骨肉腫 – 骨にできる悪性腫瘍

骨肉腫は10代・20代の若者に多い骨の悪性腫瘍です。膝などに生じる持続的な痛みや腫れが初期症状のサイン。この記事では、骨肉腫の原因、症状、ステージ別の生存率、手術や化学療法などの治療法、再発・転移のリスクまで、専門的な情報を分かりやすく解説します。
骨肉腫 - 骨にできる悪性腫瘍

骨肉腫は、骨に発生する悪性腫瘍(がん)の一種で、特に10代から20代の若年層に多く見られます。

成長期の子どもの膝や腕に原因不明の痛みが続く場合、それは単なる成長痛やスポーツによる痛みではないかもしれません。

この病気は進行が速く、早期の発見と適切な治療が極めて重要です。

この記事では、骨肉腫の基礎知識から、特徴的な初期症状、診断方法、そして手術や化学療法を中心とした治療法、さらには治療後の生活に至るまで、患者さんとご家族が知っておくべき情報を網羅的に、そして分かりやすく解説していきます。

骨肉腫とは何か – 骨にできる悪性腫瘍の基礎知識

骨肉腫という病名を聞いたとき、多くの人が不安を感じるかもしれません。これは骨に直接発生する、がんの一種です。

体中のどの骨にも発生する可能性がありますが、特に活発に成長する部位に現れやすいという特徴があります。まずは、この病気の基本的な性質を理解することが、向き合っていく上での第一歩となります。

骨肉腫の概要

骨肉腫は、骨を形成する細胞ががん化することによって発生します。骨にできるがんには、他の臓器からのがんが骨に転移してきた「転移性骨腫瘍」と、骨そのものから発生する「原発性骨悪性腫瘍」があります。

骨肉腫は後者に分類され、原発性骨悪性腫瘍の中では最も発生頻度が高いものです。

がん化した細胞が異常な骨のような組織(腫瘍骨)を作りながら増殖していくのが特徴で、その進行は比較的速い傾向にあります。

骨肉腫の主な発生部位

この腫瘍は、骨の成長が盛んな場所に発生しやすいという顕著な特徴を持っています。具体的には、腕や脚の長い骨の端、特に関節に近い部分です。

中でも、膝関節周辺の骨は最も好発する部位として知られています。

なぜ膝の周りに多いのか

人間の体で最も成長が活発な骨の一つが、大腿骨(太ももの骨)の膝側と、脛骨(すねの骨)の膝側です。骨が急速に長くなる思春期には、この部位で細胞分裂が非常に活発に行われます。

骨肉腫の明確な原因はまだ解明されていませんが、この活発な細胞分裂の過程で、何らかの異常が起こりやすいのではないかと考えられています。

そのため、全骨肉腫の半数以上が膝関節周辺に集中して発生します。

骨肉腫の好発部位

発生部位主な骨おおよその割合
膝関節周辺大腿骨遠位部、脛骨近位部約60%
肩関節周辺上腕骨近位部約15%
股関節周辺大腿骨近位部約10%

なぜ10代・20代に多いのか – 骨肉腫の発症年齢と特徴

骨肉腫が他の多くのがんと大きく異なる点の一つは、その発症年齢です。一般的にがんは高齢者に多い病気ですが、骨肉腫は思春期をピークとする若年層に発症が集中します。

この特異な発症年齢の背景には、骨の成長が深く関わっていると考えられています。

発症のピークと思春期の骨成長

骨肉腫の発症は10代に最も多く、特に10代後半がピークとなります。これは、身長が急激に伸びる第二次性徴期と見事に一致します。

この時期、骨端線(成長軟骨板)では骨を作るための細胞分裂が爆発的に増加します。

成長期との密接な関係

現時点では、骨肉腫の直接的な原因は特定されていません。しかし、この発症年齢の偏りから、急速な骨成長に伴う細胞分裂の過程で遺伝子にエラーが生じ、細胞のがん化を引き起こすという仮説が有力です。

つまり、骨が活発に成長すること自体が、間接的なリスク要因になっている可能性があります。そのため、特に小児期から思春期にかけての骨の痛みを、安易に成長痛と片付けない注意深さが必要です。

年齢階級別 骨肉腫の罹患率(10万人あたり)

