手術で目に見えるがんを取り除いた後も、「また再発するのではないか」という不安は多くの患者様の心に残ります。
標準治療後の術後補助療法としてのがんワクチンは、残存する可能性のある微小ながん細胞に対し、患者様自身の免疫システムを再教育して攻撃を促すことで、再発リスクの低減を目指す治療法です。
ご自身の細胞や特定の抗原を用いるため、副作用のリスクを抑えつつ、長期的な監視体制を体内に構築します。
本記事では、この治療法が持つ可能性と実際の内容について詳しく解説します。
術後補助療法の定義とがんワクチンの位置づけ
術後補助療法としてのがんワクチンは、手術や化学療法といった標準治療を終えた後に、体内に潜んでいる可能性のある微小ながん細胞を標的とし、再発予防を目的として免疫の力を活用する積極的なアプローチです。
標準治療だけでは防ぎきれない再発リスク
手術は原発巣を物理的に取り除く非常に有効な手段ですが、肉眼や画像検査では捉えきれないレベルの微細ながん細胞が、血液やリンパ液に乗って全身に散らばっている可能性があり、これを「微小転移」と呼びます。
標準治療である術後の抗がん剤治療(化学療法)は、この微小転移を叩くことを目的としていますが、すべてのがん細胞を根絶できるとは限りません。
がん細胞は薬剤に対して耐性を持つことがあり、休眠状態にある細胞には抗がん剤が効きにくいという性質もあります。
そのため、標準治療を完遂しても再発への不安が残る場合において、異なる作用機序を持つ治療を加えることが重要視されます。
免疫の力で微小ながん細胞を攻撃する原理
がんワクチンは、人間の体に備わっている「免疫」の仕組みを応用します。
体内に侵入したウイルスを排除するのと同様に、がん細胞を「排除すべき異物」として免疫細胞に認識させ、攻撃を仕掛けるよう誘導します。
具体的には、樹状細胞などの司令塔となる細胞にがんの目印(抗原)を教え込み、その司令塔が攻撃部隊であるリンパ球(T細胞など)に指令を出します。指令を受けたリンパ球は全身を巡り、微小ながん細胞を見つけ出して攻撃します。
標準治療とがんワクチンのアプローチの違い
| 比較項目 | 標準的な術後化学療法 | 術後補助療法としてのがんワクチン |
|---|---|---|
| 主な目的 | 細胞分裂が活発な細胞を攻撃し、微小転移を死滅させる | 免疫細胞にがんの特徴を記憶させ、持続的な監視と攻撃を行う |
| 作用対象 | 全身の細胞(特に分裂が早い細胞に影響大) | 特定の抗原を持つがん細胞のみを狙い撃ちする |
| 体への負担 | 吐き気、脱毛、骨髄抑制などの全身的な副作用が出やすい | 注射部位の赤みや腫れ、微熱など比較的軽度な反応が多い |
上記の通り、化学療法が全身の細胞に影響を与えるのに対し、がんワクチンはがん細胞をピンポイントで狙う特性を持ちます。この違いが、標準治療後の新たな選択肢として注目される理由の一つです。
第4の治療法としての免疫療法の役割
手術、放射線、化学療法に続く「第4の治療」として位置づけられる免疫療法の中でも、がんワクチンは「特異的免疫療法」に分類されます。
これは、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤とは異なり、特定の目印を持つがん細胞を能動的に攻撃するよう免疫系を刺激するものです。
術後補助療法として用いる場合、体内のがん細胞量が最も少ない状態であるため、免疫細胞が数的有利に立ちやすく、ワクチンの効果が発揮されやすい環境と考えられます。
この時期に免疫監視機構を強化することは、長期的な再発予防において合理的な戦略となります。
がんワクチンが再発予防に寄与する科学的根拠
がんワクチンは、単にその場でがん細胞を攻撃するだけでなく、免疫システムに「がんの顔」を記憶させ、将来にわたって監視を続ける体制を体内に構築することで再発予防に寄与します。
樹状細胞とリンパ球の連携による特異的攻撃
免疫システムが正しく機能するためには、高度な連携が必要です。
まず、樹状細胞と呼ばれる細胞が、がん細胞の死骸などを取り込み、その断片を「がんの目印」として細胞表面に提示します。これを抗原提示と呼びます。
次に、リンパ球の一種であるT細胞がこの提示を受け取り、「この目印を持つ細胞が敵である」と認識します。認識したT細胞は活性化して増殖し、血管を通って全身を巡り、標的となるがん細胞を探し出して破壊します。
