がんは、日本人にとって非常に身近な病気ですが、その多くは早期に発見し対応することで、治療の選択肢が広がり、体への負担を抑え、良好な経過を期待できるようになります。
しかし、「どの検査を受ければいいのかわからない」と悩む方も少なくありません。
この記事では、がんの早期発見における二つの主要な方法である「画像検査」と「血液検査」に焦点を当て、それぞれの種類、特徴、費用、精度、メリット、デメリットを詳しく解説します。
なぜ「がん」は早期発見が重要なのか
がん対策において「早期発見・早期治療」という言葉をよく耳にします。これは、がんが進行する前に見つけることが、治療結果に極めて大きな影響を与えるからです。
早期であればあるほど、体への負担が少ない治療法を選べる可能性が高まり、治療後の生活の質(QOL)を維持しやすくなります。
がんの進行と生存率の関係
がんは、発生した場所(原発巣)で増殖し、やがて周囲の組織に広がり(浸潤)、リンパ液や血液の流れに乗って他の臓器へ移動(転移)します。
がんの進行度合いは「ステージ(病期)」で分類し、一般的にステージが進むほど治療が難しくなります。
早期がん(ステージIなど)で発見した場合、5年相対生存率(がんと診断された人が5年後に生存している割合)は多くの部位で90%を超えますが、進行がん(ステージIVなど)になると、この数値は大幅に低下します。
つまり、がんが小さく、転移していない「早期」の段階で発見することが、命を守る上で非常に重要です。
早期発見による治療選択肢の拡大
がんが早期に発見されると、治療の選択肢が大きく広がります。
例えば、胃がんや大腸がんでは、粘膜内にとどまっている早期がんであれば、内視鏡を使って体への負担が少ない切除術(EMRやESD)が可能な場合があります。
これは、開腹手術に比べて入院期間が短く、術後の回復も早いというメリットがあります。
体への負担が少ない治療の可能性
進行がんになると、手術(広範囲の切除)、放射線治療、抗がん剤治療(化学療法)などを組み合わせた集学的な治療が必要になることが多く、治療に伴う身体的・精神的な負担も大きくなりがちです。
早期発見により、内視鏡治療や腹腔鏡手術、縮小手術など、臓器の機能や形態を温存できる可能性が高まります。これは、治療後の生活の質を高く保つ上で、計り知れないメリットとなります。
がん早期発見の二大アプローチ – 画像検査と血液検査
がんの早期発見を目指す検査には、大きく分けて二つの主要な方法があります。一つは「画像検査」で、体の中を視覚的に捉えて異常を探します。
もう一つは「血液検査」で、血液中の特定の物質(手がかり)を測定して、がんの存在リスクを評価します。これらは互いに補完しあう関係にあります。
画像検査とは – 体の中を「見る」技術
画像検査は、X線、磁気、超音波、内視鏡などを用いて、体内の臓器や組織の「形」や「状態」を画像化する技術です。
健康診断や人間ドックで広く行われる胸部X線(レントゲン)検査や胃のバリウム検査、より詳しく調べるためのCT検査、MRI検査、内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)検査などがこれにあたります。
がんによる「しこり(腫瘤)」や「形の異常」を直接的に見つけることを得意とします。
血液検査とは – 体液から「手がかり」を探す技術
血液検査は、採血によって得られた血液を分析し、がん細胞が存在することによって増減する物質(腫瘍マーカーなど)や、体のがんに対する反応(免疫など)、あるいはがん細胞そのものやその一部(遺伝子など)を探す検査です。
画像検査のように直接「形」を見ることはできませんが、全身の状態を反映する情報を得られる可能性があります。
特に腫瘍マーカー検査は、特定のがんのスクリーニングや、治療後の経過観察に用いられます。
主な検査方法の分類
| 検査アプローチ | 主な検査方法(例) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 画像検査(形を見る) | CT、MRI、内視鏡、PET、超音波 | がんの「場所」や「大きさ」「形状」を捉える。 |