年齢階級男性女性
0〜9歳約0.2人約0.2人
10〜19歳約0.9人約0.7人
20〜29歳約0.3人約0.2人

この表が示すように、10代での罹患率が突出して高いことがわかります。ただし、これは統計的なデータであり、40代以降でも発症するケースは存在します。

高齢者の場合、骨パジェット病など、もともとあった骨の病気が背景となって二次的に骨肉腫が発生することもあります。

初期症状を見逃さないために – 痛みと腫れのサイン

骨肉腫の治療成績を向上させる上で、何よりも重要なのが早期発見です。しかし、その初期症状は成長痛やスポーツ障害、打撲などと間違われやすく、発見が遅れることも少なくありません。

持続する痛みや腫れといったサインに、いかに早く気づけるかが鍵となります。

最も一般的な初期症状「痛み」

骨肉腫の症状として、ほぼ全ての患者さんが経験するのが「痛み」です。しかし、その痛みは最初から激しいものではなく、気づきにくい形で始まります。

運動時痛から安静時痛へ

初期の痛みは、運動中や運動後に感じる鈍い痛みが特徴です。そのため、部活動などをしている若者では、スポーツによる筋肉痛や関節痛として見過ごされがちです。

しかし、骨肉腫の痛みは次第に性質を変えていきます。病状が進行すると、運動をしていない時、つまり安静にしている時にも痛むようになります。

特に、夜間や就寝中に痛みが強くなる「夜間痛」は、注意すべきサインの一つです。

骨肉腫が疑われる痛みの特徴

特徴詳細
持続性・増悪性痛みが数週間以上続き、徐々に強くなる。
安静時痛・夜間痛運動と関係なく痛み、特に夜間に痛みが強くなる。
鎮痛薬への反応市販の湿布や痛み止めが効きにくい、または一時的にしか効かない。

見た目にもわかる「腫れ」

痛みが始まってから少し時間が経つと、患部が腫れてくることがあります。これは、腫瘍が大きくなって骨の外側まで及んでいるサインです。

腫れは、膝や腕など、皮膚の上から骨に触れやすい場所で気づかれることが多いです。触れると硬いこぶのように感じたり、熱っぽさ(熱感)を伴ったりすることもあります。

膝関節の近くに腫瘍ができた場合は、関節の動きが悪くなり、膝が曲げにくくなるなどの症状が現れることもあります。

その他の症状

腫瘍によって骨がもろくなると、通常では骨折しないような軽い外力で骨が折れてしまうことがあります。これを「病的骨折」と呼びます。

転倒や軽い接触で骨折し、その検査の過程で骨肉腫が発見されるケースも少なくありません。

さらに病気が進行すると、発熱、体重減少、全身の倦怠感といった全身症状が現れることもありますが、これらは初期症状としてはまれです。

診断方法と検査の流れ – 早期発見のための医療技術

骨肉腫が疑われる症状がある場合、医療機関では正確な診断を下すために段階的に検査を進めます。診断を確定し、病気の広がりを正確に把握することが、適切な治療方針を立てるための基礎となります。

ここでは、診断に至るまでの一般的な検査の流れを解説します。

問診と身体診察

まず、医師が症状について詳しく話を聞きます。いつから、どこが、どのように痛むのか、痛みの強さの変化、腫れの有無などを確認します。

その後、患部を直接見て、触って、腫れや熱感、押したときの痛みの程度、関節の動きなどを診察します。

画像検査で病変を確認

身体診察で異常が疑われた場合、次に画像検査を行います。画像検査は、骨の状態を視覚的に捉え、病変の存在と特徴を明らかにするために重要です。

  • 単純X線(レントゲン)検査
  • CT(コンピュータ断層撮影)検査
  • MRI(磁気共鳴画像)検査
  • 骨シンチグラフィ

最初に基本となるのが、単純X線検査です。骨肉腫の場合、骨が虫食いのように破壊された像や、腫瘍が骨の外に染み出すようにして作る骨(骨膜反応)など、特徴的な画像所見が見られることがあります。

