発を防ぐための監視を続けます。これが免疫記憶であり、将来の再発に対処するための最強の盾となります。
再び同じがん細胞が現れても、今度は迅速に攻撃が発動するようになります。自然免疫の初動を待つことなく、記憶に基づいた狙い撃ちが実行されます。
強固な長期監視体制を築くことこそ、がん治療における究極の到達点です。持続的な安心感は、この連携の記憶によって守られていると言い換えられます。
封じ込めの三段階
| 段階 | 主な活動内容 | 期待される結果 |
|---|---|---|
| 初期 | 自然免疫による攪乱と破壊 | 情報の収集と警戒の開始 |
| 中期 | 獲得免疫の動員と総攻撃 | がん細胞の徹底的な排除 |
| 後期 | 情報の記憶と長期的な監視 | 再発に対する強固な抑止 |
がんワクチンの効果を高めるために必要な連携の強化
がんワクチンは、体内の免疫連携を意図的に作り出し、その精度を高める治療法です。二つのシステムがより効率よく対話できるように、さまざまな工夫が凝らされています。
この連携がいかにスムーズに行われるかが、治療の成否を分けることになります。個々の免疫状態に合わせて、適した方法を模索することが今後の主流となるでしょう。
ワクチンがどのようにして守る力を引き出すのか、その働きに注目します。強化された連携が、がん細胞を追い詰める確かな力になります。
人為的にがんの目印を教えるワクチンの狙い
がんワクチンの主な役割は、獲得免疫に敵の顔写真を提示することです。がん細胞は元々自分の細胞であるため、免疫の攻撃を逃れやすい特性があります。
そこで、ワクチンによって特有のタンパク質を注射し、強制的に情報を教え込みます。自然な流れでは見逃されてしまうような敵に対し、攻撃のスイッチを入れます。
このとき、どの目印を選択するかが非常に重要な要素となってきます。共通の目印だけでなく、個別の変異を狙うことで、攻撃の精度を格段に向上させます。
正確な情報を得たT細胞は、迷わずがん細胞へと突進していきます。この的中率の高さが、ワクチンの効果を最大化するための大きな根幹です。
自然免疫を刺激する物質を併用する利点
目印だけを体に入れても、免疫系が緊急事態と判断しなければ十分な反応は起きません。そのため、アジュバントと呼ばれる刺激物質を併用するのが一般的です。
アジュバントは自然免疫を強力に叩き起こし、警戒レベルを最大に引き上げます。この刺激があるからこそ、情報の伝達が滞りなく、かつ速やかに行われるのです。
樹状細胞が成熟し、T細胞を活性化させる能力が飛躍的に高まる効果も期待できます。周囲の環境も、攻撃を優先する戦闘モードへと切り替わっていきます。
自然免疫への強い働きかけがあるため、獲得免疫という精鋭を呼び出すことが可能です。ワクチンの効果を下支えする、なくてはならない重要なパートナーです。
全身の免疫網を動員する包括的なアプローチ
がんは局所的な問題ではなく、全身の免疫バランスが深く関わっている病気です。がんワクチンは特定の部位だけでなく、全身の防御網を活性化させることを目指します。
連携が強化された細胞たちは血流に乗り、目に見えない転移の芽も探し出します。包括的な働きかけによって、体内をがんが育ちにくい環境へと変えていきます。
近年では他の薬剤と組み合わせて、連携の障害となるブレーキを外す試みも進んでいます。攻守のバランスを整える多角的な戦略が、治療の幅を広げています。
全身の力を結集してがんに立ち向かう体制を整えることが大切です。連携の質を高めることが、現代のがん治療が掲げる一つの理想像といえます。
ワクチンの構成要素
- がん抗原:敵の顔を特定し、攻撃部隊に正しい情報を与える。
- アジュバント:自然免疫を刺激し、攻撃のスイッチを強く押す。
- 併用薬:免疫のブレーキを解除し、連携が途絶えないようにする。
免疫機能の低下を防ぎがんを寄せ付けない体作り
優れた治療法があっても、土台となる免疫細胞が元気に活動していなければなりません。二つのシステムの連携を維持するには、日々の生活習慣による手入れが重要です。
体は過ごし方次第で、免疫細胞の数や活動能力が刻一刻と変化していきます。基本的な生活の積み重ねこそが、強固な防衛網を支える最大の力となります。
がん細胞を寄せ付けない体を作るために、何ができるのかを考えましょう。日常のケアが、未来の健康を守るための最も確実な投資になります。
栄養バランスが免疫細胞の質を左右する現実
免疫細胞はタンパク質から作られており、燃料となるビタミンも欠かせません。亜鉛やビタミンDなどの栄養素は、細胞の製造や調整を助ける大切な役割を担います。