| 血液検査(印を探す) | 腫瘍マーカー、遺伝子検査(一部) | がん細胞が産生する物質や遺伝子変異などを検出する。 |
「形」で探す画像検査 – CT・MRI・内視鏡でわかること
画像検査は、がんの早期発見において中心的な役割を果たします。
特にCT、MRI、内視鏡、そしてPET検査は、それぞれ異なる原理と特徴を持ち、がんの種類や場所に応じて使い分けられます。
CT検査(Computed Tomography)
CT検査は、X線を使って体を多方向から撮影し、コンピュータで処理して体の「輪切り(横断面)」画像を作成する検査です。
短時間で広範囲を撮影でき、特に肺、肝臓、膵臓、腎臓など、動きの影響を受けやすい臓器や、骨に囲まれた頭部の検査に優れています。
CT検査のメリットとデメリット(リスク)
メリットは、検査時間が比較的短いこと、MRI検査が受けられない人(体内に金属がある人など)でも受けられる場合があることです。肺がんの早期発見(特に胸部低線量CT)などで有用性が示されています。
一方、デメリット(リスク)としては、X線による被ばく(医療被ばく)があることが挙げられます。
被ばく量は検査部位や機器によって異なりますが、無症状の場合に検査を受ける利益と被ばくのリスクを考慮する必要があります。また、造影剤を使用する場合、アレルギー反応のリスクがあります。
MRI検査(Magnetic Resonance Imaging)
MRI検査は、強力な磁石と電波を使って体内の水素原子の反応を画像化する検査です。X線を使用しないため、被ばくのリスクがありません。
CTが苦手とする骨盤内(前立腺、子宮、卵巣)や、脳、脊髄、乳房(マンモグラフィと併用)、関節などの検査に特に有用です。
MRI検査の原理と特徴
CTが「X線の通りやすさ」を見ているのに対し、MRIは組織に含まれる水分量やその状態の違いを捉えるため、がん組織と正常組織のコントラスト(濃淡)がCTより明瞭に描出される場合があります。
検査中は大きな音がし、検査時間がCTより長い(30分〜1時間程度)ことが特徴です。
MRI検査のメリットとデメリット(リスク)
最大のメリットは被ばくがないことです。様々な角度の断面像を得られ、造影剤なしでも血管を描出(MRA)できます。
デメリットは、検査時間が長く、狭い筒の中で大きな音を聞き続ける必要があるため、閉所恐怖症の人には負担が大きいことです。
また、ペースメーカーや人工内耳など、体内に特定の金属がある人は検査を受けられません。
内視鏡検査(Endoscopy)
内視鏡検査は、先端にカメラがついた細い管(スコープ)を口や肛門、尿道などから挿入し、食道、胃、大腸、気管支、膀胱などの内側(粘膜)を直接目で見て観察する検査です。
「胃カメラ」や「大腸カメラ」が代表的です。
内視鏡検査の種類と特徴
最大の特徴は、粘膜のわずかな色の変化や凹凸といった「表面」の異常を直接観察できる点です。これにより、CTやMRIでは捉えられないようなごく早期のがん(粘膜内がん)の発見に非常に優れています。
さらに、検査中に疑わしい部分の組織を採取(生検)し、病理検査でがん細胞の有無を確定診断できることも大きなメリットです。
内視鏡検査のメリットとデメリット
メリットは、高い発見精度と、生検による確定診断、さらには早期がんであればそのまま治療(内視鏡的切除)まで可能な点です。
デメリットとしては、検査に伴う苦痛(吐き気、腹部膨満感、痛み)を感じることがある点です。ただし、近年は鎮静剤(麻酔)の使用により、苦痛を大幅に軽減して検査を受けることが可能です。
まれですが、挿入時の出血や穿孔(穴があく)のリスクがゼロではありません。
PET検査(Positron Emission Tomography)
PET検査は、「ポジトロン(陽電子)」を放出する特殊な薬剤(多くはブドウ糖に似たFDG)を体内に注射し、その薬剤が細胞に集まる様子を画像化する検査です。