X線検査で骨肉腫が強く疑われたら、さらに詳しい情報を得るためにCT検査やMRI検査を追加します。

CT検査は骨の破壊の様子をより詳細に、MRI検査は腫瘍の正確な大きさや、周囲の筋肉、神経、血管への広がりの程度を評価するのに優れています。

このMRIの情報は、後に行う手術の計画を立てる上で極めて重要です。

確定診断のための生検

画像検査だけでは、骨肉腫であるという確定診断はできません。最終的な診断を確定させるためには、「生検」という検査が必要です。

生検は、腫瘍のある部分の組織を一部だけ採取し、それを顕微鏡で詳しく調べる病理診断です。採取方法には、針を刺して組織を採る「針生検」と、皮膚を切開して組織を採る「切開生検」があります。

生検は、後の手術に影響を与えないよう、専門的な知識を持つ医師が慎重に行います。

骨肉腫の診断に用いる主な検査

検査名主な目的わかること
単純X線検査病変の初期評価骨の破壊、骨膜反応の有無
MRI検査腫瘍の広がり評価腫瘍の正確な範囲、周囲組織への浸潤
生検(病理診断)確定診断がん細胞の種類の特定、悪性度の評価

転移を調べる検査

骨肉腫の診断がついたら、次に重要なのは他の臓器への転移の有無を調べることです。骨肉腫が最も転移しやすい臓器は「肺」です。

そのため、胸部のX線検査やCT検査を行い、肺への転移がないかを確認します。

また、他の骨への転移(スキップ転移や遠隔骨転移)の有無を調べるために、骨シンチグラフィやPET-CT検査といった全身を一度に評価できる検査も行います。

これらの転移の有無は、病気の進行度(ステージ)を決定し、治療方針を決める上で決定的な情報となります。

骨肉腫の病期分類 – がんの進行度を理解する

がんの治療方針を決定する上で、病気がどのくらい進行しているかを示す「病期(ステージ)」を正確に把握することが不可欠です。

骨肉腫も同様に、腫瘍の性質や広がり、転移の有無によってステージが分類されます。このステージ分類は、治療法の選択や今後の見通し(予後)を考える上での重要な指標となります。

病期(ステージ)分類の基準

骨肉腫のステージは、主に以下の3つの要素を組み合わせて決定します。

  • 腫瘍の悪性度(グレード)
  • 腫瘍の局所的な広がり
  • 遠隔転移の有無

悪性度は、生検で採取した組織を顕微鏡で見て、がん細胞の顔つきや分裂の速さから判断します。悪性度が高いほど、増殖や転移をしやすい性質を持ちます。

局所的な広がりは、腫瘍が骨の中にとどまっているか、骨を包む硬い膜(骨皮質)を破って外に出ているか、また周囲の重要な血管や神経を巻き込んでいるかなどを評価します。

そして、最も重要なのが、肺や他の骨など、発生した場所から離れた臓器への遠隔転移があるかどうかです。

骨肉腫の病期(ステージ)分類の簡略版

ステージ腫瘍の状態転移
ステージⅠ低悪性度なし
ステージⅡ高悪性度なし
ステージⅢ悪性度を問わないあり

各ステージの概要

骨肉腫は、発見された時点で遠隔転移があるかないかで大きく二つに分けられます。転移がなく、腫瘍が発生した骨とその周囲にとどまっている状態を「限局性骨肉腫」と呼びます。

一方、肺や他の骨などにすでに転移が見られる場合を「転移性骨肉腫」と呼びます。ほとんどの骨肉腫は悪性度が高いため、限局性であってもステージⅡに分類されることが大半です。

そして、診断時に転移が見つかるとステージⅢとなります。

ステージと治療方針・予後

このステージ分類は、治療戦略を立てる上で極めて重要です。例えば、ステージⅡの限局性骨肉腫であれば、手術と化学療法を組み合わせた治療で治癒を目指します。

一方、ステージⅢの転移性骨肉腫の場合は、全身に広がったがん細胞をたたくため、より強力な化学療法や、転移巣に対する治療(手術や放射線治療)も考慮に入れる必要があります。

当然ながら、ステージは治療後の生存率にも大きく影響します。限局性の段階で発見し治療を開始することが、良好な結果を得るための鍵となります。

治療の3本柱 – 手術・化学療法・放射線治療

骨肉腫の治療は、単一の方法で行うのではなく、複数の治療法を組み合わせる「集学的治療」が標準です。その中心となるのは、「手術(外科治療)」と「化学療法(抗がん剤治療)」です。

これに「放射線治療」が加わることがあります。これらの治療を効果的に組み合わせることで、治癒率を大きく向上させることが可能になりました。

化学療法(抗がん剤治療)