この一連の流れを人為的に強化し、確実に実行させることががんワクチンの役割です。
再発予防を支える免疫細胞の役割
- がんの特徴を取り込み、攻撃部隊に正確な指令を出す司令塔の役割を果たす樹状細胞
- 指令を受けてがん細胞を直接破壊し、微小転移の排除を担う実行部隊であるキラーT細胞
- 他の免疫細胞を活性化させ、攻撃の効率を全体的に高める支援を行うヘルパーT細胞
- がんの特徴を長期にわたって記憶し、将来の再発の芽を摘むための監視を担うメモリーT細胞
がん抗原(WT1など)を標的とする仕組み
がん細胞には、正常な細胞とは異なる特有のタンパク質が発現していることが多く、これらは「がん抗原」と呼ばれます。代表的なものにWT1ペプチドやCEA、MAGEなどがあります。
がんワクチンでは、これらのがん抗原を人工的に合成したり、患者様自身のがん組織から抽出したりして体内に投与します。そうすることで、免疫細胞は「何を攻撃すればよいか」を明確に理解できます。
正常な細胞を傷つけずにがん細胞だけを攻撃するためには、この標的の正確性が極めて重要です。近年では、複数のがん抗原を組み合わせることで、がん細胞の逃避を防ぐ工夫も凝らされています。
免疫記憶による長期的な監視体制の構築
ワクチンの最大の特徴は「免疫記憶」です。一度がん細胞の特徴を覚えた免疫細胞(メモリーT細胞)は、体内に長期間留まります。
もし将来、再び同じ特徴を持つがん細胞が現れたり、休眠していた微小転移が活動を始めたりした際に、このメモリーT細胞が即座に反応し、増殖して攻撃を再開します。
これは感染症のワクチンが何年も効果を持続するのと同じ理屈です。術後補助療法としてがんワクチンを行う意義は、この「再発の芽を摘む監視システム」を体内に常駐させることにあります。
標準治療との併用による相乗効果の可能性
がんワクチンは単独で行うだけでなく、既存の標準治療と適切なタイミングで組み合わせることで、互いの弱点を補い合い、より高い再発予防効果を目指すことが可能です。
化学療法後の免疫リセットとワクチンのタイミング
抗がん剤治療を行うと、がん細胞だけでなく正常な免疫細胞もダメージを受け、一時的に免疫力が低下します。
しかし、治療終了後の回復期には、免疫細胞が新たに作られ、システムが再構築される時期が訪れます。
このタイミングでがんワクチンを投与することは、新しく生まれた免疫細胞に対して効率的にがんの情報を教育する絶好の機会となります。
さらに、一部の抗がん剤は、がん細胞の防御機能を弱めたり、がん抗原を表面に出やすくしたりする作用があるため、ワクチンの標的として認識されやすくなるという側面もあります。
主な併用療法とその期待される作用
| 併用する治療法 | 期待される相乗作用 | 開始時期の目安 |
|---|---|---|
| 抗がん剤(化学療法) | 腫瘍量の減少による免疫抑制の解除と、回復期の再教育 | 化学療法の休薬期間中、または全コース終了後 |
| 放射線療法 | 破壊されたがん細胞からの抗原放出を利用した免疫賦活 | 放射線照射と同時期、または照射直後 |
| 免疫チェックポイント阻害剤 | 免疫抑制(ブレーキ)の解除と攻撃指令(アクセル)の同時発動 | 主治医との相談の上、同時または順次投与 |
放射線療法のアブスコパル効果との関連
放射線療法によってがん細胞が破壊されると、その細胞の中から大量のがん抗原が周囲に放出されます。この現象は、免疫細胞にとって「敵の正体」を学習する良い材料となります。
局所的な放射線治療を行ったにもかかわらず、離れた場所にある転移巣が縮小する現象を「アブスコパル効果」と呼びますが、これは活性化した免疫細胞が全身を巡った結果と考えられています。
術後補助療法として放射線照射が行われる際、がんワクチンを併用することで、放出された抗原を効率的に樹状細胞に取り込ませ、全身的な抗腫瘍免疫を誘導できる可能性が高まります。
分子標的薬やチェックポイント阻害剤との組み合わせ
近年では、免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボやキイトルーダなど)との併用も注目されています。がん細胞は免疫からの攻撃を避けるために「ブレーキ」をかける能力を持っていますが、チェックポイント阻害剤はこのブレーキを解除します。