がん細胞は正常細胞よりも活発にブドウ糖を取り込む性質があるため、PET検査ではがん細胞が「光って」見えます。
PET検査の原理 – がん細胞の活動性を見る
CTやMRIが「形」の異常を見るのに対し、PETは「細胞の活動性(機能)」を見る検査と言えます。
一度の検査でほぼ全身をスクリーニングでき、CTなどでは見つけにくい場所への転移や、治療後の再発の診断に有用です。
PET検査の強みと注意点
強みは全身検索性にありますが、注意点もあります。
まず、ブドウ糖の取り込みが少ないタイプのがん(一部の胃がん、肝細胞がん、腎がんなど)や、小さすぎるがん(一般に1cm以下)は検出しにくいことがあります。
また、がん以外にも炎症や良性腫瘍がある部位でも薬剤が集積し、「偽陽性」となることがあります。費用も比較的高額で、検査には被ばく(薬剤とCT併用による)も伴います。
人間ドックのオプションとして利用されますが、単独での早期発見(スクリーニング)目的での有用性については、議論がある点も知っておく必要があります。
「全身のがんが一度にわかる」と人気のPET検査ですが、苦手な分野もあります。
- 苦手ながん: 胃がん(特に早期)、腎臓がん、膀胱がん、白血病など
- 理由: 薬剤が尿として排泄されるため(腎・膀胱)、あるいは細胞の性質上光らないため(胃の一部)。
PET検査を受ける際は、「胃カメラ」や「超音波検査」などを組み合わせることで、見落としのリスクを減らすことができます。
主な画像検査の特徴比較
| 検査方法 | 主な対象(例) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| CT検査 | 肺、肝臓、膵臓、全身 | 短時間で広範囲。X線被ばくあり。 |
| MRI検査 | 脳、骨盤内(前立腺・子宮)、乳房 | 被ばくなし。時間が長く、音が大きい。 |
| 内視鏡検査 | 胃、大腸、食道 | 粘膜を直接観察。生検・治療が可能。苦痛伴う場合あり。 |
| PET検査 | 全身(転移・再発検索)、悪性リンパ腫 | 細胞の活動性を見る。小さながんや一部のがんは苦手。 |
「印」で探す血液検査 – 腫瘍マーカーの基本
血液検査は、採血のみという手軽さから、がんのスクリーニング(ふるい分け)に利用されることがあります。その中心となるのが「腫瘍マーカー」の測定です。
しかし、腫瘍マーカーの特性を正しく理解していないと、結果に一喜一憂し、かえって不安を増大させることにもなりかねません。
腫瘍マーカーとは何か
腫瘍マーカーとは、がん細胞が産生する特殊な物質や、がん細胞に反応して正常細胞が産生する物質の総称です。これらは血液、尿、体液中に存在し、特定の検査で測定できます。
がんの種類によって、特徴的な腫瘍マーカーが存在する場合があります。
代表的な腫瘍マーカー
| マーカー名(略称) | 関連が疑われるがん(例) |
|---|---|
| PSA | 前立腺がん |
| CEA | 大腸がん、胃がん、肺がん など |
| AFP | 肝細胞がん、卵巣・精巣腫瘍 |
| CA19-9 | 膵臓がん、胆道がん、大腸がん など |
| CA125 | 卵巣がん など |
| SCC | 扁平上皮がん(肺、食道、子宮頸部など) |
腫瘍マーカー検査の役割 – 早期発見の「補助」
腫瘍マーカー検査は、がんの早期発見においては「補助的」な位置づけです。
なぜなら、多くのがんでは、早期の段階では腫瘍マーカーの値が上昇しないことが多く、感度(がんがある人を見つける精度)が高いとは言えないからです。
例外的に、前立腺がんのPSA検査は、比較的早期の段階から上昇しやすく、早期発見のスクリーニングとして一定の有用性が認められています。
腫瘍マーカーのメリットとデメリット
メリットは、採血のみで検査できるため、身体的負担が非常に少ない点です。人間ドックなどで複数のマーカーをセットで測定することもあります。
一方、デメリットは、その精度の限界にあります。
なぜ腫瘍マーカーだけでは診断できないのか