偏った食事は製造ラインを止め、連携を弱めてしまう直接的な原因になり得ます。多種多様な食材を摂ることは、複雑なシステムを維持するための燃料供給です。
腸内環境を整える工夫も、全身の力を高めるために極めて有効な手段です。多くの免疫細胞が集まる腸を健やかに保つと、正しい教育が常に行われます。
発酵食品や食物繊維を積極的に取り入れ、内側から細胞を元気にしましょう。腸の健康は、免疫という軍隊の訓練基地を整備することと同義なのです。
適度な運動が巡りを改善し免疫を活性化する
細胞たちが体内を自在に移動するためには、巡りがスムーズであることが条件です。適度な運動は、全身の血流を促し、細胞を隅々まで行き渡らせる手助けをします。
心地よい運動はストレスを和らげ、自然免疫の攻撃力を高める効果が期待できます。体を動かすとパトロールの網が密になり、異物の早期発見に繋がります。
ただし、過酷すぎるトレーニングは逆に負担となり、一時的に力を下げる場合があります。継続できる程度の運動を楽しみながら行うのが、最も効果的な方法です。
筋肉を動かして体温が上がれば、各細胞の反応速度も自然と向上します。巡りの良い体を作る習慣が、がん細胞にとって居心地の悪い環境を作ります。
睡眠と休息が免疫系の回復を助ける時間
眠っている間、体内では免疫システムのメンテナンスが集中的に行われています。損傷した細胞の修復や、新しい細胞の生成がこの時間に進んでいきます。
慢性的な不足は自律神経を乱し、細胞同士の連携を混乱させる大きな要因です。質の高い睡眠を確保することは、翌日の戦いに備えて装備を整える儀式です。
また、ストレスを溜め込まず、心穏やかに過ごす時間も無視できません。過度なストレスは、免疫を抑制する物質を増やしてしまうことが分かっています。
リラックスする時間は、副交感神経を優位にして細胞の活力を高めます。休息を大切にすることが、あなたを守る細胞たちへの最良のプレゼントになるでしょう。
健康な土台を作る習慣
| 項目 | 心がけること | 効果 |
|---|---|---|
| 食事 | バランスよく多品目 | 細胞の材料とエネルギー補給 |
| 運動 | 散歩などの有酸素運動 | 血流促進とパトロール網の強化 |
| 休息 | 十分な睡眠と笑い | システムの修復と過剰反応の抑制 |
よくある質問
- 自然免疫と獲得免疫ではどちらの方が重要ですか?
-
どちらか一方が欠けても、免疫システムは正常に機能しません。自然免疫は迅速な初動と敵の情報収集を担い、獲得免疫はその情報を元に精密な攻撃を実行します。
両者の密接な連携があって初めてがんを封じ込められるため、両方とも同じように重要です。がんワクチンにおいても、この二つの力を同時に引き出すことが求められます。
- 年齢を重ねると免疫の連携能力は下がってしまうのでしょうか?
-
加齢に伴い、免疫細胞の機能が徐々に変化する現象は一般的に見られます。これを免疫老化と呼び、特に新しい情報を学習する力が緩やかに低下することがあります。
しかし、規則正しい生活や適切な医療的介入によって、その影響を最小限に抑えることは可能です。現代の医療は、年齢を問わず免疫の力を有効に活用できる方法を常に探求しています。
- がんワクチンを打てば自然に免疫が戦ってくれるようになりますか?
-
がんワクチンは、体内の細胞に敵の情報を教え、戦い方を訓練するための手段です。投与することで、眠っていた細胞が目覚めて攻撃の準備を整える効果が期待できます。
ただし、単独ですべてを解決するのではなく、他の治療と併用して総合的に支えるのが一般的です。本来持っている力を最大限に引き出すための、強力なサポート役といえます。
- ストレスは具体的にどうやって免疫の連携を邪魔するのですか?
-
強いストレスを感じると、体内でホルモンのバランスが崩れ、細胞の動きを鈍らせる物質が増えます。この状態が続くと、細胞同士の情報交換がうまくいかなくなり、攻撃のタイミングが遅れます。
心穏やかに過ごす時間は、免疫システムが正常に指令を出すために不可欠な環境整備です。自分なりのリラックス方法を持つことが、連携を維持する秘訣になります。
- 免疫が活発になりすぎて自分を攻撃することはありませんか?
-
健康な免疫系には、自分自身を攻撃しないためのブレーキ機能が備わっています。これは自己寛容と呼ばれ、教育の過程で自分の組織を攻撃する細胞を排除する仕組みです。
がんワクチンなどの治療中には、専門の医師がこのバランスを慎重に管理します。適切な管理下で行われる治療は、高い安全性を維持しながら敵だけを叩くよう設計されています。
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