一方で、がんワクチンは免疫の「アクセル」を踏む役割を果たします。ブレーキを外した状態でアクセルを踏むことで、より強力な攻撃力が期待できます。
術後の再発リスクが高いケースでは、このような複合的な免疫療法の戦略を検討することも、新たな選択肢として重要です。
自分自身の細胞を使う自家がんワクチンの特徴
「自家がんワクチン」は、手術で切除した患者様ご自身のがん組織を原料として作製する、究極のオーダーメイド医療であり、既製品ではなく自分専用の素材を使う点に大きな特徴があります。
切除した腫瘍組織を利用する個別化医療
がん細胞の遺伝子変異や特徴は、患者様一人ひとりによって異なり、同じ病名であっても千差万別です。
自家がんワクチンでは、手術で取り出した「生のがん組織」をホルマリン固定し、処理を加えてワクチン化します。これには、その患者様のがん特有の目印(未知の抗原を含むすべて)が含まれています。
特定の既知の抗原(WT1など)だけを狙うのではなく、その患者様のがんが持っている複数の抗原を丸ごと免疫に提示できるため、がん細胞が形を変えて逃げようとしても、他の目印を頼りに追跡できる可能性が高まります。
自家がんワクチンとその他のワクチンの違い
| 項目 | 自家がんワクチン | ペプチドワクチン(人工抗原) |
|---|---|---|
| 原料 | 患者様自身の手術で切除した腫瘍組織 | 人工的に化学合成された特定のがん抗原 |
| 対象患者 | 腫瘍組織が確保できれば誰でも適応可能 | 特定の抗原を持ち、HLA型が適合する人のみ |
| 標的の広さ | 未知の抗原を含む多種多様な目印を提示 | 特定の1〜数種類の抗原のみを標的とする |
副作用のリスクを低減する自己由来の安全性
自分の体から取り出した細胞や組織を再び体に戻すため、アレルギー反応や拒絶反応といった強い副作用が起こるリスクは極めて低いのが特徴です。
一般的に報告される副作用は、注射した部位の皮膚が赤く腫れる、硬結ができる、一時的な発熱があるといった軽度なものが中心です。これらはむしろ、免疫が正常に反応し、戦う準備を始めている証拠(遅延型過敏反応)としても捉えられます。
身体への負担が少ないため、高齢の方や体力が低下している方でも、術後の回復状況を見ながら取り組みやすい治療法です。
特定の抗原が見つからない場合への対応力
ペプチドワクチンの場合、特定のがん抗原が発現していない患者様や、白血球の型(HLA)が合わない患者様には効果が期待できず、治療を受けられないことがあります。
しかし、自家がんワクチンは自分のがん組織そのものを使うため、特定の抗原の有無やHLA型に関わらず、手術でがん組織が採取できていれば(あるいは保管されていれば)誰でも作製することができます。
「使える薬がない」「条件が合わない」と諦めていた方にとって、自分自身の組織が再発予防の切り札となる点は大きな希望となります。
ペプチドワクチンの種類と適応となるがん種
ペプチドワクチンは、がん細胞の表面に出ている目印を人工的に合成し、それを投与することで免疫を活性化させる手法であり、多くのがん種で研究・開発が進められています。
人工的に合成された抗原を使うメリット
ペプチドワクチンの利点は、品質が均一で安定した製剤を大量に供給できることです。手術で組織が採取できなかった場合や、過去の手術で組織を破棄してしまった場合でも、ペプチドワクチンであれば治療を開始できます。
がんの種類によって頻繁に発現する抗原(例えば、多くのがんで見られるWT1や、乳がん・胃がんなどのHER2など)があらかじめ分かっているため、診断されたがんの種類に応じて、適したペプチドを選択して投与することが可能です。
また、複数のペプチドを混合して投与する「カクテル療法」も行われています。
HLA型(白血球の型)適合の必要性
ペプチドワクチンが効果を発揮するためには、鍵と鍵穴の関係のように、ペプチド(鍵)と患者様の白血球の型であるHLA(鍵穴)が適合する必要があります。
日本人の約6割が「HLA-A24」という型を持っていますが、これに合致しない型のペプチドを投与しても、免疫細胞はうまく抗原を認識できません。
そのため、治療を始める前には必ず血液検査を行い、ご自身のHLA型を調べる必要があります。適合しない場合は、別の種類のペプチドを探すか、HLAの型に関わらず使用できる長い鎖のペプチド(ロングペプチド)などを検討することになります。