腫瘍マーカーの値は、がん以外の要因でも上昇することがあります(偽陽性)。例えば、CEAは喫煙や加齢、炎症でも上昇しますし、CA19-9は胆石症や膵炎、CA125は子宮内膜症や月経周期でも変動します。
逆に、がんがあっても値が上昇しないこと(偽陰性)も少なくありません。
したがって、腫瘍マーカーの値が基準値を超えたからといって、必ずしもがんがあるわけではなく、逆に基準値内だからといって、がんがないとも言い切れないのです。
腫瘍マーカーは、がんの診断そのものよりも、診断後の治療効果の判定や、再発の監視に有用な場合が多い検査です。
血液検査の新たな動向 – 遺伝子検査など
近年、腫瘍マーカーとは異なるアプローチの血液検査が研究・開発されています。
例えば、血液中に漏れ出したごくわずかながん細胞由来のDNA(ctDNA)やRNA(マイクロRNAなど)を検出し、がんのリスクを評価しようとする「遺伝子検査」技術(リキッドバイオプシー)などです。
これらは、より早期の段階で、あるいは複数の種類のがんを一度に検出できる可能性があるとして期待されていますが、まだ研究段階のものや、保険適用外で高額な費用がかかるものが多く、その精度や有用性については、今後のさらなるデータの蓄積が必要です。
画像検査と血液検査 – それぞれの長所と短所
がんの早期発見において、画像検査と血液検査(主に腫瘍マーカー)は、どちらか一方だけが優れているわけではなく、それぞれに得意分野と限界があります。
両者の特性を理解し、適切に組み合わせることが大切です。
検査精度の比較
一般的に、がんの「存在」と「場所」を特定する精度(特に早期がん)においては、内視鏡検査やCT、MRIなどの画像検査の方が、腫瘍マーカー検査よりも優れています。
腫瘍マーカーは、前述の通り、早期では反応しない(感度が低い)ことや、がん以外でも上昇する(特異度が低い)ことがあるためです。
「見つけやすいがん」の違い
画像検査は「形」の変化を見るため、固形の腫瘍(しこり)を作るタイプのがんの発見が得意です。
一方、血液検査(腫瘍マーカー)は、体内に広く影響を及ぼす物質を見るため、画像では捉えにくい微小な病変や、全身の状態を反映する指標として役立つ場合があります。
費用と時間の比較
費用と時間も検査を選ぶ上で重要な要素です。
検査にかかる費用と時間の目安
| 検査方法 | 費用(保険適用外・目安) | 所要時間(目安) |
|---|---|---|
| 腫瘍マーカー(1項目) | 数千円 | 採血のみ(数分) |
| CT検査 | 2万円~4万円 | 10分~30分 |
| MRI検査 | 3万円~6万円 | 30分~1時間 |
| 内視鏡検査(胃) | 1万円~3万円 | 10分~30分(鎮静剤使用時は回復時間別途) |
| PET/CT検査 | 10万円~15万円 | 2時間~3時間(待機時間含む) |
(注:費用は施設や検査内容、保険適用の有無によって大きく異なります。)
身体的負担(リスク)の比較
検査の負担感は個人差が大きいですが、一般的な傾向を知っておくことも重要です。
検査に伴う主な負担やリスク
| 検査方法 | 主な負担・リスク |
|---|---|
| 血液検査 | 採血時の痛み、内出血(ごく軽微) |
| CT検査 | X線被ばく、造影剤アレルギー |
| MRI検査 | 閉所感、騒音、金属の制限 |
| 内視鏡検査 | 挿入時の苦痛(吐き気、腹痛)、鎮静剤のリスク、偶発症(出血、穿孔) |
| PET検査 | 薬剤(放射性物質)投与、被ばく、血糖値の制限 |
症状がない場合の検査の考え方
特に症状がない健康な人が、人間ドックなどで自費で検査を受ける場合、どの検査を選ぶかは悩ましい問題です。血液検査(腫瘍マーカー)は手軽ですが、精度には限界があります。
画像検査は精度が高いものもありますが、費用や身体的負担、被ばくなどのリスクも伴います。自分の年齢、性別、家族歴、生活習慣などの「リスク」を考慮し、費用対効果やメリット・デメリットを天秤にかけて選択する必要があります。
「検査さえ受ければ安心」は本当か – 検査の限界と注意点