現在の骨肉腫治療において、化学療法は手術と並んで最も重要な役割を担います。血液の流れに乗って全身に行き渡るため、体のどこかに潜んでいる可能性のある微小ながん細胞にも効果を発揮します。

手術前後の化学療法の役割

通常、化学療法は手術の前と後の両方で行います。手術前に行う化学療法を「術前化学療法」と呼びます。

その目的は、まず腫瘍を小さくして手術をしやすくすること、そして手術の際にがん細胞が血液中に散らばるのを防ぐことです。

さらに、診断時には画像で見えない微小な転移(マイクロメタスターシス)を叩くという重要な目的もあります。

手術で腫瘍を摘出した後に行う化学療法は「術後化学療法」と呼ばれ、体内に残っている可能性のあるがん細胞を根絶し、再発を防ぐために行います。

化学療法の目的とタイミング

タイミング呼称主な目的
手術前術前化学療法腫瘍の縮小、微小転移の治療
手術後術後化学療法再発予防、残存がん細胞の根絶

手術(外科治療)

手術の最大の目標は、腫瘍を周囲の正常な組織で一層包み込むようにして、完全に取り除くこと(広範切除)です。

取り残しがあると再発の原因となるため、十分なマージン(安全域)を確保することが重要です。

患肢温存手術と切断術

かつては腕や脚にできた骨肉腫の治療では、その手足ごと切断する「切断術」が主流でした。

しかし、術前化学療法の進歩や再建技術の向上により、現在では約8割以上の患者さんで「患肢温存手術」が可能になっています。

これは、腫瘍部分の骨だけを切除し、その欠損部を人工関節や自分の他の部位から採取した骨(自家骨)、あるいは処理した患者さん自身の骨(処理骨)などで再建する方法です。

これにより、手足の機能を温存することが可能になります。

ただし、腫瘍が神経や主要な血管を広範囲に巻き込んでいる場合など、温存が困難なケースでは、生命を優先して切断術を選択することもあります。

放射線治療

骨肉腫の細胞は、一般的に放射線に対する感受性が低い(効きにくい)とされています。そのため、治療の主軸として用いられることは多くありません。

しかし、手術で腫瘍を完全に取り除くことが難しい部位に発生した場合や、手術後に再発のリスクが高いと判断された場合に補助的に用いることがあります。

また、骨転移による強い痛みを和らげるための緩和的な目的で放射線治療を行うこともあります。

治療後の生活と機能回復 – リハビリテーションの重要性

手術や化学療法といった強力な治療を乗り越えた後、患者さんの生活は新たなステージに入ります。

特に患肢温存手術を受けた場合、失われた機能を取り戻し、日常生活や社会生活に円滑に復帰するためには、長期的で根気強いリハビリテーションが極めて重要になります。

手術後のリハビリテーション

手術で骨や関節を再建した後は、できるだけ元の機能に近い状態まで回復させることを目指してリハビリテーションを開始します。その内容は、手術の方法や再建に用いた材料によって異なります。

患肢温存手術後の機能訓練

例えば、膝の骨肉腫に対して人工関節を用いた再建手術を行った場合、術後早期から関節を動かす訓練(可動域訓練)や、体重をかける訓練(荷重訓練)、周囲の筋力を強化する訓練を段階的に進めていきます。

人工関節には耐用年数や感染のリスク、緩みなどが生じる可能性があるため、激しいスポーツ活動には制限がかかることが一般的です。

リハビリテーションは、理学療法士などの専門家の指導のもと、個々の状態に合わせて慎重に進める必要があります。

リハビリテーションの主な内容

目的具体的な内容
関節可動域の改善関節を曲げ伸ばしする訓練
筋力の回復患肢および体幹の筋力トレーニング
歩行能力の再獲得平行棒や杖を使った歩行訓練

長期的な身体的・心理的ケア

治療の影響は、身体機能だけに留まりません。化学療法の副作用による晩期合併症(心臓や腎臓、聴力への影響など)がないか、定期的にチェックしていくことも大切です。

また、がんと診断され、長期にわたる厳しい治療を経験したことは、特に若い患者さんの心に大きな影響を与えます。

学業への復帰、友人関係、将来への不安など、多岐にわたる心理社会的な問題に対して、家族や医療スタッフ、カウンセラーなどが連携してサポートしていく体制が重要です。

再発・転移のリスクと向き合う – 長期フォローアップの必要性

骨肉腫の治療が無事に終了した後も、残念ながら「再発」や「転移」のリスクが完全になくなるわけではありません。

そのため、治療後も長期間にわたって定期的に検査を受け、万が一の再発を早期に発見するための「フォローアップ」が欠かせません。これは、治癒を確認し、安心して生活を送るための重要な過程です。