主な対象がん種と事前の考慮事項
- WT1やCEAを標的としたワクチンが多く研究されている、胃がん、大腸がん、膵臓がん、食道がんなどの消化器系がん
- HER2やMUC1などの抗原が主な標的となり、術後補助療法としての期待が高まる乳がんや卵巣がんなどの婦人科系がん
- 様々なペプチドワクチンの臨床試験が行われ、標準治療との併用効果が検証されている肺がんなどの呼吸器系がん
- これらのがん種であっても、必ず事前にHLA検査と抗原発現の確認を行い、適合性を評価することが前提となります
血液検査で事前に効果を予測する重要性
治療の精度を高めるために、単にHLA型を調べるだけでなく、投与予定のペプチドに対する免疫反応が体に備わっているか、あるいはそのペプチドが実際に患者様のがん細胞に発現しているかを事前に確認することが大切です。これを「免疫学的スクリーニング」などと呼びます。
効果が期待できないペプチドを闇雲に投与する時間を避け、科学的なデータに基づいて、反応する確率の高いワクチンを選定することが、術後補助療法としての成功率を高める鍵となります。
治療開始から終了までの流れと投与スケジュール
がんワクチン治療は一度きりで終わるものではなく、体の免疫システムを徐々に教育し強化していくために、一定期間にわたる計画的な通院が必要となります。
初回カウンセリングと事前の免疫能検査
最初に、医療機関で詳しいカウンセリングを受けます。これまでの治療経過、現在の病状、画像データ、血液検査の結果などを医師が確認し、がんワクチンが適応となるかを判断します。
この段階で、自家がんワクチンの場合は組織の保管状況を確認し、ペプチドワクチンの場合はHLA型の検査を行います。また、患者様自身の基本的な免疫力(リンパ球の数や機能など)を評価するための血液検査を行い、体がワクチンに反応できる状態にあるかを見極めることもあります。
一般的な治療プロトコルの例
| ステップ | 内容 | 期間・頻度の目安 |
|---|---|---|
| 準備期間 | 初診、検査、ワクチン作製(自家の場合) | 初診から約2〜3週間 |
| 投与期間 | ワクチンの皮内注射、免疫反応の観察 | 2週間に1回 × 5回(約2.5ヶ月)など |
| 評価・維持 | 効果判定、経過観察、必要に応じ追加投与 | 3〜6ヶ月ごとに診察 |
ワクチン作製期間と投与間隔の目安
自家がんワクチンの場合、組織が届いてからワクチンが完成するまでに通常1〜2週間程度の期間が必要です。投与は、2週間に1回程度のペースで合計3〜5回行うのが一般的です。
ペプチドワクチンの場合も同様に、週1回から2週間に1回の頻度で数ヶ月間継続して投与するスケジュールが多く採用されます。皮内注射(皮膚の浅い部分への注射)で行われることが多く、所要時間は通常の注射と変わりません。
入院の必要はなく、外来通院で完結するため、日常生活を維持しながら治療を続けることができます。
経過観察と追加投与(ブースター)の検討
1クール(規定の回数)の投与が終了した後は、定期的な検査で効果を判定します。
免疫反応テスト(DTH反応など)を行い、皮膚の反応を見て免疫が活性化されているかを確認したり、腫瘍マーカーや画像診断で再発の兆候がないかを監視したりします。
免疫の記憶は長期間続きますが、時間とともに徐々に薄れていく可能性もあるため、半年や1年ごとに免疫を再刺激するための追加投与(ブースター接種)を行う場合もあります。長期的な維持療法としてどのように付き合っていくか、主治医と相談しながら計画を立てます。
治療を受ける医療機関選びと確認すべきポイント
がん免疫療法は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の下で厳格に管理されており、患者様が安全で質の高い治療を受けるためには、信頼できる医療機関を慎重に選ぶ必要があります。
再生医療等提供計画の届出と受理の確認
がんワクチンや樹状細胞療法などの免疫療法を行う医療機関は、厚生労働省(地方厚生局)に対して「再生医療等提供計画」を提出し、認定再生医療等委員会での審査を経て、受理される必要があります。