人間ドックなどで高額な検査を受け、「異常なし」という結果を受け取ると、誰もが安心したいものです。しかし、「検査を受けたから100%大丈夫」とは言えないのが、がん検査の難しいところです。
検査が持つ「限界」を理解しておくことは、過度な安心や、逆に過度な不安を避けるために重要です。
検査の「精度」とは – 見逃し(偽陰性)の可能性
どんなに優れた検査でも、精度は100%ではありません。がんがそこにあるにもかかわらず、「異常なし」と判定されてしまうことを「偽陰性(ぎいんせい)」と呼びます。
偽陰性が起こる理由には、がんがまだ小さすぎたり、CTやMRIの画像上で正常な組織と見分けがつきにくい場所に隠れていたり、あるいは腫瘍マーカーを産生しないタイプのがんであったり、様々なものがあります。
検査結果が陰性であっても、気になる症状が続く場合は、検査結果を過信せず、別の検査や時期をあけての再検査を検討することが大切です。
「偽陽性」のリスク – がんではないのに陽性反応
逆に、がんがないにもかかわらず、「がんの疑いあり」と判定されてしまうことを「偽陽性(ぎようせい)」と呼びます。
例えば、腫瘍マーカーが炎症で上昇したり、画像検査で良性のポリープや古い炎症の跡ががんの疑いと判定されたりすることです。
偽陽性がもたらす心理的・身体的負担
偽陽性の判定が出ると、確定診断のために、より精密な検査(生検など)が必要になります。結果的にがんでなかったとわかるまでの間、大きな心理的不安を抱えることになります。
また、追加の検査が内視鏡や生検など、身体に負担のかかるものである場合もあります。偽陽性は、検査を受けることのデメリットの一つと言えます。
過剰診断(Overdiagnosis)という問題
検査精度の向上に伴い、「過剰診断」という新たな問題も指摘されています。
これは、「放置しても生命に影響を及ぼさないような、進行の遅いおとなしいがん」までも見つけてしまい、本来は必要のない治療(手術や放射線治療)を行ってしまうことです。
特に、高齢者の前立腺がん(PSA検査)や甲状腺がん(超音波検査)などで、過剰診断の可能性が議論されています。
がんを早期に発見することは重要ですが、すべてのがんが同じ速さで進行するわけではない、という点も理解しておく必要があります。
検査結果をどう受け止めるか
検査結果は、あくまでその時点での体の状態を反映した「情報」の一つです。異常が指摘されれば精密検査を受ける必要がありますし、異常がなくても「今後もがんにならない」という保証ではありません。
結果に一喜一憂するのではなく、検査の限界を理解した上で、定期的な検診の継続や、生活習慣の見直しなど、自分自身の健康管理に活かしていく姿勢が大切です。
どのような「癌」がこれらの検査で見つかりやすいか
検査方法にはそれぞれ得意・不得意があり、がんの種類や発生部位によって、発見しやすい検査方法が異なります。
特定の症状がなくても、リスクに応じて適切な検査を選択することが早期発見につながります。
画像検査(CT・内視鏡)で発見しやすいがん
胃がん・大腸がん(内視鏡)
胃がんや大腸がんは、消化管の「粘膜」から発生します。
内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)は、この粘膜表面を直接、高解像度で観察できるため、CTやMRIでは判別不能なごく早期の「色」や「凹凸」の変化を捉えることができます。
特に早期発見においては、内視鏡検査の右に出るものはありません。
肺がん(CT)
肺がんは、従来の胸部X線(レントゲン)検査では、心臓や骨の影に隠れて見つけにくいことがありました。
しかし、胸部低線量CT検査の登場により、X線では見えなかった数ミリ単位の小さな肺がんを発見できる確率が格段に向上しました。
特に喫煙者などハイリスク群のスクリーニングに有用と考えられています。
画像検査(MRI・超音波)で発見しやすいがん
乳がん・子宮がん(MRI・超音波)
乳がんの基本検診はマンモグラフィ(乳房X線)と超音波(エコー)検査です。