再発・転移の好発時期と部位

骨肉腫の再発は、治療終了後2〜3年以内に起こることが最も多いとされています。

もちろん5年、10年経ってから再発するケースもまれにありますが、最初の数年間は特に注意深い経過観察が必要です。

最も注意すべきは肺転移

再発の形式として最も多いのが、遠隔転移です。そして、その転移先として圧倒的に多いのが「肺」です。これは、骨肉腫のがん細胞が血流に乗って移動しやすいためです。

次いで、もともと腫瘍があった場所での局所再発や、他の骨への転移が見られます。肺への転移は、初期の段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な画像検査でしか発見できません。

定期検査の内容

フォローアップ期間中は、通常3〜6ヶ月に1回程度の頻度で通院し、以下のような検査を組み合わせて行います。

  • 問診・身体診察
  • 血液検査
  • 胸部の単純X線またはCT検査
  • もとの病変部位のX線またはMRI検査

これらの検査を定期的に行うことで、再発の兆候をいち早く捉えることを目指します。検査の頻度は、治療終了からの経過時間や再発のリスクに応じて調整されます。

再発した場合の治療

万が一、再発や転移が見つかった場合でも、治療の道が閉ざされるわけではありません。再発した病巣が切除可能であれば、再度手術を行うことが第一の選択肢となります。

特に肺転移の場合、転移巣の数や場所によっては、手術で完全に取り除くことで再び治癒を目指せる可能性があります。

手術が難しい場合や、複数の転移がある場合には、新しい種類の抗がん剤を用いた化学療法や、分子標的薬、免疫療法といった新しい治療法を検討することもあります。

再発は患者さんにとって非常につらい出来事ですが、治療法が進歩していることも事実であり、主治医とよく相談しながら、諦めずに次の治療に取り組むことが大切です。

よくある質問

骨肉腫と診断された患者さんやご家族から、特によく寄せられる質問についてお答えします。不安や疑問を解消するための一助としてください。

骨肉腫の原因は遺伝しますか?

一般的に骨肉腫が親から子へ直接遺伝することはありません。

しかし、網膜芽細胞腫やリ・フラウメニ症候群といった、特定の遺伝子の変異が原因となる遺伝性疾患を持つ家系では、骨肉腫の発生リスクが通常より高いことが知られています。

成長痛との見分け方はありますか?

成長痛は両脚に見られることが多く、痛む場所が日によって変わることがあります。

一方、骨肉腫の痛みは特定の場所(特に膝周辺や腕の付け根)に持続し、安静時や夜間に痛みが強くなる、腫れや熱感を伴うといった特徴があります。

症状が続く場合は専門医の診察を受けることが重要です。

治療後の生存率はどのくらいですか?

生存率は病気のステージや治療への反応性によって大きく異なります。

診断時に転移のない限局性の骨肉腫(ステージⅡ)の場合、手術と化学療法を組み合わせた標準的な治療によって、5年生存率は60%〜70%程度と報告されています。

転移がある場合(ステージⅢ)はこれよりも低くなりますが、治療法の進歩により改善傾向にあります。

軟部肉腫について

この記事では骨にできるがんである「骨肉腫」について解説しました。

一方で、同じ「肉腫(サルコーマ)」という名前がついていても、筋肉、脂肪、血管、神経といった軟らかい組織(軟部組織)から発生する悪性腫瘍を「軟部肉腫」と呼びます。

軟部肉腫は非常に多くの種類があり、発生部位も全身にわたるため、症状や治療法も多岐にわたります。骨肉腫と同様に希少がんの一つであり、専門的な知識に基づいた診断と治療が必要です。

もし軟部組織のしこりや腫れで気になることがある方は、こちらの記事もご参照ください。

軟部肉腫 – 筋肉・脂肪・血管などに発生する希少がん

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