この手続きを経ずに治療を行うことは法律で認められていません。クリニックのホームページや厚生労働省のウェブサイトで、その医療機関が正式に計画を提出し、受理されているかを確認することが最初のステップです。
また、提供計画には「どのようながん種を対象とするか」「どのような細胞加工を行うか」が明記されています。
安心して治療を受けるためのチェックリスト
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 法的遵守 | 再生医療等提供計画の届出番号が掲示されているか |
| 品質管理 | 細胞加工施設(CPC)の管理体制が明確か |
| インフォームドコンセント | リスクや費用、標準治療との関係を文書で説明してくれるか |
| 診療体制 | 万が一の副作用時に迅速に対応できる連携体制があるか |
細胞加工施設の品質管理基準(CPC)
がんワクチンや細胞製剤は、非常に繊細な管理が必要です。細菌やウイルスの混入を防ぎ、一定の品質を保つために、細胞培養加工施設(CPC:Cell Processing Center)と呼ばれる専用のクリーンルームで作製される必要があります。
この施設もまた、法律に基づいた構造設備基準や衛生管理基準を満たしていなければなりません。医療機関内にCPCを併設している場合もあれば、外部の信頼できる企業に委託している場合もありますが、いずれにせよ、どのような環境で自分のワクチンが作られているかを知ることは、安全性を担保する上で大切です。
医師の経験と説明の透明性
免疫療法は発展途上の分野でもあり、医師によって知識や経験に差があることも事実です。がん治療全般に対する深い知識を持ち、標準治療と免疫療法の両方のメリット・デメリットを公平に説明してくれる医師を選ぶことが重要です。
「絶対に治る」「副作用はゼロ」といった過剰な期待を煽る説明ではなく、科学的な根拠に基づき、期待できる効果と限界、費用の詳細について、納得いくまで丁寧に説明してくれる医療機関を選んでください。セカンドオピニオンを利用し、複数の医師の話を聞くことも良い判断材料になります。
よくある質問
- どの段階で検討を始めるのがよいですか?
-
手術が決まった段階、あるいは手術直後から検討を始めるのが理想的です。特に自家がんワクチンの場合、手術で切除される腫瘍組織(検体)が必要となるため、手術前に主治医と相談し、組織を破棄せずに保管してもらう手配が必要になるからです。
もし手術が終わっている場合でも、病理検査用に保管されているパラフィンブロック(組織標本)が利用できることがありますので、できるだけ早い段階で専門の医療機関へ相談することをお勧めします。
- 副作用で日常生活に支障は出ますか?
-
がんワクチンは自身の免疫細胞を利用するため、抗がん剤のような激しい副作用(強い吐き気、脱毛、骨髄抑制など)が出ることは稀です。
多く見られるのは、注射した部位の赤み、腫れ、痒み、あるいは一過性の微熱や倦怠感といった、インフルエンザワクチン接種後に似た症状です。これらは通常数日で治まります。
仕事や家事を休む必要はほとんどなく、普段通りの生活を送りながら通院治療を継続することが可能です。
- どのくらいの間隔で通院する必要がありますか?
-
治療プロトコル(計画)によりますが、一般的には2週間に1回程度の通院からスタートすることが多いです。
1回の滞在時間は、問診と注射、経過観察を含めて30分から1時間程度で済む場合がほとんどです。1クール(5〜6回など)が終了した後は、経過観察のために1ヶ月から3ヶ月に1回、あるいは半年に1回といったペースでの通院になります。
遠方から通院される場合は、集中して行うスケジュールなどが相談できる医療機関もあります。
- 抗がん剤治療中でも受けられますか?
-
受けることは可能ですが、タイミングが重要です。抗がん剤を使用している最中は免疫細胞の働きが弱まっていることが多いため、ワクチンの効果が十分に発揮されない可能性があります。
そのため、基本的には抗がん剤の休薬期間や、一通りのコースが終了して骨髄機能(白血球数など)が回復してきた時期に開始するのが良いとされます。
ただし、併用効果を狙って特定の時期にあえて投与する場合もありますので、主治医とワクチン担当医の連携の下でスケジュールを決定します。
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