MRI検査は、特にマンモグラフィで乳腺が白く写り(高濃度乳房)、がんが見えにくい若い世代や、遺伝的リスクが高い場合の精密検査として用いられます。
子宮頸がんは細胞診、子宮体がんは超音波検査が初期スクリーニングとして行われ、異常があればMRIで病変の広がりなどを詳しく調べます。
前立腺がん(MRI)
前立腺がんは、血液検査のPSA(腫瘍マーカー)でリスクを評価するのが第一歩です。
PSAが高い場合、以前はすぐに生検(組織を針で採取)を行っていましたが、近年では先にMRI検査を行い、がんが疑われる「怪しい部分」を特定してから、その部分を狙って生検(MRI・超音波融合生検など)を行うことで、診断の精度を高める方法が普及してきています。
血液検査(腫瘍マーカー)が手がかりになるがん
前立腺がん(PSA)
前述の通り、PSAは前立腺がんのスクリーニングにおいて、世界的に最も広く使われている腫瘍マーカーです。
ただし、前立腺肥大症や炎症でも上昇するため、高いからといって即がんとは言えませんが、重要な「手がかり」となります。
卵巣がん(CA125など)
卵巣がんは初期症状が出にくく、「サイレント・オーガン(沈黙の臓器)」のがんとも呼ばれます。CA125などの腫瘍マーカーは、卵巣がんの診断や治療効果判定の補助として用いられます。
ただし、子宮内膜症などでも上昇するため、早期発見のスクリーニングとしては限界もあります。
一般的に早期発見が難しいとされるがん
- 膵臓がん
- 胆道がん
- スキルス胃がん(内視鏡でも発見が難しいタイプ)
これらの疾患は、初期症状が出にくく、体の深部にあるため、CTやMRIでも見つかりにくいことがあり、発見された時点で進行しているケースが少なくありません。
だからこそ、家族歴や生活習慣(喫煙、飲酒、肥満など)のリスクを考慮した定期的な検査が重要になります。
検査を受ける前に知っておきたいこと – 適切な検査の選び方
がん検査は、「とりあえず受ければよい」というものではありません。
自分の年齢、性別、健康状態、家族歴、そして生活習慣といった「個別のリスク」を考慮し、科学的根拠に基づいた検査(がん検診)や、人間ドックのオプションを賢く選択することが重要です。
自分のリスクを知る
がんの発生には、遺伝的な要因と環境的な要因(生活習慣)が関わっています。まずはご自身の状況を把握することから始めましょう。
家族歴(遺伝的リスク)の確認
血縁関係のあるご家族に、特定のがん(特に乳がん、卵巣がん、大腸がんなど)にかかった人が複数いる場合、あるいは若くして発症した人がいる場合、遺伝的な要因が関わっている可能性があります。
このような場合、通常よりも若いうちから、あるいはより頻繁に特定の検査(例:乳がんリスクが高い場合のMRI検査)を受けることが勧められる場合があります。
主な生活習慣リスク
| リスク要因 | 関連が指摘されるがん(例) |
|---|---|
| 喫煙 | 肺、喉頭、食道、胃、膵臓、膀胱など多くのがん |
| 過度の飲酒 | 食道、肝臓、大腸、乳房(女性)など |
| 食生活の偏り(塩分過多、野菜不足) | 胃(塩分)、大腸(動物性脂肪過多)など |
| 肥満(運動不足) | 大腸、乳房(閉経後)、子宮体部、肝臓、膵臓など |
年齢や性別に応じた推奨検査
がんのリスクは年齢とともに高まります。そのため、国や自治体は、科学的根拠に基づいて「これを定期的に受けることで、がんによる死亡リスクを減らせる」と判断された「対策型がん検診」を推奨しています。
これは特定の年齢に達した住民を対象に、公費(一部自己負担あり)で提供されるものです。
対策型がん検診(5大がん)
| 対象のがん | 推奨検査方法 | 対象年齢・頻度(例) |
|---|---|---|
| 胃がん | バリウム検査 または 内視鏡検査 | 50歳以上、2年に1回(内視鏡は当面の間) |
| 大腸がん | 便潜血検査(2日法) | 40歳以上、年1回 |
| 肺がん | 胸部X線検査(+喀痰細胞診) | 40歳以上、年1回 |
| 乳がん | マンモグラフィ検査 | 40歳以上、2年に1回 |
| 子宮頸がん | 細胞診 | 20歳以上、2年に1回 |
まずは、これら推奨されている検診をきちんと受けることが、がん対策の基本となります。
人間ドックのオプションの選び方
人間ドックは、対策型検診以外の検査を自費で受ける「任意型検診」です。CT、MRI、PET、腫瘍マーカーなど、多彩なオプションがあります。
これらを選ぶ際は、「なんとなく不安だから全部」ではなく、ご自身の年齢やリスクを考慮して選択することが賢明です。
例えば、喫煙歴が長い人は胸部CTを、血縁者に大腸がんが多い人は便潜血だけでなく大腸内視鏡検査を検討する、といった具合です。
腫瘍マーカーは、前述の通り精度の限界があるため、基本的な画像検査などを補完する位置づけ、あるいは特定の疾患(前立腺がんのPSAなど)を強く意識する場合に検討するのがよいでしょう。
気になる症状がある場合の対応
「検診」や「人間ドック」は、基本的に「症状がない」人を対象としています。
もし、体重の急激な減少、長引く咳や血痰、便通の異常(便秘と下痢を繰り返す、血便)、胃の不快感、しこりなど、具体的な「症状」がある場合は、検診を待つのではなく、すぐに医療機関を受診し、医師の診断を受ける必要があります。
この場合は「検診(スクリーニング)」ではなく、原因を特定するための「検査(診断)」となり、保険診療の対象となります。
よくある質問
がんの発生には、遺伝、生活習慣、環境要因など様々な要素が関わっています。ここでは、がんの原因やリスクと、検査との関連についてよくある質問に答えます。
- がんの主な原因は何ですか?
-
がんの発生は、一つの原因で決まるものではありません。「遺伝的要因(生まれ持った体質)」と「環境要因(生活習慣や環境)」が複雑に関与しています。
環境要因としては、喫煙、過度の飲酒、食生活の偏り(塩分や動物性脂肪の過剰摂取、野菜不足)、運動不足、肥満、紫外線、特定のウイルスや細菌への感染(例:ピロリ菌、肝炎ウイルス、HPV)などが、がんのリスクを高めることが科学的にわかっています。
これらのリスク要因を避けることが、がんの一次予防として重要です。
- 画像検査や血液検査で、がんの「原因」までわかりますか?
-
CT、MRI、内視鏡などの画像検査や、腫瘍マーカーなどの血液検査は、主に「がんの存在、場所、大きさ、広がり」を調べるためのものです。
検査結果から、がんの「原因」を直接特定することは難しい場合がほとんどです。しかし、例外もあります。
例えば、肝がんが発見された場合、併せてB型・C型肝炎ウイルスの血液検査を行うことで、ウイルス感染ががんの背景にある(原因である)可能性が高いと判断できます。
また、胃がんとピロリ菌検査も同様の関係です。
- 家族にがんになった人が多いのですが、どのような検査を受ければよいですか?
-
ご家族(血縁者)に特定のがんの既往歴がある場合、ご自身のがんのリスクが一般より高い可能性があります。
これは「家族歴」と呼ばれ、検査を選ぶ上で非常に重要な情報です。
例えば、血縁者に大腸がんの方が多い場合、一般的な便潜血検査だけでなく、より早めの年齢(例:40歳)から定期的な大腸内視鏡検査を検討することが勧められます。
乳がんや卵巣がんの家族歴が濃厚な場合は、遺伝子検査(BRCA検査など)を検討し、その結果に応じて乳房MRI検査を併用するなど、通常より手厚い検査計画を立てることがあります。
まずはご自身の家族歴を医師に正確に伝え、相談することが大切です。
近年、がん医療は遺伝子レベルでの理解が進んでいます。特に「がんの遺伝子検査」は、がんのリスク診断、治療法の選択、再発予防など、様々な目的で注目されています。
血液や唾液、あるいはがん組織を用いて、生まれ持った遺伝子の特徴(家族性・遺伝性腫瘍のリスク)や、がん細胞が持つ特有の遺伝子変異を調べる検査です。
もしご自身の遺伝的リスクや、より個別化されたがん対策に興味がある場合は、以下の記事で「がんの遺伝子検査」について詳しく学んでみるのも良いでしょう。
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